生活保護「外国人が優遇」のウソ 受給者は全体のわずか3%…「日本人より不利」制限的運用の実態
外国人受給者「優遇されていない」
上記のような一定の在留資格がある場合、日本人と同じ要件(資産や能力の活用など)の下、生活保護を申請し、自治体によって支給が妥当だと判断されれば保護費を受け取れる。 しかし一方で、先に挙げた厚生省通知はあくまで「行政措置(サービス)」であり、法律上の権利を保障しているわけではない。そのため、日本人受給者と比べて“制限”されることもある。 その制限の一つが「不服申し立て」をできないことだ。 「仮に支給額を半分にされるなど不利益な取り扱いがあっても、生活保護法違反として訴えることができず、泣き寝入りせざるを得ない可能性がある」(大澤氏) 申請時の要件や支給額の算出方法等は日本人と同等だが、大澤氏は「日本人と比べて外国人が優遇されている実態はない」と話す。 「むしろ、法律で保護されていない分、外国人に対しては制限的な運用がされているとも言える」(同) また、SNSでは、外国人の困窮者・受給者に対し「困窮しているのであれば母国の大使館を頼ればいい」といった声もある。こうした声に対し大澤氏は「大使館に頼って助けられることはまずない」ときっぱりと答える。 実際、大澤氏はある先進国の大使館から、「そちらで(困窮する同国の人の)家賃と帰国費用を出してほしい」と相談されたこともあるという。
外国人による不正受給「確かめようがない」
その他にも、外国人の生活保護受給をめぐっては、不正受給が疑われるケースが報道等に取り上げられることもある。 その際たるものが、2010年に中国人48人が来日直後に大阪市に「定住者」の在留資格で生活保護を申請し、うち26人に支給された事件である。 しかし、この件では結果的に全員が申請を辞退している。また、この件で入国管理局の在留資格の認定審査に問題があったことなど制度の不備が発覚し、「制度の穴」は完全に封じられている。 外国人による不正受給の実態について、大澤氏は「不正受給の割合を出していないため統計上は分からない、確かめようがない」としつつ、生活保護費総額に占める不正受給額は約0.3%であり、かつ外国人受給者は生活保護利用者全体の約3%であることを踏まえ、「(外国人による不正受給数は)かなり少数ではないか」と話す。 一方で、「生活保護の取り扱いに準じた保護」を受ける資格がある外国人であるにもかかわらず、経済的に困窮していても受給申請をためらう外国人は少なくない。 その大きな原因の一つとして指摘されるのが、出入国在留管理庁が定める「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」が、公共の支援を受けていないこと(公共の負担となっていないこと)を資格変更や期間更新の条件に定めていることだ(5項)。 この条項には、「在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断する」とも記されている。とはいえ、「生活保護の取り扱いに準じた保護」を受けた場合に、それを理由として在留資格・期間の見直しが行われるリスクを示唆している。 「在留資格を失えば、(在日外国人にとっては)日本での生活基盤そのものが失われ、自分の居場所が無くなってしまう」(大澤氏) 前述した通り、生活保護を受給する外国人のほとんどは「日本人と同様の生活実態を有し、税金や社会保険料の納付義務を負っている人」であり、中には日本語しか話せない人もいる。 大澤氏によると、両親共に日本人で、ペルーで生まれ、その後来日し働く男性の相談に乗ったこともあるという。 日本人と事実上同等の生活実態をもち、社会の一員として、社会と経済を支えている類型の外国人に手を差し伸べることは、決して「優遇」とは言えないだろう。 また、必要最小限の公共の支援を受けたことを理由に在留資格を取り上げるのはあまりに酷で、非現実的かつ非実利的でもある。本当に支援を必要とする人が制度の外に取り残されないように、大澤氏はガイドラインの見直しを求めている。 ■榎園哲哉 1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
榎園哲哉