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304日目 旅立ちの朝

304日目


 実にすっきりで快適な目覚め。快眠ってレベルじゃない。どういうことなの?


 清々しい気分でギルを起こし食堂へ。あんまり時間がないから、みんな手軽にサンドイッチを食べていた。『また今度な!』、『来年度もよろしくね!』、『挨拶くらいはしといてやるよ』ってティキータ・ティキータのゼクト、バルトラムイスのシャンテちゃん、アエルノチュッチュのラフォイドルと最後の挨拶を交わす。


 ギルはもちろん『うめえうめえ!』って食べ納めのジャガイモを喰っていた。ふと思ったけど、あいつって実家でもこんなに食べているのだろうか?


 で、朝食を済ませた後はみんな身支度を整え、トランクをもって校門のところに集う。余所行き……っていうか旅装のみんなの姿もなかなか新鮮。特にロザリィちゃんはめっちゃかわいかった。


 さて、当然のことながらステラ先生がお見送りに来たんだけど、『げ、元気に過ごすんだよぉ……っ!』ってずっとポロポロ泣いていた。


 どうやら俺たちと別れるのがとても寂しいらしい。女神過ぎて気絶しそう。生徒のことをここまで思ってくれるとか、俺は先生以上に先生らしい人を知らない。


 んで、『うわぁぁぁん!』って泣き出したので、みんなで必死にステラ先生をなだめる。上目づかいでポロポロ涙を流す姿が本当にかわいい。ついいじめたくなっちゃうレベル。


 『おねがい、最後にちょっとだけ……!』ってステラ先生。どうしたのかと思いきや、クラスメイトの一人一人をぎゅっ! って抱きしめてくれた。柔らかくて、あったかくて、いい匂いがして、本当に気持ちが良かった。


 俺、ステラ先生のクラスで良かったと心の底から思ったよ。一生ついていきたい。


 ちなみに、クーラスとジオルドは顔を真っ赤にしていた。パレッタちゃんはむしろ積極的に抱きしめ返していた。あいつらもパレッタちゃんくらいの男気を見せてほしいものだ。


 そうそう、『しばらくお別れだね……!』ってロザリィちゃんも熱い抱擁を求めてきたので心を込めて抱き締めた。『……ね?』って上目づかいでおねだりをしてきたため、熱いベーゼも交わす。


 めっちゃぷるぷる。いいにおい。あとちょっとだけオトナのキスも混じっていた。情熱的すぎて、これ以上うまく表現する言葉が見つからない。


 さて、ここまでならいつも通り(?)なんだけど、なんと、『……やるなら今か』ってアルテアちゃんがおもむろにフィルラドの顔面を鷲掴みにし、『気をつけてな……良い旅を』って──


 ──ちゅって、あいつにキスをした。しかも、くちびる。


 まさかの行動に一同盛り上がりを隠せない。『……っ!?』ってフィルラドは真っ赤になってぷるぷる震える。アルテアちゃん自身も今まで見たことないくらいに真っ赤で、『ぶ、無事に帰るためのおまじないみたいなもんだっ!』って言い繕っていた。


 いや、まさかこのタイミングで来るとは思わなかったよ。ロザリィちゃんもアルテアちゃんを見てニヤニヤしていたし。


 ミーシャちゃんも、『じゃあ、あたしもするの!』ってギルのくちびるを奪いに行く。ギルのやつ、『うぉあああ!?』ってめっちゃ驚いていた。思い返せば、ギルに意識がある状態でのキスってこれが初めてだったと思う。


 色気もロマンスもへったくれもないキスだったけど(本人たちの体格差が大きいため)、まあ幸せそうだったからいいだろう。


 あと、無駄にたくましい筋肉を持っているというのに、ギルは腰を抜かしてミーシャちゃんに押し倒される形になっていた。案外あいつってウブだよね。


 もっと面白いことに、俺の隣で『えっ、なに? あんたもああいうのしたいの?』、『べ、別にそんなんじゃねーし!』、『やりたくないって言われるとやりたくなっちゃうよね……読むしかない、この偉大なる空気を』って──


 ──パレッタちゃんがポポルにぶちゅぅぅぅ! ってやってた。ポポルのやつ、『ふぎゃあああ!?』って悲鳴を上げていた。


 なんてコメントするべきかわからないから、ありのまま事実だけを書いておく。『ごちそうさま♪』ってパレッタちゃんは微笑んでいたけど、本気なのかふざけているのかよくわからない。ポポルはノーマルに真っ赤になっていた。


 さらに、空気を読むのは魔系女子の良いところなのか、『あら、じゃあ私たちもサービスしようかしら?』、『なんだかんだでお世話になったものね……それに毎回いじけているみたいだし?』ってジオルドやクーラスも女子にキス(ほっぺ)されていた。


 あいつら、『もう心残りはない……!』、『一年頑張った甲斐があった……!』って泣いていたよ。どうしてそれ以上を求めないのか。そこで止まってしまうからそれまでどまりだというのに。


 女子たちもわかっていてからかっている節があるから、しばらくはこの状態が続くのだろう。あいつらが気づくのはいつになることやら。気づけば彼女の一人や二人すぐにできると思うけど。


 まあ、気づいたら気付いたであいつららしくないとも思う。いずれなるようになるか。


 さてさて、せっかくなので『ステラ先生もほっぺにキスしてみませんか? 無事に帰るためのおまじないとして』と誘ってみる。『せ、先生みたいなおばさんにやられてもうれしくないでしょ?』ってまたも悲しいことを言われたので、『先生にキスしてほしい人手ぇあげろ!』って言ったらルマルマの全員が手を挙げた。


 ちゃっかりティキータのゼクトも手を挙げていたけど、ライラちゃんに全力でビンタされていた。


 そんなわけで、最後の最後のお見送りの際、ステラ先生が一人一人に『げ、元気でね!』ってほっぺにキスしてくれた。もう本当に幸せすぎて夢の中かと思ったよ。


 ちなみに、ティキータの担任であるシューン先生も『じゃあ、先生もキスしちゃおっかな!』って言ってゼクトたちに思いっきり拒否られていた。かまってちゃんもここまで来ると清々しい。


 最後にもう一度だけロザリィちゃんを抱きしめ、ちゃっぴぃが赤面するほどのキスを交わしてから学校を後にする。ステラ先生がずっと最後まで、見えなくなるまで手をぶんぶんと振っていたのが印象的。あの人マジで女神だと思う。


 その後は町で乗り合い馬車に乗り、現在に至る。ちゃっぴぃとエッグ婦人、ヒナたちが俺の腹の上でスヤスヤ寝ているのはいいんだけど、狭い馬車の中だからたいそう窮屈だ。御者の影の薄いだいぶ後退したおっさんいわく、町には補給のためしかよらないらしいから、宿につくまではこの状態が続くのだろう。


 日記も酷く書きづらくて困る。魔法で明かりをつけたとはいえ、平らな場所がないから俺のビューティフルな字もぐちゃぐちゃだ。印象的すぎるイベントがなければ適当に書いて終わらせていたことだろう。


 明日以降、きれいなおねーさんが乗り合わせてくれることを強く願う。グッナイ。


 ……って思ったけど最後に一つだけ。




 鉱石の採掘行ってなくね?

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