「痴漢や迷惑行為の乗客を電車出禁にしてほしい」SNSで要望の声、鉄道会社が踏み切れない「理由」
● 飲食店の「出禁」とどう違う?
鉄道会社からの回答では、永続的に「出禁」を可能にする規定などはないようだった。その背景にはどのような法的根拠があるのだろうか。 「飲食店でいう 『出禁』が簡単に実現できないのには鉄道特有の理由があります。痴漢など犯罪歴を理由として、鉄道の利用を制限するということは現在の法律では不可能です」と甲本弁護士は指摘する。 飲食店での「出禁」とどう異なるのだろうか。 「一般にいう 『出禁』とは、店舗でいえば店主から今後の利用をお断りすると告げられた状態です。法的には施設管理権を根拠として店内の立入を拒否していると解釈されるため、『出禁』を破って店舗等へ立ち入れば建造物等侵入罪が成立します。場合により、警察に通報されて逮捕されてしまう事態になります。 鉄道も、利用者の迷惑となるような行為が現に行われれば、その場限りの対応として施設管理権を使って排除することは可能です。しかし、事前に鉄道の利用を全面的に禁止することはできません。 鉄道は公共の移動手段であり、『移動の自由』が憲法上の人権としてあまねく保障されているからです」
● 鉄道の利用を制限する立法は「可能」
鉄道の利用を制限するためには、立法すれば可能なのだろうか。 甲本弁護士はこう説明する。 「方向としては可能です。立法的にみれば、選挙違反に関連する罪については公民権を停止する措置があるように、罪を償った後においても、犯罪歴に基づいて人権に制限を加えている事例もあります。交通違反に対する自動車運転免許の停止や取消、欠格期間も同じような考え方だといえるでしょう。 もっとも、人権の制限は安易に行うことはできないため、制限の目的と手段は厳しく審査されます。仮に鉄道利用を全面的に禁止するとした場合、生活や就労の基盤を奪うもので、ともすれば、再犯リスクを高めてしまうおそれもある事から、このような制約は憲法に反すると思われます」 では、法整備は事実上、難しいのだろうか。 「痴漢(強制わいせつ)や盗撮は再犯可能性が高いため、混雑した車内で受ける視覚等の刺激を回避することが再犯防止に有効なケースもあると思われ、そういったケースに限って、目的に見合った曜日や時間帯・場所・方法等を限定した必要最小限の規制をすることは、立法論としては可能と思われます」