ダンジョンで出会いを求めるのは間違っていなかった。だから僕は――


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作:黒井白人
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第2話


「――――う~し、野郎ども、女郎ども、腹いっぱい飯食ってきたか!?クエスト出発前、最後の事前会議を始めるぞ?」

 

……そこは、オラリオ最大手ギルド――【ゼウスファミリア】の一室である。

そこに集まっていたのはオラリオで最も有名な2大ギルド、【ゼウスファミリア】と【ヘラファミリア】。その中でも、幹部と呼ばれる面子がそこにいた。

 

「――うっさいわね、飲み過ぎて頭痛いんだから下品な大声で騒ぐんじゃないわよ……」

「まったくよ、お姉さまの気分を害するなんて、今すぐ頭かち割って死になさいよ」

「あぁ!?兄貴に喧嘩売ってんのか、【百合姫】」

「はぁ?気安く声かけてくるんじゃないわよ、男のくせに。【番長】だかなんだか知らないけど、そんな革靴みたいな頭してる奴が息しないでくれる?」

「――よぉ~し、喧嘩売ってんだな!?買ってやんぞ、ああぁん!?」

「止めんか、馬鹿者。女子(おなご)につっかかるでないわ」

「貴方もよ、ルリィ。余計な問題を起こさないで」

「止めんな爺!これは漢(おとこ)の面子の問題だ」

「でもマリア姉さま、こんなのがお兄様と同じ生物として見られているなんて私我慢できません!」

「ルリィ、そんなこと言ってはいけないよ。こう見えても彼は優しくって、この間何て裏通りの捨て猫たちにご飯を――」

「てめぇ!それ以上口開くんじゃネェ!!」

「お兄様にまで当たるんじゃないわよ、この変態!!」

「だから止めんか!!」

「いいぞ~、やれやれ大乱闘~~♪」

「お主も煽るんでないわ!!」

「Z~~、Z~~」

「貴様は起きんか!!」

 

――――――スパン。がらがらがら!!

 

 ドンドンと混沌と化していく中で、その両者を挟んでいた机に二筋の光が通ったと思った次の瞬間には角と角を通るように十字に切れ目が入って崩壊した。

 その上に乗っていたグラスなどが床をごろごろと転がる音が、静まり返った会場に響く。

 

「――お前ら」

「――貴方たち」

「「いい加減にしろ(しなさい)」」

 

それは机の端で立っていた両ファミリアのリーダーによるものだと、全員が理解した。

 

「もう、ゴメンね。ウチのルリィが喧嘩腰で」

「いや、こっちの馬鹿が喧嘩っ早いのも原因だ。後で説教しておく」

「じゃあ、こっちも。それで手打ちね」

「げぇっ!?」

「そんなぁ!?」

「「何か言った?」」

「「何でもありません、はい!」」

 

そのまま喧嘩していた二人はプルプルと震えながら、椅子に縮こまって座る。

 

「まったく――いよいよ最後の黒竜との戦いだからって興奮しすぎじゃないのか?」

「まぁ、ある意味ヘラ様たちの悲願でもあり、私たちの悲願でもあるからね。分からなくもないわ」

 

ゼウスファミリアのリーダー、アランがため息交じりにそう言い、ヘラファミリアのリーダー、ローラは苦笑しながらそう言った。

 

「――でもね、アラン?その大事な会議を始める前に教えてくれない。----そこの角で立っている部外者は、一体誰?」

 

ローラがそう言いつつ、目線を部屋の角、そこに立っている全身をマントで纏った人物に向けた。

フード付きのケープの上にマントを纏っているので、顔も見ることができない。

 

「あ~~~~、だよな。いや、ウチの神様(おやじどの)が、『最終兵器拾ったから連れて行け。詳しくは自分たちで聞き出せ』って連れてきたんだ。それも今朝。だから俺にもよく分からん」

「そう、貴方の神様も大変ね」

「ふむ、お主、名前はなんと言うのじゃ?」

「……アル。とでも呼んでください」

「あぁ?アルだがハルだか知らないが、てめぇ顔ぐらい見せろよ?」

 

そう言い、一番近くにいた番長がそのフードに手を伸ばす、が、

 

「――ごめんなさい、顔は見せたくないので。勘弁していただけませんか?」

 

その手は空を切り、その人物の声は先ほどまでの部屋の反対側。ローラの傍の部屋角にいつの間にか立っていた。

 

「なっ!?」 

 

その場にいた者たちは、その光景に驚いた。

その場にいるのは、オラリオでも1.2を争うファミリアの幹部。その自負がある彼らが、その動きを見失ったのである。

 

「……アラン」

「……なぁ、アルって言ったな。お前のレベルは、いくつなんだ?」

「――秘密、ですが、多分、貴方たちよりも上だと思います」

『!?』

 

それには全員が息の呑む。

 

「ですが、こんな途中参加で黒竜の討伐に参加するつもりはありません。いえ、正確にはできない、ですかね。何故なら――」

 

そこで、マントの中から腕が出された。しかし、様子がおかしい。何故、右腕しか出さないのか。

そこでようやく、その人物が片腕がないということに思い至った。

 

「このように、満足に戦えない僕は貴方たちの足を引っ張りかねません。なので――サポーターとして、参加させてもらいます」

 

――そう、ベル・クラネルことアルは、その時最強の冒険者たちのサポーターを買って出たのである。

 

 




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