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310日目 元祖ケツビンタ

310日目


 これから起こるであろう惨劇に恐怖を隠せない。果たして俺は生きて夜の日記を書けるのだろうか?


 ねぼけまなこのちゃっぴぃをおんぶして食堂へ。すでにヒナたちは目覚めており、冒険者が喰い散らかした机の上の食べかすを突いていた。『そんなもの食べるとおなか壊しちゃうよ!』ってリアが別にご飯をやっていたけど、ヒナたちは日ごろからギル要素を取り込んでいるから特に問題はない。


 朝食は軽めに済ませる。いや、がっつり食べようとも思ったんだけど、飯を受け取るときに『そんなに食って……大丈夫なのかい?』ってマデラさんに慈愛の笑みを浮かべられたからだ。


 もちろん、ちゃっぴぃには普通に食わせた。いまだ俺の膝の上が定位置だけど、最近はちょっとだけお行儀良くなってきているのが幸い。いや、マデラさんの存在を本能的に理解しているからだろうか?


 で、朝食後にマデラさんがやってくる。『なんで、かはわかるね?』と正面からにらまれる。『別に、セクハラだけが理由じゃあないんだよ?』と、手のひらに魔喰の触種を再現された。


 やべえって思った。マデラさんのところからあれをちょろまかしたの、すっかり忘れていた。


 『覚悟はいいか?』って言葉が耳に届いた瞬間、ケツに尋常じゃない痛みが。スパァン! って、非常に大きな音が宿全体に響く。


 まぎれもなく、本家本元元祖ケツビンタ。一年間クラスメイトのケツビンタで鍛えられたというのに、そんなの意味がないレベルで痛い。不覚にも悲鳴が漏れ、ついでに膝をついてしまった。


 しかも、『当然、一発で済むはずが無かろう?』ってマデラさんは痛みに悶える俺をがしって持ち上げる。で、その体勢のまま自分はお気にの椅子──別名、拷問イスに座った。自らの膝の上に、俺をうつぶせになるように乗せる。


 『──尻を出せ』って声が聞こえたとき、一瞬で血の気が引いたね。


 まさかそんな、そんな酷いことを……って思ったときにはもう遅い。俺のズボンはずりおろされた。


 まぎれもないお仕置きスタイルケツビンタ。まさかこの年でそれをされることになるとは夢にも思わなかった。


 『──歯ァ、食いしばれ』って言葉の直後、マデラさんの大きな手による直ケツビンタが俺を襲う。先ほどとは比較にならない痛み。インパクトの瞬間もそうだけど、痛みそのものがジンジンと後に残ってたいそうツライ。


 いや、久しぶりに喰らったけど、全然衰えていなかったね。もちろん俺も、物理的にも魔法的にも抵抗を試みたんだけど、ケツの周りに展開した魔導障壁をマデラさんは普通にぶち破ってケツビンタしてくるんだもん。


 全力でじたばたしても片腕で抑えられるしさぁ……。もうどうすりゃよかったのか。


 ちなみに、俺がケツビンタされる様子を、ちゃっぴぃとリアはガタガタ震えながら見ていた。二人して抱き合い、足がすくんで動けない様子。なお、ケツビンタの音で起きてきたナターシャは俺の様子を見て『この年でお仕置きケツビンタされてるとか……!』って腹を抱えてゲラゲラ笑っていた。


 しかしまあ、本当に叩かれまくった。いったい何発叩かれたのか、正直覚えていない。一撃一撃に必殺の意志が込められていて、鍛え抜かれた俺でなければ、今頃この世に存在していなかっただろう。


 結局、それなりに長い時間が経った後にケツビンタは終了。俺のケツはまっかっか。ちょうヒリヒリ。出血していないのが奇跡的なレベル。


 『頼むから、もう二度とこんな真似はさせないでおくれ』ってマデラさんは疲れた顔でつぶやいていた。むしろ俺のほうがそう言いたい。だいたい、俺そんなセクハラなんてしたっけ?


 未だにケツが痛い。夕飯の時はテッドとおっさんにからかわれまくった。チットゥも『ぜひともその場にいたかった』と悔やみだす始末。マジあいつらなんなの?


 風呂の時もひどかったね、俺のプリティなケツが真っ赤に腫れているんだもの。しかも微妙にサイズアップしている疑惑。やっぱ本家ケツビンタは別格だわ。


 ケツビンタのことしか書いていないけど、今日はこのへんにしておく。正直椅子に座っているのもつらい。


 ちゃっぴぃは俺の夢魔のぬいぐるみと自分のぬいぐるみに埋もれて俺のベッドを占拠している。ヨダレ臭くなってきたから二体ともそろそろ洗濯しないと。おやすみ。

20160310 誤字修正

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