329日目 通常業務(ちゃっぴぃ宴会芸)
329日目
目のかすみが取れない。なんかボヤけて見える。今日はさっさと上がらせてもらおう。
いつも通り、身支度を整え食堂へ。なぜかすでにある程度掃除がなされており、軽く仕上げ掃除すればいいかな……程度の状態になっていた。不思議なこともあるものである。
で、マデラさんのいる厨房へ。なんでかしらんけど、すでに大量の野菜の皮むきが終えてある。そりゃあ、俺に比べていくらか不揃いで微妙に剥き残しがあったけど、使えないってわけじゃない。
どういうことかとマデラさんに聞いたら、『ちょっとは教育した効果があったみたいだね』って意味深に笑っていた。あの荒くれども、朝早く……それこそマデラさんが起きるのと同じタイミングでやってきて、自主的に食堂の掃除を行い、少しでも手伝わせてくださいと頭を下げ、その後は黙って宿を後にしたそうな。
そんなわけで、今日は皮むきはやらなくていいかんじだった。風呂掃除はいつも通り行い、洗濯物もさっさと仕上げる。で、食堂の仕上げ掃除だけ俺が担当した。
もちろん、毒入りジュースは俺が作る。今日はちょっと揮発性の高い毒も使用し、香りだけでもヤバい仕上がりにしてみた。が、ナターシャ曰く『意外とリンゴとあう』とのこと。やっぱあいつの舌は狂っていると思う。
全体としてみれば仕事量は少な目で、特にトラブルもないのに、なぜか体が重くて軽くめまいみたいなものに襲われる。疲れを残したまま仕事をするとか、宿屋としてあるまじき失態だ。
大きな仕事を終えた後は宿帳の確認と受付の仕事を行う。途中、何かを書いていたんだけど、やたらと手が震えて文字がすごく波打ってしまった。この日記も結構ぐちゃぐちゃな字だけど、あまり気にしないでほしい。
そうそう、午後のおやつよりもちょっと早いくらいの時間に発注しておいた野菜類が届く。いつも通り中へ運ぼうとしたんだけど、手が滑って玉ねぎをぶちまけてしまった。幸いにしてリアとちゃっぴぃが拾ってくれたため、大事には至らなかったけど、なんか今日は運が悪い。
『お兄ちゃん、疲れているの?』、『きゅう?』って二人とも心配してくれたけど、まさか子供に心配されるほど情けない姿を晒してしまうとは。学校生活と長い休みで体が鈍っているのだろう。がんばらないと。
おまけに、たかだか三日分の野菜を運んだだけだってのに、妙に息切れが激しく、動悸もすさまじかった。なんか泣けてくる。
どうにも調子が悪いけど、午後もしっかり働く。夜の宴会の時、ナターシャに酌をしていたら『お? なんか震えてるぞ~? おまえも酔ってんのか~?』って絡まれた。たぶん、俺が震えてるんじゃなくてあいつが酔っているだけだと思う。
あと、ミニリカに歌を披露しろと言われたけど、今日は調子が悪いからちゃっぴぃに任せておいた。エッグ婦人とヒナたちもバッグダンサーとしてケツフリフリを披露する。『なんとも可愛らしいのう!』ってミニリカも満足していた。
ただ、俺の時よりおひねりが多かったのが気にかかる。歌声的にも体のキレ的にも俺のほうが圧倒的にうえなのに。ルフ老に至っては『うっひょう! 長生きはするもんじゃのう!』って今日の稼ぎの全部をちゃっぴぃに渡していた。
あまりにも太っ腹なので、しょうがないから頭だけは撫でさせてやった。ちゃっぴぃじゃなくて俺のだけど。
なんかグダグダしているけどここまでにしておこう。目はかすむし手は震えるしで俺のビューティフルな字が悲惨なことになっている。昔はどれだけ働いてもこんなことにはならなかったのに。本当に情けなくて悲しくなってきた。みすやお。