FM TOWNS用ゲームソフトを創出してきた「データウエスト」本社が消失していた

興味のない人にはなんのこっちゃと思いかもしれないが、1980年代の8・16ビット PC、90年代前期には富士通の32ビット PC「FM TOWNS」や家庭用ゲーム機「PCエンジン CD-ROM2」「メガCD」でゲームタイトルをリリースしていたメーカー「データウエスト」本社のあった大阪市鶴見区のその土地が既にマンション(アパート?)が建設されており、そこにデータウエストの拠点があったことを示すものが消滅しているという話。

 

この記事を書いている時点(2025年8月16日)ではまだGoogleストリートビューの最新情報は2024年8月だが、この当時はまだデータウエスト社屋は健在であったことが確認できる。ここから、僅か1年のうちに解体されマンションが建築されたのであろう。

2024年8月のGoogleストリートビューより拝借

 

「データウエスト」は1986年に設立したメーカー。代表作として全年齢向けの美少女アドベンチャーゲーム「第4のユニット」シリーズ、推理アドベンチャー「Misty」シリーズ、人の心の中に入ることができる探偵を主人公とした「サイキック・ディテクティブ」シリーズ、0.5ドットスクロールが謳い文句だった横スクロールシューティング「ライザンバー」シリーズなどが上げられる。冒頭でも少し書いている通り、FM TOWNSが発売された時には力を入れていた数少ないメーカーの一つだった。

CD-ROMからのデータ読み込みとは並行してアニメーション・動画再生や音楽の演奏をFM TOWNS上で実現する「DAPS」、更に動画再生のみならずゲームデータだけは各プラットフォーム共通のCDから読み込みその機種専用のフロッピー(HDD)に収録したプログラムを起動してゲームを実行し共通化によるコスト削減を図った「DCCS」、といった独自システムを打ち出していたのが特徴的だった。

 

DAPS採用タイトル「オルゴール サイキック・ディテクティブ・シリーズ vol.4」

 

DCCS採用タイトル「ミス・ディテクティブ ファイル#2 姿なき依頼人

 

FM TOWNS市場縮小に合わせ家庭用ゲーム機「PCエンジン CD-ROM2」「メガCD」にも参入をしていたもののそこでも事業がうまくいかなかったようで、データウエスト一連タイトルの音楽を手掛けていた故斉藤康仁(2024年7月18日、虚血性心疾患により死去)氏などのゲーム製作に必要な人材の退職もあり、最終的にゲーム事業そのものから撤退している。その後はバス向けの移動通信システムや一般車両向けカーナビシステムを手掛けて本社所在地も話題に上げている大阪市鶴見区とは別に構えていたようだが、それもまたスマホの台頭やカーナビ自体が標準搭載となっているのが当たり前になっていく昨今、また苦しい状況になっていた可能性がありそう。

Googleストリートビューを確認する限り、少なくとも2018年まで閉鎖していたような旧本社屋だが、2019年には移転先を閉鎖した代わりに再び戻ってきている。

2018年11月時点のストリートビュー画像。玄関はシャッター、窓は板で閉じられており営業している雰囲気が感じられない。

 

2019年9月のストリートビュー画像。窓や玄関が開いており、中から蛍光灯の光が点っているのが確認できる。

 

2020年にはゲーム事業再開というアナウンスを出し、当時のゲームタイトルを再版する自社サイト「D-Again」も立ち上げていたが、このサイトやTwitter等のSNS広報活動もまたほぼ更新されることがなく現在では停止中・閉鎖されてしまっている状況。事業再開とは謡っていたが、実情としてはカーナビ・業務用システム開発の損失の穴埋め、在庫処分による事業整理目的だったのかもしれない。

コロナウイルス流行時には「プラチナヴェール」なる謎の除菌剤商品まで手掛けていた。

画像はInternet Archivesより

 

データウエスト公式サイトも去年8月から現在に至るまで1年以上「工事中」というような状況が変わらず、そしてこの本社の消失。

FM TOWNSは自分にとって影響を受けたパーソナルコンピューティングで、そしてもちろんそのプラットフォームに力を入れていた会社もまた特別な思いを抱いていたが、時代の流れとはいえ心にぽっかりと穴が開いたかのような喪失感に襲われる。

せめて「オルゴール」くらいはSteamで再リリースされてほしかった。