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311日目 戯れババアロリ

311日目


 ちゃっぴぃの足が俺の顔面に。こいつの寝相はどうなってるんだ?


 ちゃっぴぃを肩車して食堂へ。遅すぎず早すぎないいい感じの時間だったけど、今日はあいにくの雨のため、人は少ない。たぶん、やる気が起きずに寝こけているのが多いのだろう。冒険者って基本クズだよね。


 が、ちゃんといつも通りの時間に起きて飯を食っているやつもいる。老害らしく無駄に早起きなミニリカだ。ちゃっぴぃを肩車する俺を見て、『なんか……感慨深いのぅ……すっかりお父さんになってしまって……』って呟いていた。


 せっかくなのでミニリカと一緒に朝食をとる。ミニリカのやつ、ちゃっぴぃに構いたくてしょうがないのか、『ほれ、あーん』ってちゃっぴぃを餌付けしていた。


 そのくせ、俺には『オレンジの皮を剥いてほしいのう』とか言ってくる始末。ホント、これだから老害は困る。


 で、することもなかったのでそのままミニリカとおしゃべりする。なんかよくわからんけど、やたらミニリカが俺と話したかったらしく、妙にモジモジしてたんだよね。恥ずかしがるような年でもないくせに。


 『贈った舞踊衣装は気に入ってくれたかえ?』と、こっちの苦労も知らずに聞いてきたので、『ウチのワガママお姫様の機嫌を戻すのに一週間かかった』とありのままを伝えた。『それはすまんかったのう』とミニリカはぎゅっとちゃっぴぃを抱きしめる。


 『きゅ?』とちゃっぴぃは不思議そうな顔をしていた。もしこいつが例の事件の元凶だと知ったのなら、いったいどういう行動をとったのだろうか。


 で、せっかくなのでちゃっぴぃに舞踊衣装を装備させてミニリカに見せてみる。『ふむ……悪くはない』とそれなりの評価。完全再現って言うにはまだ粗が目立つけど、少なくとも失伝はしない程度の腕前はあるらしい。


 『詫びと言ってはなんじゃが、秘伝の踊りを教えて進ぜよう』とミニリカはちゃっぴぃに微笑みかける。ちゃっぴぃ、わけもわからず『きゅーっ♪』っていい笑顔でうなずいた。


 俺は知っている。秘伝の魔法の伝授と言えば聞こえはいいが、実態はクレイジーマゾ仕様の難易度鬼畜魔法の布教である。こいつの顔に騙されて承諾し、泣いた人間は数知れない。このババアロリ基本的にスパルタだし。


 が、なぜか今回はそんなでもなかった。『まずは髪を編み込むところからかの』と、ミニリカはちゃっぴぃを膝にのせて伝統的な編み込みを施していく。しかも、なぜか『私にもやってほしいのう』と自ら髪留めを取り、俺に編み込みを要求してくる始末。


 正直面倒くさい。やる気はなかった。が、『お願い……の?』と上目遣いをされると困る。老い先短いババアロリなのだ、これくらいなら聞いてやらなくもないこともない。


 なにより、仕事をしていたマデラさんが『ミニリカはずっとアンタと話したがってたんだ。中身だけババ臭くなったくせに未だに甘え方一つ知りゃしない。察してやんな』と言われては、やらざるを得ない。


 ミニリカのやつ、なぜか真っ赤になって『そそそ、そんなことないわいっ!』ってムキになっていた。前からちょっと思ってたけど、あいつここだとすごく構ってちゃんになるよね。


 で、ちゃっぴぃの髪を編むミニリカ、ミニリカの髪を編む俺という謎の図式が完成する。『やはり女子の髪を編むのはいいのう……!』ってミニリカはうっとりしていた。俺はこいつのせいで女の子になるところだったのを絶対に忘れない。


 セットが終わった後は早速踊りにかかる。『きゅ♪ きゅ♪』、『そうじゃ、その調子じゃ!』とそれなりに楽しそうな時間を過ごしていた。ちゃっぴぃの踊りは結構でたらめだったけど、雨の音をバッグミュージックにノリノリで踊っていた。


 なお、一番すごかったのはバックダンサーであるヒナたちのケツのキレだったことをここに記しておく。


 午後もそんな感じでゆったり過ごす。途中、暇を持て余したリアが『あたしも混ぜて!』と言ってきたので入れてやった。ケツフリフリのキレはイマイチ。寸胴体型だからしょうがないとはいえ、もうちょっと頑張ってほしいものだ。


 途中ミニリカと(鍛錬と言う名目で)二人型も踊る。汗をたっぷりかいたところでマデラさんが『客が来ないうちに風呂に入っちまいな』と言うのでちゃっぴぃ、リア、エッグ婦人、ヒナたちを風呂に入れることに。


 リアが『今日は久しぶりにお兄ちゃんと入る!』って言ったところまでは良かったんだけど、なぜかミニリカが『え……こっち一人?』と絶望の表情。


 リアやちゃっぴぃやエッグ婦人が男湯に入るのは問題ないけど、俺が女湯に入るのは大問題だ。なぜそれがわからぬのか。


 一応、従業員(俺とマデラさん)用の風呂があるけど、アレはお客さんには使わせちゃいけないことになっている。『む、昔はよく背中を流してくれたじゃろ!?』ってミニリカは喚いていたけど、いったい何年前の話をしているのか。


 しょうがないので、ちゃっぴぃだけミニリカに預けて風呂に入った。あと、リアもギルと同じく耳の後ろが全然洗えていなかったのでごしごししておいた。頭からお湯をぶっかけるとき思いっきり泣かれたけど、人はこうして大人になるのだからしょうがない。


 俺の時は、ナターシャに魔法でお湯をぶっかけられたのだ。それに比べてなんと良心的な事か。


 夕飯食って今に至る。夕飯中、ちゃっぴぃがテッドが喰っていた骨付き肉をちょろまかしてマデラさんに貢いでいた。あいつもこの宿屋の序列というものを理解しているらしい。ほめてあげたくなった。もちろん、ナターシャはゲラゲラ笑っていた。


 ちょっとまとまりがないがここまでにしておこう。学校にいたときは半ばパターン化していただけに、いくらかの違和感を覚えるけど、逆に新鮮でもある。今日の内容がほぼミニリカと言うババアロリだけなのが気にかかるけど、実家でゆっくりしているだけってのを考えれば、この文章量もなかなかのものがあるのではなかろうか?


 なぜか今日はリアとちゃっぴぃで俺のベッドを占拠している。こいつらいつの間に仲良くなったのだろう。というか、リアはアレットたちのところへ行かなくていいのだろうか。昔はアレットたちがいないとぴすぴす泣いていたのに。コレが成長か。


 しょうがないのでイスをベッド横にくっつけ……るのは無理そうだから、ちゃっぴぃを腹に抱いて寝ることにする。グッナイ。

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