グーグルマップで噓の口コミ、調査費多額で勝訴しても大赤字…ネット中傷裁判の構造的問題
インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷被害が認定されても、賠償額より必要経費の方が高くつく-。名誉毀損(きそん)を訴える訴訟で、こんな判決が出されるケースが少なくない。大阪府内の歯科医師親子が起こした訴訟で、大阪地裁が認めた賠償額は26万4千円。投稿者を特定するだけでその2倍以上の費用を要し、大きな〝赤字〟となった。ネット中傷が社会問題化する中、当事者は「裁判所が変わらなければ泣き寝入りが増える」と、賠償額の認定における裁判所の姿勢に危機感を抱く。 【画像】グーグルマップ、川口市役所を「クルド市役所」と表示 ■投稿者特定に50万円以上 《審美や矯正、インプラント、セラミック、口腔(こうくう)外科の知識は20年以上前のもの。(だから)予約が取りやすい》 歯科医師は令和5年5月、グーグルマップ上の自らの歯科医院の口コミに、こんな匿名の投稿がなされているのに気がついた。口コミは歯科医師の態度についても、「開口一番『こんちわ!どしたん?』となれなれしい」「マシンガンのような一方的なおしゃべりだけで10分以上。正直苦痛」と言及していた。 医療機関を探すとき、グーグルマップとその口コミを参考にすることは一般的に行われている。「口コミの内容は噓。放置できない」。事態を重く見た院長ら親子は弁護士に依頼し、プロバイダーに仮処分を申し立てるなど、投稿者を特定する裁判手続きを行うことにした。 特定された投稿者は、同年5月に歯の詰め物が取れたとして治療を受けていた女性だった。開示手続きの動きを知った女性は11月に口コミを削除し、歯科医院にも謝罪に訪れた。ただ投稿者の特定までに弁護士に支払った費用など55万円の調査費用がかかっており、2人は女性に対し、慰謝料を含め計330万円の損害賠償を求めて提訴した。 ■違法投稿認定も「影響は限定的」 口コミ投稿から2年近くをかけてやっとたどり着いた今年1月の地裁判決。判決は「知識は20年以上前のもの」という記載について「(歯科医師らの)社会的評価を低下させる」と判断。さらにその内容自体も真実とはいえないとして、違法な投稿と認めた。 ただ口コミが直ちに信用できる性質の情報ではないことは常識で、その悪影響は「限定的」だとして、認定された慰謝料は2人合わせて計20万円にとどまった。さらに調査費用について、不法行為と関係があるのは「慰謝料の2割分」という基準を示し、計4万円しか認めなかった。