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実は奥深く美しい『文章のねじれ』について

はじめに

 なろうやラノベの界隈は極端に『文章のねじれ』を忌避しており、この話題がたまにタイムラインをにぎわします。後述もしますが、『面白くて、売れれば良い』昨今のラノベやweb小説に関しては、文学的な(というより、小説としてはわりと普通な)ねじれをやたらと忌避する傾向があるようです。理由としては、このジャンルの分かりやすさ、つまりリーダビリティや読解をバリアフリーにする試みとしては正しいからでしょう。しかしながら、それでは小説という大海の中で海水浴場のネットを張るようなものであり、広さと深さ、つまり面白い文章や特徴的な文章を書く技術はだいぶ制限されます。特に本格的なファンタジーの表現は情報量も多いため、様々な『ねじれ』を使いこなすことが大事です。
 今回は『ねじれ』と言っても多種多様な種類の一端に触れ、手法としてどのような用いられ方をするのかをまとめてみました。

1.文法的ねじれ

まず、一般的に語られているのは『文法的ねじれ』でしょう。主語と述語の一致が甘かったり、時制がずれていたりなどする表現です。 しかしこれは、詩や幻想小説においては意図的に用いることで「夢の中の不確かさ」「時間の流れの曖昧さ」を強調したりできます。他には「強調したい点の多さを意図的に制限しない」などもありますね。

 前の二つは分かりやすいとして、「強調したい点の多さを意図的に制限しない」とはどういう事か? ちょっと例を挙げて説明しましょう。

 「強調したい点の多さを意図的に制限しない」というのは、一見すると冗漫で、焦点のぼやけた表現に見えるかもしれません。しかし、あえて複数の要素を同時に強調することで、読者の視線を一つに収束させず、作品世界の厚みを増す効果があります

 たとえば「夜の森は、濃い霧と、遠くの鐘の音と、落ち葉を踏む獣の気配とに包まれていた」という文を考えてみましょう。通常なら一つの要素に絞り込み、雰囲気を端的に描くべきところですが、あえて「霧」「鐘の音」「獣の気配」と複数を並列させることで、読者の注意をあちこちに散らし、不穏で豊かな情景を立ち上げています。

 この「強調の散らし方」こそが一種のねじれであり、単線的な意味やイメージを超えて、読者の感覚を多方向に揺さぶります。結果として、体験としての読書が「一瞬の把握」ではなく「全体に沈み込む」ものになるのです。これは伝統的なファンタジーや翻訳文体の美点の一つと言っても良い特徴でしょう。
 
 また、人間の感情や直感は理屈通りに整っていないことが多いものです。時にはそれを見つける過程がその物語のテーマだったりしますが、ねじれの表現をあえて文章に埋め込むと、むしろそんな「生身の感覚」に近づいて、言語化しづらい気持ちを表現できたりしますね。

2.視点のねじれ

 一文の中で三人称が急に一人称化する、あるいは「作者の声」と「登場人物の声」が意図的に重なる、みたいな表現ですね。「視点保持者にトリックを付ける」、「誰が語っているのかわからなくする」事によって演出やテーマの問いかけを深くしたりできます。ホラーなどにも有効ですね。叙述トリックの手法の一つとしても昔から使われていると言ってよいでしょう。

3.修辞的ねじれ

 相反する表現を並置する(「冷たい炎」「沈黙の叫び」など)。矛盾が強烈なイメージを喚起し、詩的効果を生む。これは例えば魔法や魔術などの演出や各種概念の説明にとても効果的です。 とまあ、『ねじれ』に関しては簡単に書いてもこんなにあります。

まとめと、webでは非推奨である理由。

 ここまでざっくりとまとめましたが、しかし定型のweb小説及びそれらが圧倒的に数の多いwebの主要な投稿サイトでは、この表現は用いないほうが良いでしょう。これらの主要な読者層はねじれの表現を『下手としか解釈できない可能性が高いから』です。読み取れないのです。しかし、そうでない読者と作家なら? その場合は意味のねじれは「一つに定まらない読み」を生みだして文学的な解釈の余地を広げる効果があります。 『何歳になっても楽しめ、解像が変わって来る作品』にするためには、このような仕掛けで多義性が見いだせる事が大切です。これが本来の小説の特徴の一つでもありましたね。

 以上、簡潔でしたが小説における『ねじれ』について言及させていただきました。

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実は奥深く美しい『文章のねじれ』について|堅洲 斗支夜/名興文庫の相談役
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