「〇〇を食べればがんが治る」って本当? 食事とがんは関係あるの?
食事のせいでがんになったと自分を責めなくていい
どのような食事ががんの発症と関係しているかという研究は世界中で大規模に行われていて、加工肉や赤肉の摂取が多いと大腸がんになりやすく、塩分摂取が多いと胃がんになりやすいことなどがわかっています。 これらのデータをもとに、「がん予防」のために、「食生活に気をつけましょう」と言われています。 ただ、がんは様々な原因が重なって生じるものであり、原因がはっきりしないこともよくあります。 どんなに食生活に気をつけていても、誰もががんになりうるのであって、食事ががんの発症の主原因になる可能性はかなり低いものです。 少なくとも、がんを患っている方が、食事のせいでがんになったと自分を責める必要はありません。 がんで治療を受けている患者さんや、がん治療を受けたあとのがんサバイバーに対しては、様々な「食事療法」の有効性を評価する臨床試験が行われてきましたが、明らかな有効性を示したものは少なく、主要なガイドラインでは推奨されていません。 食事というのは、好みの違いも大きく、食文化の影響も受けますので、すべての人に推奨できる「食事療法」を確立するのは難しそうです。 今は、食事でがんをコントロールしようとは考えず、好みや食文化を大切にして、自分にあった食事を楽しむのがよいのでしょう。
がん治療の副作用で食事が取りにくい時
食事内容によって、がんの経過がよくなるという有効性が示されていないとしても、「栄養腫瘍学」の意義はちゃんとあります。 がんと向き合い、がんの治療を受ける中で、食欲がなくなったり、吐き気、味覚の変化、口内炎などで食事が取りづらくなったりすることもありますが、そんなときに食事を楽しめるように工夫するのもまた、栄養腫瘍学の大事な役割です。 「おいしい食事」と「治療」の両立を目指す、という言い方もできますが、医療機関でこの役割を担っているのは、主に、管理栄養士です。 食欲がないときは、無理に食べようとしなくていい、というのが大事なポイントですが、そんなときでも、食べたいと思えるものがあるかもしれません。管理栄養士などに相談して、食べやすい食事を一緒に考えてみるとよいでしょう。 治療の副作用で味覚障害が起きている場合も、適切な食事について相談に乗ってくれるはずです。口内炎があって、痛みで食べにくいときは、刺激の少ない食事を考えてくれます。 もちろん、無理に食べなければいけないということではありませんので、「食べたい」か「食べたくない」かの「ウォント」の気持ちを基準に考えることが重要です。 体調が優れないときには、料理をしたり、食事を準備したりするのもしんどいですので、レトルト食品を使ったり、簡単に準備できるメニューを選んだり、そんな工夫もできます。 「おいしい食事」は、生活の質(QOL)の改善にもつながるでしょうし、それを守るためにできることを、栄養腫瘍学ではさらに追究していきます。 これらのことは、もともと管理栄養士が取り組んできたことですが、「栄養腫瘍学」をきっかけに、私自身、管理栄養士の重要性を改めて知ることができました。 この新しい学問分野が広まることで、各医療機関で管理栄養士の存在感が高まり、多くの患者さんの食事の時間が豊かになることを期待しています。 そして、患者さんも、がんサバイバーも、一般市民も、みんなで「食事とがん」について考えていけたら、と思っています。 今日も、体調にあわせて、無理なく、おいしく、楽しく、食事をいただきましょう。