「ムスリムと一緒は嫌」と墓じまい
もちろん反対がまったくないわけではない。早川さんは言う。
「ムスリムを受け入れる前からお墓に入っていた方のご家族から強い拒否がありました。『遺体を布で包むだけで土に埋めるのが受け入れられない』という声もあれば、そもそも『ムスリムが嫌だ』という声もありました。
ムスリムの土葬を受け入れたことで墓じまいしてしまった人も多く、日本人のお墓は最大で270基ありましたが、いまは115基に減ってしまいました。『ムスリムと一緒は嫌だ』という強い声を受け、日本人のお墓がある区画からムスリムのお墓が見えないようにする工事を行う予定です」
土葬自体は法律で禁止されていない。自治体の条例に適合し、自治体の許可があれば土葬墓地設置は可能になる。もっとも、ムスリム向けの土葬墓地の設置をめぐり、住民が猛反対したことで計画が中止になったケースは少なくない。
栃木県足利市の郊外にある小高い山。東京都・大塚にモスクを置く宗教法人「日本イスラーム文化センター」が土地を取得し、墓地の建設計画を進めたことがあった。だが、住民の猛反対があり、計画は頓挫してしまった。「日本イスラーム文化センター」が本庄児玉聖地霊園に「ムスリム向けに区画を購入したい」と打診したのは、そのしばらく後のことだった。