迷宮都市オラリア――『ダンジョン』と通称される壮大な地下迷宮を保有する巨大都市。そこには冒険や名誉、多くの人の欲望を叶えるために多くの冒険者と神々が住んでいた。
そんな場所で新たな【眷属の物語】が産まれた。
ある者は【ダンジョン攻略】の物語を語った。
ある者は【黒竜の最期】の物語を語った。
ある者は【伝説の家族】の物語を語った。
ある者は【一途な想い】の物語を語った。
ある者は【ハーレム兎】の物語を語った。
どれもが胸を躍らせる物語だった。その時生きていた者たちだけでなく、未来に生きる者たちも知ることになる物語だった。
だが、その物語はただの物語ではなかった。その物語が語るのは全て同じ人物のなのであった。
たった一人が多くの神々に称賛されるほどの物語を複数作ったのであった。
しかし、物語というものには終わりがある。当然、そんな人物にも最期がやってきた。
『お前のおかげでようやくオレの思いを形にすることができた。ありがとよ』
そんなことを言いながら、最後まで砥石の前に座り続けた兄貴分の鍛冶師
『最初は酷い出会いでしたが、ベル様のおかげで最高の人生でした』
そう言って最下層までついて来てくれた、小柄で苦労性のサポーター
『出会った時から好きでした。知ってましたか?』
そう悪戯そうな笑顔を浮かべていた、よくからかってきたウェイトレス
『冒険しちゃダメって言ったのに……。その話を聞くのを楽しみにしてた私もいたんだよね?』
苦笑交じりにそんなことを言った、姉貴分のようなアドバイザー
『娼館(あのような)場所での出会いでありましたが、あなた色に染まれて良かったです』
恥ずかしげに袖で顔を隠し、頬を染めていた元娼婦
『なんて言えばいいのか分からないけど、あの牛(ミノタウルス)に感謝しとくべき、かな?』
少し天然交じり目にそう言い、静かに微笑んだ剣士
その他にもたくさんの家族(ファミリア)達や戦友達が先にいった。
そして、とうとう自分の番が来たのだろう。
ベッドに横になる身体が徐々に重くなっていき、視界が閉じていく。
歴戦の戦いを乗り越えて、たくさんの傷をつけた鍛えられた身体でも、その熱が失われていくのが分かった。
でも、恐怖などはなかった。
いつか来ることも分かっていたし、最後に見える視界が恐怖を完全に消していた。
『手から、だけでなく、貴方の温もりは、悪くない、ですね』
そう目を合わせずに言った、今右手を握るエルフのウェイトレス
『ボクは感謝しているんだ、君と出会わせてくれた運命に』
そう太陽を思わせるような笑顔を受かべ、今は涙だらけでこちらを見ている神様
他にも自分の周りには、たくさんの家族(ファミリア)に孫までいる家族たちが自分を囲って泣いていた。
あぁ、覚悟していたとはいえ、これには後悔を覚える。
いや、これだけに後悔があるわけではない。
もっと早く皆に出会いたかった。
もっと多く皆と思い出を作りたかった。
もっと皆と、思いを、感情を、愛を、語り合いたかった。
たくさん大変なことももちろんあった。たくさんつらいこともあった。
でも、それを超えるくらいに幸せで、幸福だった。
だから、声に出しはできないけど、心の中で言った
(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていなかった!!)
そして、英雄は息を引き取った。
オラリアを黒竜から救った英雄
ダンジョンを攻略した英雄
派閥を超えた恋をした英雄
神をも嫁にした英雄(スケベ)
家族を守るためなら誰よりも強くなれた英雄(チチ)
そして、神をも飛び超えた限界突破者の英雄(ウサギ)
冒険者、ベル・クラネルの最後にオラリア全体が悲しみ、街には大鐘楼が鳴り響いた。
英雄の物語はここで閉幕した----------------はずだった。
気が付いたら大鐘楼の下に座っていた。大鐘楼の鐘の音で目が覚めた自分は死んだはずでは?と困惑した。
そして、さらに驚いた。黒竜の戦いで失った左手こそ無かったが、身体が若返っていた。おそらく左手を失って数年後、ある意味この身体に慣れた頃の年齢だろうか。
それともう一つ、気付いた。大鐘楼からの風景で分かったことだがここはオラリアで間違いないだろう。街並みに中央にあるバベルがそれを物語る。でも、街並みは同じなのに、どこか別になものに、違和感を感じる。
(なんだろう?街全体、どこか、若々しい?)
自分がそんなことを思っていると、どこからか歓声が聞こえてきた。
そちらに目を向けると、たくさんの人と、楽器音、歓声、そして、それの中央ではためく模様のついた旗があった。
『【ゼウス・ファミリア】、【ヘラ・ファミリア】のご帰還だ!!』
『とうとう海の覇王(リヴァイアサン)も撃破したんだ!!』
『残りは黒竜だけだ!!』
『そのまま三大 冒険者依頼(クエスト)も攻略してしまえ、ゼウス様!ヘラ様!』
ゼウスにヘラ。リヴァイアサンに黒竜。そして、三大 冒険者依頼(クエスト)。さらに、そのパレードの中にいたのは――
(おじい、ちゃん)
高貴な服装をし、威厳のある表情をしていていたが、見間違うはずがなかった。そこにいたのは自分を育ててくれた祖父に違いなかった。つまり――
(まさか、オラリアの過去に来た――!!??????)
~プロローグ 強くてニューゲーム~