サマソニ大阪「万博記念公園」移転が大成功した理由 ロケーションや楽しみ方を掘り下げる

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8月16日(土)・17日(日)に東京と大阪で開催されるサマーソニック2025。大阪会場は去年から万博記念公園に移転したのが大成功。SNSには絶賛の声が溢れかえった。

今回はサマソニ大阪の魅力を掘り下げるべく、FM802の洋楽専門プログラム「THE OVERSEAS」とRolling Stone Japanの連動企画が実現。番組DJの深町絵里さん、キョードー関西の上田将聡さんと谷本絢子さんに、大阪会場の理想的なロケーション、各ステージの見どころ、気になるラインナップまで掘り下げてもらった。熱を帯びた番組収録の模様をお届けする。(構成・高久大輝)


左から深町絵里さん、谷本絢子さん、上田将聡さん


万博記念公園に移転した理由

深町:上田さん、谷本さん、よろしくお願いします。まずは、お二人が普段どんなお仕事をされているのか教えてください。

上田:洋楽/邦楽を問わず関西圏でのコンサートのチケット販売、プロモーション、運営など諸々やらせていただいております。クリエイティブマンさんの洋楽公演はウチの会社で一手に引き受けておりまして、中でもサマーソニック(以下、サマソニ)は自分の憧れのイベントでもあったんですが、そちらにも関わらせてもらっています。

谷本:私も基本的には同じで、洋楽を中心にクリエイティブマンさんが関西で開催する公演もご一緒させていただいたり、サマソニはプロモーションからご一緒させていただいている形です。

深町:サマソニでは具体的にどのようなお仕事をなさっているんでしょうか?

上田:プロモーションから当日の現場運営、制作業務まで担当しています。

谷本:私も開催前はプロモーション面を担当しています。当日は楽屋周りを担当していて、クリエイティブマンさんとやりとりしながらアーティストのケアをしたり、どう動くかの案内をしたりしています。

深町:開催直前の今が一番忙しい時期ですか?

上田:そうですね、今ちょうど最後の大詰めのタイミングで張り切って働いています。

深町:開催の準備というのは、1年前のサマソニが終わった段階でスタートするんですか?

上田:ブッキング自体は何年もかけて(クリエイティブマンの)清水社長を中心にセッティングしています。自分たちは特に会場との調整等の部分を担当しているんですが、それも随時、期間を問わずに詰めていっている状態です。


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深町:ではいよいよ開催が近づいてきた、SUMMER SONIC 2025 OSAKAについてお伺いしていきます。サマソニ大阪と言えばこれまでは舞洲スポーツアイランドで開催されてきましたが、大阪・関西万博の開催に伴い、2024年から会場を吹田の万博記念公園に移転しました。移転後、去年が初回だったんですけど参加者の皆さんはもちろん、アーティストにも非常に好評だったとのことで。素晴らしいですね。

上田:ありがたいです。

谷本:めちゃくちゃ嬉しい!

深町:去年から移転した理由は何だったんですか?

谷本:今おっしゃっていただいた通り、大阪・関西万博の開催に伴って今まで使っていたところが使えなくなり、いろんな会場を下見しまして、移転したという経緯です。大阪府/大阪市の皆さんのご協力が非常に大きく、去年から吹田の万博記念公園の方で開催できるようになったんです。

深町:今、万博が非常に盛り上がっています。(1970年の大阪万博跡地に整備された)万博記念公園に、(2025年の)万博の開催に伴う移転ということで、すごく意味のある移転に感じますよね。いつ頃からこういった話が?

上田:万博が決まって、そうなると当然移転の話が出て。そのときから我々は動き始めたので、たしか2~3年前だったかと。


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深町:そこから他の候補地も含めて足を運んだ中で、万博記念公園で開催することになった決め手はどこにありましたか?

上田:2020年にOSAKA GENKi PARKというイベントが万博記念公園で行われたときに、自分たちキョードー関西も運営に関わらせていただいて。そのときの経験と実績が僕らにとっては非常に大きな基礎になったと思います。その公演の様子を見て「これだったらできるね」と思ってくださった皆様も多いのではないかなと。そこが大きなターニングポイントでしたね。

深町:なるほど。そんな一つの成功体験があった上で、さらに一歩踏み出して、サマソニ大阪も万博記念公園で去年開催されたわけですね。サマソニは都市型のフェスとして成長してきたイメージですが、万博記念公園って本当に駅が近くて。そういう意味ではまさに都市型ならではの快適さもありつつ、一歩踏み込むと自然もあって。贅沢ですよね! なんで今まで気づかなかったんでしょう、万博記念公園のポテンシャルに。素晴らしかった!

 

イ・ヨンジが語る 韓国の新世代アイコンが放つ声、星野源と日本への深い愛情

イ・ヨンジ

ラッパーとしても、MC・タレントとしても、時代のアイコンとしても、無限の輝きを放つ韓国のヒップホップアーティスト、イ・ヨンジ(Lee Youngji / 이영지)。今夏にサマーソニック出演を控え、5月にリリースされた星野源のニューアルバム『Gen』へのフィーチャリング参加も話題を集めている。自身の声とラップ、ステージに懸ける情熱、星野源とのエピソード、日本への思いなど多岐にわたる質問を投げかけると、終始飾らない言葉で応えてくれた。


※한국어 버전은 일본어 버전 밑에 있습니다.
You'll find Korean version after Japanese one. Here's the link.



自分のメッセージを多様な形で

―ヨンジさんは「高等ラッパー3」(韓国のラップサバイバル番組)で一躍注目の存在となりました。ラップを始めてわずか半年で優勝し驚きを呼びましたが、最初はラップのどのような部分に魅せられたのでしょうか。

ヨンジ:正直に言うと、当時はラップへの関心よりも“友達に注目されたい”という思いが一番大きかったです。「高等ラッパー」は同年代に一番人気がある番組だったので、「これに出たら友達が喜ぶかな」と。なので、当時は自分のラップのどこがいいのかも全くわかっていませんでした。



―心地よいハスキーボイスや高速フロウ、圧倒的な声量など、ヨンジさんのラップは誰もが認める魅力があると思います。現時点ではご自身のラップの強みをどう捉えていますか?

ヨンジ:私は幼少期から、声量が他の人より3倍くらい大きくて(笑)。伝える力そのものが生まれつき強いほうだと思うし、そこがラップでも生かされている気がしますね。あと、私は話したいという欲が強く、子どもの頃から1人でずっとしゃべっていたので、声が枯れ気味なんですよね。そこからユニークなラップのトーンが生まれていると思います。

―デビュー後は楽曲制作に悩む日々が続いたそうで、5年の時を経て、2024年6月に初EP「16 Fantasy」をリリースしました。「16 Fantasy」にはR&Bのムードを濃く感じますし、ロックやポップスへの愛情も深く、ラッパーやヒップホップアーティストという枠で括りきれない存在になりつつあると感じます。

ヨンジ:私の活動を丁寧に見てくださってありがとうございます。サバイバル番組で優勝してデビューしたあと、自分の中にずっと「本当にこの道を歩んでいくのか?」という不確かな気持ちがありました。でも音楽を作り続けるうちに、「私、意外といろいろなことができるのかもしれない」と思うようになって。今はまだ、いろんなことを試している段階ですね。ヒップホップという枠に収まらず、自分のメッセージを多様な形で伝えていきたい。「16 Fantasy」でも、私が伝えたかったことを様々なジャンルに落とし込みましたし、これからもそういうやり方を続けていくと思います。でも、自分は一番何が上手かと聞かれたら、「ラップです」と答えたいですね。




―伝えたいメッセージが音楽の中心にあるということですが、楽曲制作はどんな順序で進めていますか?

ヨンジ:まだ自分でトラックを作るスキルがないので、様々なプロデューサーさんからトラックをいただいているんですが、聴いた瞬間に直感的に浮かんだものを作品に反映することが多いです。それで自然とジャンルの幅が広がっているんじゃないかな。最近も「16 Fantasy」の時と同じく、メモ帳に書き溜めておいたアイデアをもとに、思いついたことをそのまま即興的に形にしています。制作は上手くいかない日のほうが多いですね。そういう日は1人で叫んで泣いて、作業部屋で寝てしまう。すると夢の中で曲を作っていることがあって、起きてからそれを実際に形にすることもあるんです。そうして作った作品のほうが、意外と良い反応をもらえたりするんですよね。

―目を覚ましてからもはっきりと記憶しているのはすごいですね。ちなみにそうして完成した楽曲とは?

ヨンジ:『SHOW ME THE MONEY 11』で披露した「NOT SORRY (feat.pH-1)」です。大きなテーマは固まっていたけど、細部の表現がなかなかうまくいかなくて。3日くらい悩み続けて「ああ、自分には才能がないのかも……」と泣きながら寝てしまったら、夢の中で「ママ、私ヒップホップ辞めたい」という歌詞がパッと浮かんできたんです。目覚めてから、そのまま書き出しました。



―ヨンジさんは常に楽曲へ自分の物語を投影していますよね。特にリスナーからの反響が印象的だった楽曲はどれでしょうか。

ヨンジ:これは「Small girl (feat. D.O.)」ですね。それまでも楽曲の中に自分の思いを反映させてきたけど、表に出しすぎないようにしていて、大衆に合わせた形に整えていたんです。でも「Small girl」は私自身の恋愛経験──それもすごく落ち込んで、自尊心が一番低かった瞬間の気持ちを、“生”のままで形にした曲でした。3、40分くらいで一気に書き上げたんです。なので、あの曲を多くの方に好きになってもらえたことには正直驚きましたし、戸惑いすら感じました。

―「Small girl」は各チャートで1位を記録し、Billboard Global 200にもランクインするヒットとなりましたね。

ヨンジ:大衆って本当にわからないものだな、と感じました(笑)。でもおかげで、私の個人的な話が他の人に共感してもらえるということに気づけたし、「これからはもっとパーソナルなことを語ろう。無理に隠さなくてもいいんだ」と思えるようになって。そういう思いで今も創作しています。



―リスナーはヨンジさんの人間性に惹かれている方が多いと思うので、本音がにじむ曲が聴けるのはきっとうれしいと思います。ヨンジさんの音楽性や、スタイルに影響を与えたアーティストを挙げるとすると?

ヨンジ:たくさんいるので、絞るのは難しいですね。あまりにも強く影響を受けてコピーのようになってしまうのが怖いので、本当に憧れているアーティストの楽曲は、純粋に音楽として聴いて楽しむようにしています。音楽的にインスピレーションを受けているというよりは、むしろ彼らの生き方や、プロモーションの方法に刺激を受けることのほうが多いかもしれない。例えばビリー・アイリッシュやSZAなどのポップアーティストは特に、彼女たちの成功の裏側を覗き見たいと、読んでいた本やインタビュー記事などをチェックしています。最近はK-POPアイドルの方々のプロモーションにも魅了されることが多いですね。例えばJENNIEさん(BLACKPINK)は最近のコーチェラのステージも含め、本当にカッコよくて! どうしたらあんなふうに文化的なインパクトを生み出せるのかを考えさせられます。

―ヨンジさんはBSS(SEVENTEEN)や、 i-dleのソヨンさん、IVEのユジンさん、EXOのディオさんなど、さまざまなK-POPアーティストとコラボされていますよね。ヨンジさん自身もアイドルファンですが、彼らとのコミュニケーションを通じてどんな刺激を受けていますか。

ヨンジ:K-POPアーティストの皆さんとは授賞式やステージでお会いする機会が多いので、自然と親しみを持っていて。例えるならば学校のクラスメイトのような感覚ですね。音楽性はもちろん、その方の人間性に惹かれて、コラボしてみたいと思うこともあります。一緒に作業しながら「なぜこれほどまで大衆に響く存在でいられるのか」というヒントや、キャリアをどう持続させていくのかなどを、自然と吸収させてもらっている気がします。

Translated by Kim Dejong

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