フリマアプリを展開するメルカリは12月22日、記者説明会を開催し、社会実装を目的とした研究開発組織「R4D(アールフォーディー)」の設立を発表した。
記者発表の冒頭に登壇した山田進太郎会長兼CEOは、日本からアメリカ、イギリスへと展開しているメルカリの事業と強みについて説明。
同社はこれまで、エンジニアリング経験のある創業メンバーからなるユーザーインターフェース(UI)、ユーザー体験(UX)の“爆速改善”を強みとしてきた。
それを踏まえ「これからは技術で差別化するフェーズになってきた。Facebookが良い例だが、最初は使い勝手のいいサービスとしてユーザーを拡大してきたが、最近はタイムラインにより興味のあるものを表示するようにするなどして、他社の追随を許さないような技術的バリアをつくっている。我々も同じようにこれからは技術で差別化していく」と、先進的な研究開発組織に取り組む意図を語った。
研究開発組織「R4D」とは何か
研究開発はR&Dと言われるが、メルカリは「R4D」だ。この名称には4つのDを研究するという意味があり、
- Development(開発)
- Design(設計)
- Deployment(実装)
- Disruption(破壊)
という4つの目的から構成されているという。R4Dに対する投資額は具体的には明らかにしていないものの、「初年度は数億円程度、翌年以降はもっと増えるのではないか」(山田会長)という。
R4Dの取り組みが企業の研究機関として特殊なのは、その目的が「新しい技術の研究開発」にとどまらず「社会実装」を前提に置いているということだ。
多くの技術や研究成果が「事業化」を検討する過程で世の中に出ないものになってしまうという現実がある一方で、自社と外部の企業や教育機関との取り組みのなかで、「事業化の前に」社会実装をやってしまおう、というのがR4Dの目指すところだという。
通常のメルカリの研究開発と違う部分は、社内での新技術探求は1〜2年という比較的近いスパンの実現性を求めているのに対して、R4Dでの研究テーマ採択は、「3〜5年という中長期的スパンでビジネスやインフラになるかどうか」(山田会長)を基準に選んでいるという。
シャープが共同研究する目的は「スピード」
共同研究パートナーは、この取り組みをどう見るか? パートナー企業であるシャープからは、研究開発事業本部長の種谷元隆氏が登壇した。
「サービス開発だけではなく、IoTを使ったフィジカル(物理的世界)を巻き込んだチャレンジをしていくというのが、このアクティビティだと理解している。(中略)シャープは、スタートはハードウエア企業だったが、IoT時代の“AIoT”に向けてステップインしていくなかで、(自社の)成長をこの領域に求めている。メルカリと一緒に“速く社会に問いかける”ということをR4Dのなかでやっていきたい」
と語った。シャープが共に取り組む目的の一端は、メルカリの「スピード」にあることが分かる。
先進テクノロジーを追っていくことの重要性
山田会長は質疑応答の中で、先進テクノロジーを追っていくことの重要性を次のように語る。
「AIを使うと明確にGMVがあがったり、収益につながる。IoTやブロックチェーン、AR/VRといったように、(最近の流行はメルカリの事業に)割と近く、2〜3年後に我々のビジネスへの影響しそうなものが容易に予想できる。そういうもの(技術)をちゃんと追っていくのが会社として大事」
メルカリは国内有数の評価額10億ドル(約1132億円)超のユニコーン企業として知られ、過去何度も「近く上場する」と噂されてきた。
大手IT企業はほぼ例外なく研究組織をもっている。「R4D」という新たな取り組みの発表は、視点を変えれば、メルカリが次の飛躍を目指して、彼らと同じ土俵を目指しているとも言える。
本日発表された、主要なR4Dの研究者や共同研究パートナーは以下のとおり。
(文、写真・伊藤有)