表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
314/368

312日目 不機嫌ナターシャ

312日目


 朝起きて窓を開けたら表にズタボロのヴァルヴァレッドのおっさんが倒れていた。また浮気したんだろう。やっぱりおっさんはクズだ。


 ちゃっぴぃとリアを担いで食堂へ。何が楽しいのか、二人はきゃっきゃと俺の肩の上で笑う。こういうのは父親であるアレクシスの役割だと思うのに、どうやらあいつはアレットと共に三日くらい冒険に出かけてしまったらしい。冒険者ガチでクズじゃね?


 で、食堂に到着したところ、ナターシャがヤバそげな魔素を纏ってカフェオレをがぶ飲みしていた。見るからに機嫌が悪い。テッドが『お前何とかしろよ! ウィンナーやるから!』と言ってきた。まったく、安く見られたものだ。


 ちなみに、マデラさんは静観することを決めたらしい。『いきなり酒を飲みだそうとしたから、そこだけはぶん殴った』とのこと。よくみれば、ナターシャのほっぺがちょっと腫れていた。


 しかしまあ、せっかくの休日だというのに、不機嫌なやつが一人いるとああも息苦しくなるとは。回復したおっさんが宿に入ってきたときなんて、ナターシャから溢れ出る魔力にちゃっぴぃとリアがちびったくらい。


 『手間かけさせやがって』って処理していたら、『いや、アンタはもっとしょっちゅう漏らしていただろうが』ってマデラさんに言われた。解せぬ。


 で、ナターシャをどっか適当な冒険者に外に連れ出してもらおうと思ったけど、ミニリカもテッドもいつの間にかいない。チットゥもルフ老も姿が見えない。そしてマデラさんは仕事で忙しい。


 あいつらみんな逃げやがった。今この場に頼れるのが俺一人しかいない。ちゃっぴぃとリアは俺の背中に隠れやがった。しかも、いつでも俺を生贄に出せるようスタンバイも完璧。こいつらマジ怖い。


 午後、謝りに来たヴァルのおっさんが再びボコられる。非常に精巧な裂造魔法陣で、魔塵も見惚れるほどだったといえば、魔系の奴ならどれだけの規模の魔法だったかわかってくれるはずだ。


 とはいえ、さすがにこのままだと宿の評判そのものにも関わりかねないので、優しい俺はナターシャの機嫌を取ることにした。


 とりあえず、ありあわせの材料でクッキーを作って貢いだら、『あんただけはお姉ちゃんを裏切らないでね』っておもっくそ抱き締められた。『嫌なら別れちまえ。別れられないってことは、まだ未練があるんだろ?』と諭す。


 おっさんはガチクズだけど、なんだかんだで二人の仲がいいのも事実。つーか俺、毎回似たようなことを二人に言っている気がする。


 なお、ナターシャの愚痴に付き合っている間にクッキーはリアとちゃっぴぃが喰いつくしてしまった。あいつらどんだけ手が早いのか。


 結局、おっさんはその後三度ほどボコられようやく許してもらうことに成功する。『今回ばかりは死ぬかと思った……』って言ってたけど、あれだけ喰らってまた喋れることのほうが俺には驚きだ。


 あと、しょうがないので夕飯の時は業務外だけどナターシャにお酌をしてやった。『お前はおんにゃを泣かすおとこにはにゃんなよぉ~!』ってナターシャに酒臭い息を吹き付けられる。


 見た目だけはすごくいいのに、どうしてこうも残念なのか。あいつからヨダレとアバズレとクレイジーと性格の悪さを取って……って書いてて思ったけど、あいつの悪いところを全部取ったら胸しか残らない。泣けてくる。


 今日も一日ゆっくりしていたため、書くことはこれくらいしかない。自己満足の日記だし、こんなもんで十分だろう。安眠できることのなんと素晴らしいことか。おやすみずがし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。