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野狐人〜西村賢太 周りの周りの人たち〜第三回 翡翠 編

落:西村賢太に現在思う事を教えてください。
翡:生活、生きる上でのハリ、それと指針みたいなものを与えてくれたと思っています。
落:ちょっとジーンときました。

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2025年8月2日鶯谷信濃路にて

信濃路、今回は右手テーブル席にて

落日堂(以下、落):何か頼みましょうか。
翡翠(以下、翡):僕は生ビールで。
落:生ビールとジンジャーエール、鯨ベーコン、オニオンスライス、豚足焼きを下さい。
翡:あとカツ煮を。
落:今日は暑い中ありがとうございます。
翡:お待たせしてしまってすいません。
落:いえいえ、全然大したことはないんですが、でもそこに早速引っかかっています。今時5分くらいの遅刻でわざわざ連絡してきてくれるなんて。やはり職業柄ですか?お仕事、聞いてしまって構いませんか?
翡:運転士です。時間に遅れるってのはやはり許せないところがありまして。
落:ああ、さすが運転士さんなのかな、って俺は京浜東北線の中でLINE見ながらニヤニヤしてました。
翡:職業病というか…そういう部分はありますねえ。
落:早速聞きたかった事がありまして。
翡:はい、なんですか。
落:去年の生誕祭あったじゃないですか(2024年7月6日信濃路で開催された西村賢太生誕祭)。あの時参加者全員に名前入りのオリジナルコースターを渡してました。それを忘れて帰った方がいて、翡翠さんに持ち帰ってもらって後日一旦俺に郵送してもらいましたよね。
翡:石川県から来てくれた人のですよね。
落:そうです。せっかく作った物なのでご本人にあの後郵送したのですが、聞きたかったのは翡翠さんがウチに送ってくれた時の話なんです。
翡:なんかありましたっけ?
落:翡翠さんからウチに封筒が送られてきて。その時封筒に書かれた俺の住所と名前、字がデカいことデカいこと!ちょっと面白いなと思ってしまったんですよ。
翡:えー、なんでですか?
落:性格が出るというか、出てしまってるのかなというのか、それまで一度しか翡翠さんに会った事がなかったので、なるほど、この方は字がデカくて太い。彼は器のデカい人間なのかもしれないなって思ってたワケです。俺、自分の字は細くて小さくて丸いんですよね。
翡:返信いただいて、そういえばそうでしたね。
落:翡翠さんから届いた封筒に書かれてた字は太いはデカいわ、そして綺麗で上手でした。で!でです!4月に「ピンクフラミンゴ」(落日堂が出演している新宿2丁目でのDJパーティー)に来てくれた時終わった後皆でゲイバー行きましたよね?朝方酔っ払った翡翠さんは(俺のチ◯コはデカい!)って話をママにしてました 笑 字の大きさ、その時の話に繋がるんじゃないかなあって思って。
翡:ああ、反比例するみたい事ですか?
落:逆です逆です!
翡:ああ、逆ですか 笑
落:この人は自信があるから字もデカいのか〜、ってなんか1人で俺は納得してて。
翡:全くそんな意識はないですよ。
落:そりゃあそうですよ、ご本人は!で、自分んちの妻にそんな話をしたら無言で笑っていました。では何かい、俺は細くて小さくて、丸いのかよ…って。字ってのは無意識のうちに性格が出たりするって言いますから、そういうのってあるのかなって。
翡:確かに昔から僕は字ああいう感じなんですよ。
落:お、マジですか。綺麗ではあったんですけど、大きさだけだとそれは悪い言い方をしてしまうと大雑把的な感じと言いますか…
翡:それは大いにその通りです。
落:その裏付けとしてチ◯コのデカさがあるのかなあと思いまして。字の大きさに関しては1年前に思ったワケで、そこからゲイバーでの件で、お、繋がった!って勝手に思ってたんです。
翡:ワハハハ!でも言われてみりゃあ確かに。狙ってやってる訳じゃないですからね。ナチュラルな感じで。今仕事で新人の指導をしてるんですけど、トラブルがあった時とか報告書を書くんです。今は新人と同乗してるので2人で同じ事を書くのですが、その紙を僕は半分くらいスペース使うのに、新人は1、2行で収まったりしてます。
落:絶対性格が出てますよね。で、まだ字の事掘って申し訳ないんですけど俺はコンプレックスなんですよね、昔から。丸字なのと単純に下手くそで。翡翠さんは堂々としてて羨ましいなって思いました。
翡:ちょっとそれ、凄く見に覚えがありまして。僕昔からわりと字が綺麗って言われてたんですよ。
落:習ってたりしたんですか?
翡:いえ、そんなのは全然ないです。
落:習ってなくて綺麗!そんな方が世の中にいるんですね。はなからとても良い話が聞けました。今日はこんな話も是非このインタビューに収めたいと思ってます。前置きがだいぶ長くなりましたけど、本日はよろしくお願いします 笑
翡:こちらこそよろしくお願いします 笑

『特定の誰かにのめり込んだ事がほとんどなかったんです』

落:「野狐人〜西村賢太 周りの周りの人たち〜」と題しまして今回は3回目、今日は10個くらいの質問を用意してきてます。ゆっくりと話していきましょう。いきますね。まずは出身地と年齢を教えてください。
翡:神奈川県横浜市の端っこです。駅でいうと大船というところ。横浜と鎌倉に跨った地域で、僕は横浜市側です。
落:大船って結構都会な感じです。大船から江ノ島の方へモノレールが出てますよね。前に車で走ってたらあのモノレールが上走ってるの見かけて。
翡:湘南モノレールですね。
落:あれ凄い気になってるんですよ。住宅街とか走ってますよね。
翡:あれ凄い迫力ですよ。街中とかも走ってて、しかも懸垂式っていって通常モノレールはレールに跨ってるんですけど湘南モノレールはぶら下がってるんです。で、凄い飛ばすからめちゃくちゃ怖いんです。
落:見ててそんな感じでした。いつか乗りに行きたいなって思いました。
翡:あれは是非1回乗ってみて下さい。結構おっかないですよ。
落:おっかないんなら尚更乗ってみたいです。
翡:ぶら下がってるタイプのモノレールはなかなかありませんから。
落:昔上野動物園にあったモノレールみたいな感じって事ですよね?
翡:そうです。
落:まあ江ノ島に用はないのですが、今後の俺の目標です。YouTubeで観た湘南モノレールも面白かったし。
翡:サザンに興味あるとかでなければ、江ノ島はまあ、あのまんまの江ノ島です。
落:年齢はもし聞けたらでお願いします。
翡:今37歳で38歳になる年です。
落:今の生活の中心って何になりますか?
翡:生活の中心はやはり仕事ですよね。一番時間を割かれますし仕事ありきで他の事を動きますから。みんなそうじゃないですか。
落:では、仕事を抜きにしたらどんな事が中心になってきますか?
翡:飲み歩きが好きなので酒と…やっぱり西村賢太ですかね。
落:おお、もう西村賢太が出てきましたか。
翡:ちょっと早かったですか?
落:全然問題ないですよ。
翡:僕今まで、特定の何か、例えばアイドルとか歌手とか、特定の誰かにのめり込んだ事がほとんどなかったんです。
落:推しって言うんですかね。
翡:今風に言うと推しですか。推しって今までいなかったんです。ライブ行ってみたりとか。そういうの羨ましいなって思ってたんですよ。醒めてると言いますかハマれる物がなくて。
落:正直そういったタイプには見えるかもしれません。
翡:自分でも驚いているんですよ。西村賢太、滅茶苦茶刺さったので。
落:それは何年前くらいなんですか?
翡:3年前、西村賢太が亡くなった直後です。存在は知ってたんです、芥川賞の授賞会見での発言とかその後のテレビのバラエティ番組観たりしてああ面白い人だなって思って。面白おじさんみたく認識して気になる存在ではあったんですよね。
だけど当時は本を読んでみようとは思わなくて。で、そうこうしてるウチに死んじゃったじゃないですか。
落:では、前置きがだいぶあったんですね。
翡:ああ、死んじゃったんだなって思って。その1週間くらい前に石原慎太郎が亡くなって新聞に追悼文を西村賢太が書いてたじゃないですか。それを読んで凄いカッコいい文章を書く人だなって思ったんです。
落:あれは評判いいですよね。
翡:そこで西村賢太を久々に思い出したんです。そういえばいたな、すげーカッコいい文章書くんだなって。
落:なるほど。
翡:で、そんな事言ってたら1週間もしないウチに本人も死んじゃって、この間石原慎太郎の追悼文書いてたじゃん、アンタも死んじゃったのかよ!って一気に興味が湧きまして、本読んでみるかとなって「苦役列車」を読んだワケです。
落:じゃあ割と導かれた感じもありますかね。導かれたとして、導かれて辿り着いた対象って後に何よりも大事になったりしますよね。特別になるといいますか。
翡:はい、たまたま読んだ新聞から、西村賢太に呼ばれた感じはあったかもしれませんね。


『東京から行った場合は大阪に流れたり』

落:趣味ってザックリと聞かれたら何になりますか?仕事柄、電車ですか?
翡:嫌いじゃないですけど…笑 旅行は好きです。
落:旅行ばっかりしてますよね翡翠さん。X見てるとそんなイメージが大きいですよ。この前は金沢に行ってるってポストしてたから七尾に行くのかなって思って見てたら内灘って少し地味目な感じの場所に行ってたのが面白かったです。グーグルで調べたら、マニアックなところ行ってるなあ、って。翡翠さんには鉄オタ的な部分もあるんですか?
翡:否定はしませんけどガチって程ではありません。写真撮ったりとかではなくて、電車乗ったりその土地の地理、電車が通る様になった背景なんかに興味があります。西村賢太の小説もちょいちょいあるじゃないですか。
落:そうですよね、東京近郊の電車から七尾線まで。俺も0.5%くらいは鉄オタ的な気質があって、よく電車メインの旅番組を録画して観てます。
翡:充分鉄ヲタ素質ありますよ。まああの時は、七尾には少し前に行ってたので、今回は石川近代文学館の西村賢太の展示を観に行ってたんですよね。
落:Xのポストだと翡翠さんサンダーバードってワードがよく出てきますよね。俺はサンダーバードよく知らないんですけど、あれは京都から金沢に行くのですか?
翡:大阪です。大阪から和倉温泉まで行くんですよ。だから七尾で降りて藤澤淸造 西村賢太のお墓参りをして。でもあの辺りは正直やる事もあまりないから東京から行った場合は大阪に流れたり。
落:わざわざ大阪経由で帰ってくる、と。楽しそうです。大阪には何があるんですか?何して遊んでるんですか?
翡:やはり酒飲んだりとか、他はまあ…察して下さい 笑
落:察していいんですね!勝手に色々察しますよ!!まあ、この辺りにしておきましょうか 笑 オフレコかな。


落:電車で例えると乗り入れが始まったというか…
翡:直通運転したみたいな 笑 


落:話は変わりまして、子供頃はどんな子供だったんですか?字が綺麗だったって話はさっき聞きましたが。
翡:自分でこんな事言うのも恥ずかしいんですけど昔から漢字が凄い得意で。小学校低学年の時は漢字博士って呼ばれていました。
落:博士っぽいですよね、今も。その頃眼鏡はかけてたのですか?博士。
翡:眼鏡はしてなかったです。漢字に詳しくて、やっぱり本を読むのが好きだったんです。
落:どんな本が好きだったんですか?
翡:ひらがなの本ですよね。漫画と半々みたいな。「怪傑ゾロリ」とか。
落:自分から欲して買ってたんですか?親に頼んだりして。
翡:そうだったと思います。それで高学年位になると今度は「ズッコケ3人組」とかを読み出して。
落:ありましたね。あれシリーズいっぱいありましたよね。懐かしい。俺も大好きでした。
翡:だから西村賢太にハマってまた色々読み出して、思い返してみると幼い頃からのそういう素養はあったのかなって思います。考えてみたら自分は本が好きだったなって。
落:西村賢太のおかげ的な。
翡:そうです。今まで忘れてた事がまた呼び起こされたような感じですかね。
落:それも良い話ですね。
翡:小さい頃に下地があったんだなって。
落:西村賢太きっかけでそれに気付いてどう思いましたか?
翡:嬉しかったです。最初の字の話みたいな、点と点が繋がったような。
落:電車で例えると乗り入れが始まったというか…
翡:直通運転したみたいな 笑 それと西村賢太にハマって最近つくづく思うようになってきたのが、小説でも漫画でもなんでも、クリエイターって言うんですかね、創作している人へ対する尊敬の念が深くなってきました。今までそんなの考えた事もなかったんですよ。
落:それも面白いですね。今までは創作している人に全く感謝も尊敬もなかった、と 笑
翡:なんとも思わなかったです。
落:まあ、それが普通と言えば普通なのかな。
翡:西村賢太は凄いなって。おかげで初めて創作者への尊敬の念が湧いてきたんです。それは西村賢太に限らずとも。


『後が大変だと思うからブレーキをかけちゃいます』


落:アルバイトってどんなのやってましたか?職場以外の知ってる人がバイトしてる姿ってなかなか想像しないので是非教えてください。
翡:生協でバイトしてました。
落:スーパーですか?
翡:はい、スーパーです。あとはパン工場とコールセンターでやってましたね。スーパーが高校生の時で、あとの2つが専門学校の時ですね。
落:専門学校は運転士になる為の専門学校だったんですか?
翡:全然違くて、公務員試験とかなんちゃら法律専門学校みたいなところでした。
落:堅い感じの学校ですかね?
翡:そうかもしれませんね。
落:基本的に、ベースは真面目な人なんですかね、翡翠さんって。
翡:と、自分は思っているのですが…だからなんで西村賢太好きになったかって言うと、やっぱりあんなはちゃめちゃな生き方に憧れると言いますか。
落:自分に無い物ですかね。
翡:自分に無い物を求めるみたいな、思ってもなかなかああやって向こう見ずに暴れたりとか、してみたいと思うけど後が大変だと思うからブレーキをかけちゃいます。
落:まあそれが普通の社会人ですよね。
翡:小説の中とはいえあれだけ後先考えずに無茶苦茶に暴れて…自分には出来ないなあって。
それでも似てるなって部分ももちろんあるし、これは真似出来ないよなって部分と、そのバランスがもう、前々から思ってるのが、捨てる所の無い小説だなって思います。
落:なんて良いファンなんでしょう。
翡:ホント、素直に面白いなって思ってますよ、盲目的じゃなくて。話の本筋に関係ない部分なんかでもいちいちそうだよなって共感出来たり。
落:賛辞賛辞、ベタ褒め!笑 こうやって今日は何度も気がつくと西村賢太の話に逸れていて、それはそれでとても良い時間かなと思っています。それで、何歳で今の仕事に就いたんですか?
翡:20歳ですね。もう20年近くなります。
落:20年近く同じ職場で、って案外なかなか出来る事ではないんじゃないかと尊敬します。働き始めた頃と、今と仕事に対する気持ちって変わった事はありますか?
翡:やっぱり働き初めた頃は何もわからないから目の前の事やるしかないって思ってて。今はだいぶ年も取ったし、スレてきたので…
落:スレないでくださいよ。
翡:いやいや、スレますよ 笑
落:スレたのは西村賢太のせいもあるんですか?
翡:いえいえ、それは単純に加齢に伴って色々とシラけてきたといいますか、もう別にね、なんとなく先も見えてきたと言いますか。
落:俺より年下のクセにそんな事言わないでくださいよ〜
翡:逆に僕くらいの歳の頃どうでした?40歳手前の。
落:ようやく就職したところでした 笑 38歳で。
翡:笑
落:色んな人がいますよね。じゃあ干支はなんですか?
翡:辰年です。
落:同じです。ひと回り違いますね。話逸れるんですけど、俺よりふた回り違う辰年の人に言われた話があって。我ら辰年は誰かとお店入る時先頭きって入らない方が良いそうですよ。何故なら辰は火を吐くって。火を吐いて周りを威嚇してしまうそうです。水商売の怖い女性マネージャーに言われてた話なんですけど。受け売りの辰年としての処世術でした。
翡:なるほど。気をつけます 笑



落:少年達の憧れの職業みたいなイメージもありますけど、声かけられたりしないんですか?一緒に写真撮ってくださいって。
翡:ありますよ。悪い気はしないです。

落:俺が1番気に入ってる質問を次にお願いします。
翡:はい。
落:好きな食べ物はなんですか?
翡:今日頼んだカツ煮とか唐揚げとか、カレー、ラーメンとか、お子ちゃまが好む食べ物が大好きです。
落:その割には太ってないですよね。
翡:でも最近尿酸値の薬を飲み始めましたよ←NEW!!
落:仕事中のお昼ごはんって結構ガッツリですか?
翡:はい、仕事中はそれくらいしか楽しみがないので。パッと見痩せて感じに見られるのが逆にタチ悪いかななんて思っています。
落:運転士さんって、関連の仕事の中で花形的な存在だと思うんですけどいかがですか?
翡:昔はそうでした。でも今は普通の平社員ですよ。
落:少年達の憧れの職業みたいなイメージもありますけど、声かけられたりしないんですか?一緒に写真撮ってくださいって。
翡:ありますよ。悪い気はしないです。
落:子供達に憧れられる仕事ってのはスポーツ選手とか芸能人とか、限られてると思うから羨ましいですね。
翡:嬉しいですよ。そんな職業をやれてるっていうのは純粋に有難く思っています。
落:ちゃんと自分が勉強してきたからだと思いますけど、子供達に声かけられたら翡翠さんは凄い照れてそうですよね。ちょっと子供苦手そう 笑
翡:正直あまり得意じゃないです 笑 でも仕事の一環ですかね。
落:ファンサービスですね。西村賢太のネルシャツみたいなもんでしょうか。
翡:ダメ人間ユニフォームではないですけど 笑
落:話変わって、好きな異性のタイプを教えてください。
翡:これはかなり難しい質問ですね。見た目だったら小池栄子みたいな人が好きです。
落:意外っちゃ意外です 笑
翡:わりと熟女といいますか、可愛らしい感じよりも、少し落ち着いたお姉様系が好きです。小池栄子がテレビに出てると一時停止して見たりしてる時があります。
落:口開けて見ちゃってる時ありますよね、小池栄子は。内面的な感じではどんな方が理想ですか?
翡:会話を重視したいので、ちゃんと喋れる人、ちゃんと会話が出来る人が良いですね。
落:簡単そうで、案外いないんですよねえ。
翡:最終的にはやっぱり波長が合う人が1番なんですけどね。だけど、会話を楽しみたいってのは凄くあります。
落:長くお付き合いされてる彼女がいるっては聞いていましたが、現在はそれがうまく回ってるんですね。この話はここまでにしておきます。ありがとうございます。


『怒鳴られたり蹴られたりもありました』


落:ここからが本番です。西村賢太に出会って、それ以前以後で自身が変わった事ってありますか?
翡:さっきも少し話しましたが、推しっていう概念がわからなかったんです。でも出会って西村賢太っていう推しが出来たんですよ。で、今心の支えになってるんですよね。
落:大きい事でも小さい事でもいいんですけど、人生で迷った時西村賢太だったらどうするかなって思う瞬間はありますか?
翡:そうなったとして北町貫多みたいに行動出来るかっていったら出来ないんですよ。だけど出来ないとしても、どん底にいたとしてもあれだけ足掻いて暴れて歩いて行ける人間がいる、それは本当に心の支えになっています。
落:西村賢太の小説を読んで自分自身がタフになったような部分はありますかね。
翡:ここ数年は平和な人生を送ってきたので、幸いそんな場面はほとんどありませんが、今後そういう場面に遭遇したとして賢太イズムで乗り越えられるのか乗り越えられないのか、今はわかりませんけど、乗り越えられたらそれは出会えてよかったな、ってなると思います。
落:人生で平穏じゃない時期ってありましたか?
翡:運転士の仕事を始めた頃ですね。見習い期間の時。それまで違う部署にいたので11年前位ですけど、全然仕事が出来なくて凄く病んでしまってたんですよね。とにかく覚える事が出来なくて。
落:仕事で覚えないといけない事の量が普通の会社の比じゃなさそうですよね。
翡:今僕も新人教えてるんですけど我々の業界ってマンツーマンで教育するんですよ。今だに師匠と弟子みたく、このご時世に封建的な。
落:それは知らなかったです。
翡:約1年間、大の大人が2人で乗務員室って密室に毎日いて。
落:ちょっときつそうです。
翡:師匠も教えるの初めてだし自分も甘ったれだし、でも師匠はなんとかして僕に仕事を叩き込まないといけない、怒鳴られたり蹴られたりもありました。
落:昭和です。
翡:どんだけ怒られたかわからないくらいで、あの時は仕事をもう辞めたかったですね。
落:運転士というのは志願してなる物なんですか?
翡:最初は駅に配属されていわゆる駅員を。その後車掌をやって試験を受けて運転士になるのが一般的な流れです。今は若干違うのですが。
落:挫折があったんですね。
翡:なんで自分はこんなに仕事出来ないんだろう、向いてないかもなって。でもどうにかこうにか師匠も最後まで面倒見てくれて。
落:少し意外な話だったかもしれないですね。翡翠さんは俺には飄々としてるように見えてたので。挫折が見えないタイプというか。
翡:割と温い人生を送ってきて、初めてそこで壁にぶち当たった感じでしたね。
落:11年前だから西村賢太をその時はまだ知らなく…
翡:知ってたらまた違ったかもしれませんね。
落:仕事投げ出したりしちゃってたかもしれませんね。

『何年も西村賢太を忘れてた』


落:次に、西村賢太が死んだ時どう思ったか、ってのを聞きたくて。
翡:これも最初流れで話しちゃったんですけど、それまではファンでもなんでもなくてなんとなく気になる存在ではあったんですけど…っていうのも忘れてる位何年も西村賢太を忘れてたんですよ。それが石原慎太郎の追悼文読んで思い出して、凄い良い文章で感銘を受けて。そしたら本人も死んじゃったから、えー、なんで!って。
落:何で知りましたか?
翡:ネットのニュースだったと思います。タイミングは忘れましたけど。


『エネルギー、生きる力ってのを教えて貰った』


落:西村賢太に現在思う事を教えてください。
翡:生活、生きる上でのハリ、それと指針みたいなものを与えてくれたと思っています。
落:ちょっとジーンときました。俺は親でも関係者でも誰でもないんですけど。
翡:言い過ぎですか?笑
落:いえ、凄く嬉しい気持ちになりましたよ。自分を変えてくれたみたいな事ですかね。
翡:おかげで物の捉え方変わったというか。
落:それって良い方向にですかね。
翡:トータルで考えたら良い方向にだと思います。
落:卑屈な考え方にもなって行きそうなので。
翡:そんな部分はあったとしても…なんだかんだで最終的には持ち直すエネルギーがあるじゃないですか、西村賢太には。
落:エネルギーはありますねえ。
翡:そういうエネルギー、生きる力ってのを教えて貰った、そう思います。
落:翡翠さんの人生に凄く影響を与えたのですね。
翡:小説に書いてある事って暗くてネガティヴで社会の底辺みたいな話で。だけど、さんざん言われてるとは思いますけど、隠したい話、人に言いたくない話、それを文章に起こして、読ませる。そして面白い。ただ暗いだけじゃなくてやっぱり面白いじゃないですか。
落:エンターテイメントですよね。
翡:経験した事自体はそこまで大した事ではなくて、まあお父さんが逮捕されてるってのはなかなかない話ですけど。
落:普通はね、ないです。
翡:その後の話は仕事が続かないとかよくある話で。それをやっぱちゃんとエンタメに昇華させてるって思います。
落:同感です。


『赤目四十八滝心中未遂』


落:他に好きな作家がいたら教えてください。
翡:西村賢太から派生して知った作家、藤澤淸造だったり田中英光、葛西善蔵なんか読んでみましたけど、正直あまり刺さりませんでした…
落:そんな人は多いと思いますけどね。
翡:ただ車谷長吉、特に「赤目四十八滝心中未遂」は面白かったです。
落:面白いですよね、暗くて。翡翠さん姫路の文学館まで行って車谷長吉の展示会見てましたもんね。
翡:あれもエネルギーを感じました。なんで好きなのかなって考えたら、主人公って本人がモデルだと思うんですけど、良い大学出て就職して、エリートから脱落して流れ者やってって。憧れと共感がありました。
落:憧れと共感はありますよね。エリートでなくとも。
翡:で、最終的にあんたはこんな所にいる人間じゃないって帰されて。それも含めてですかね。ヤクザとか流れ者に憧れてるけど結局なりきれない。主人公は「根が」エリートで。そんな心理は凄くわかりました。


『西村賢太だったらこの局面をどう乗り越えたか』


落:最後に今後のやりたい事、目標をお願いします。これは西村賢太云々ではなくて、ご自身の人生についてでも全然大丈夫です。是非聞かせて下さい。
翡:自分でも創作をしてみたいって意欲が湧いてます。
落:マジですか?意外です。そういうのとは一線引いてる方だと思っていました。
翡:そういう人間だと思ってたんですけど、今は書いてみたいなって思っています。読むだけではなくて自分でも創作してみたいって気持ちがせっかく湧いたので是非やってみたいなと。何を書きたいとかがしっかり浮かんでるワケではないんですが。
落:なんとなく想像するのが、運転士の視点での日常なんて面白そうですね。
翡:西村賢太だったらこの局面をどう乗り越えたかみたいなのを自分の言葉でって。
落:西村賢太愛好家の運転士が書いた小説なんていいですね。でもあまりヤバさを出したらよくない職業ですよね。
翡:適性をクリアしてアルコール検査に引っかかってなければ大丈夫ですよ 笑
落:そりゃそうですね。炎上してしまう 笑 では締めにかかります。何か言い残した事があれば是非お願いします。
翡:今までSNSって全然やってこなかったんです。でも勇気を出してやってみたら思いの外西村賢太好きな人が沢山いました。そして繋がって世界が広がってこうやって色んな話が出来て。本当に嬉しいなって思っています。
落:人生が豊かになったって感じですかね。これも良い話ですね。今日は良い話が多いかも。
翡:はい、X開いていいねが付いてると嬉しいし。
落:え?そんな感情はないタイプの人だと思っていました 笑
翡:嬉しいですよ。
落:なんか良かったです。今日はありがとうございました。また飲みましょう。
翡:ありがとうございました。お疲れ様でした。
落:では最後に、
落 翡:出発進行〜!!(落日堂でっち上げの締め叫び、翡翠さんごめんなさい、そしてありがとうございました。)


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じゃがいも3点セット



150分ほど話をしていました。文中にもありましたが、翡翠さんはいつも飄々としてて酒飲んで酔っ払いながら西村賢太の話してりゃ楽しい、以上。なんて人だと思っていましたがその人生にはしっかりと挫折があって、導かれるかの様に西村賢太の文章に出会い今では創作にも前向き。これってまんま、西村賢太 周りの周りの人たちじゃないですか。


野狐人〜西村賢太 周りの周りの人たち〜
第3回 翡翠 編 終了



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