表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
317/368

315日目 リアの仕事の監察

315日目


 いつのまにやらリアが潜り込んでいるんだけど。こいつ、なんでマスターキーもってんの?


 ちゃっぴぃをおんぶし、リアをお姫様抱っこして食堂へ。まさか朝からガキ二人の面倒を見ることになるとは思ってもいなかったけど、悲しいかな、ギルの面倒を見るよりはるかに精神的にも肉体的にも楽だということに気づいてしまう。


 で、朝食であるハムエッグ(なぜか心なし白身多め。ちゃっぴぃに食わせようとしたら厨房から殺気を感じた)を食しながら『なんで鍵持ってるんだ?』とストレートに聞いてみる。リアのやつ、『そんなの、マデラさんからもらったからに決まっているじゃん!』って超いい笑顔で言い切った。


 何とも恐ろしいことに、あのハナタレ泣き虫おねしょ娘のリアが、今や少しとはいえここでマデラさんのお手伝いをしているらしい。『お兄ちゃんは私くらいのころにはギャン泣きしたり漏らしながらいっぱしに見習いとして働いていたってパパとママが言ってた』ってリアは言ってた。


 アレットとアレクシスには後で適当に呪でもかけておこう。あと、食堂の隅で肩を震わせて笑っていたルフ老にはガチハゲの呪をかけた……けど、ルフ老はすでにハゲていた。絶望。


 さて、話は戻すけど、リアはベッドメイキングや寝坊助起こし係の仕事をこなすためにマデラさんからマスターキーをもらったそうな。『子供にそんなものを持たせていいんですか?』ってマデラさんに聞いたら、『これくらいの年の頃、アンタはすでにもっといろいろやっていただろ?』と返される。そういわれてみりゃそうかもしれない。


 割と暇だったこともあり、せっかくなので今日はリアの仕事ぶりを確認してみることにする。とりあえず俺の部屋のベッドメイキングをさせたところ、なかなかに悪くない出来。俺のベッドに潜り込むという、超個人的なことにマスターキーを使ったけれども、それを託される程度の腕前はあるようだ。


 『いっぱい、いーっぱい練習したんだから!』ってない胸を張っていたのが印象的。ちゃっぴぃが真似して『きゅーっ!』って胸を張ると、余計にその貧相な胸が目立つ。夢魔と比べるというのも酷な話だけど、アレットを見る限り、リアに将来性はほとんどない。


 とりあえず、『好き嫌いするな。あとミルクをたくさん飲んで早寝早起きをしろ。十年たったら考えなくもない』って言っておいた。なんかスネをおもっくそ蹴られたけど、なんでだろうね?


 なお、『いっぱい練習って、どれだけやったんだ?』と聞いたところ、『パパとママが使っているベッド、たまにすっごくぐちゃぐちゃになってるからすぐに慣れたよ!』ってリアは超いい笑顔で言い切った。


 ちょっとガチでこの件はマデラさんに報告しておこう。いくら俺でも最低限の常識くらいはわかる。リアにはこのまま純粋に育ってもらいたいものだ。


 その後は未だに眠りこけているナターシャの部屋へ。あの野郎、相変わらず洗濯物を畳んでいないし、下着なんかも脱ぎっぱなしでその辺に放置されている。こいつ、女としてのプライドはないのだろうか?


 つーか、そもそも洗濯物って俺たちが畳んで届けているよな? なんで干したてフワフワのはずのそれが散乱してんの?


 さて、リアはとことことナターシャに近づき、『もう朝だよー?』とナターシャを揺さぶる。が、ヨダレ臭い痴女染みたナターシャは小さくイビキをかきながら寝返りを打つだけ。そして相変わらずこいつは下着で寝る派だった。


 『マデラさんに怒られるよー?』と言う声には少しだけ反応したものの、ナターシャは一向に起きる気配を見せない。リア曰く、未だに起こせる確率は十回に一回とのこと。まあ、こんなヨダレ臭い部屋に起こしに来てあげるだけ、リアは優しいと思う。


 一応念のため、ちゃっぴぃを憑りつかせてみたけれど、魔法耐性が凄まじく『きゅ、きゅぅぅう……!』ってちゃっぴぃが気張ってもダメだった。


 そんなわけで、『手本を見せてやろう』と俺が起こすことに。やった事と言えば問答無用で枕をひっこぬき、鼻と口をばっちぃけれど押さえておくだけ。手のひらがヨダレまみれになる(たまに舐められる)頃には『ほにょぉあっ!?』ってあいつは起きだした。


 『殺す気かバカ弟ぉ!?』って毎回ヘッドロックを決めてくるけど、そうでもしないと起きないあいつが悪くね?


 なお、リアは『ちょっとおねーちゃんのヨダレはノーセンキューかな』って枕カバーには触れようともしなかった。聞いた通り、起こすのとベッドメイキングだけを担当しているらしい。


 それ以外のリアの働きっぷりはいたって普通。既定の時刻になっても起きてこない冒険者の部屋に行き、時に優しく、時に足蹴にして起こしていく。『一応は客なのに足蹴にしていいのか?』って聞いたら、『そうでもしないとバカは起きない。それに昼には起きてなきゃいけないルールがある。ルールを守らないのは客じゃないってマデラさんが言ってた』って言ってた。


 言われてみれば、俺もおっさんとかテッドとかは足蹴にしていた気がする。さすがにババアロリとかアバズレヨダレ女は足蹴にしなかったけど。


 午前中でリアの仕事は終わったため、午後は普通にひなたぼっことかお散歩をして過ごす。リアは後ろからケツフリフリしてついてくるヒナたちがたいそう気に入ったようで、『一匹くらいうちの子にしてもいいかなぁっ!?』って目を輝かせていた。


 『学校が始まるまでならいいぞ』って言ったけど、直後に『チキン……卵……!』って呟いていたのがちょう怖い。いったい誰に似たのか。


 夕飯食って風呂入って今に至る。寝る直前、最後のトイレに行こうとしたときに顔面泥パック状態のミニリカに遭遇して腰を抜かしそうになった。マジ怖い。


 『そ、そんな驚くことなかろうっ!?』って言ってたけど、あんなのギルだってビビる。あいつのアンチエイジングにかける情熱が本当に理解できない。ババアロリなんだから大人しく年を取ればいいのに。


 ミニリカの顔面泥パックを見てしまったちゃっぴぃとリアはぴすぴす泣いて俺のベッドに潜り込んでいる。よく見るとちょっと震えているのが面白い。そういや、昔俺も同じようにナターシャのベッドにもぐりこんだっけ。酒臭くてすぐに後悔したけど。


 本格的にちゃっぴぃ用のベッド……というか自分の寝床を確保したい今日この頃。匠ジオルドの腕が懐かしい。グッナイ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。