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287日目 魔法造成実習:雪原における自然物を用いた集団戦闘の演習

287日目


 ギルの鼻息がめっちゃ冷たい。もうやだ。


 ギルを起こして食堂へ。やつの鼻息の威力はすさまじく、なぜか暖炉の近くなのにルマルマのところだけ凄まじく冷え込んでいた。いつもどおりうっかり背中に上ってしまったポポルとミーシャちゃんは歯をガチガチ言わせていた。


 朝食は大きなミートパイをチョイス。朝からけっこうがっつり行ったけど、それが気にならないくらいにデリシャス。隠し味にスパイスでも入れているのか、ちょっと辛めで後を引くおいしさ。おまけにおなかの底からぽかぽかしてきた。こいつぁすばらしい。


 もちろん、ちゃっぴぃにもちゃんと切り分けて『あーん♪』してやった。『きゅーっ♪』とあいつも実にうれしそう。あと、『私にはやってくれないの……?』って目をうるうるさせるロザリィちゃんがマジプリティでした。『わんわんっ♪』って食べる姿も最高にかわいかったです。


 ギルはやっぱりジャガイモを『うめえうめえ!』って貪っていた。喰う度に興奮して鼻息が激しくなるんだけど、その凍える鼻息のせいでジャガイモが半分凍ってしまっていた。もちろん、あいつはそんなの気にせず喰い続けていたけど。


 今日は聖母ステラ先生の魔法造成実習……と言う名の対人戦闘訓練……のはずなんだけど、『なにしよっかなぁ……』って先生はぼーっとしながら杖をコンコンしつつ出欠を取っていた。そんな姿も女神キュートで俺のピュアハートがまたしても撃ち抜かれる。


 どうやら、今まで一度も大きな事故がなく進んできたため、やることが一通り終わってしまったらしい。『一年生でも、例年なら二、三回は大きな怪我で授業が潰れることがあるからねー』ってステラ先生が言ってた。


 どうしたものかと思っていたら、『……じゃあ、雪合戦やっちゃおっか?』ってステラ先生がとても素敵な笑顔を浮かべてくれる。もうね、マジで一生ついていこうって思ったね。


 そんなわけで、一応は授業をやっているという態で、みんなで雪合戦をした。こないだぶりの決戦に滾る血を隠せない。男子も女子もやる気満々。『こうやって大勢で雪合戦するの、初めて!』って一番ステラ先生がやる気満々だった。俺たちが泣きそうになったのは言うまでもない。


 早速開幕。いきなり『おらおらおらおらぁっ!』とポポルの連射魔法が火を噴く。もはや雪崩に近いレベルの雪玉の弾幕が張られるも、『数だけならば射貫けぬことはないッ!』とアルテアちゃんがこれを射撃魔法で阻止する。


 『これを見ても同じことが言えるかな?』とフィルラドが召喚魔法でスノウシューターを召喚。大小さまざま、中には変化球さえ混じって雪玉が女子たちに向かっていく。しかし、『他愛もないの』と変化魔法で体を炎にしたミーシャちゃんが燃えるリボンと一体化してこれを防ぐ。


 『今度はこっちの番。永遠とわの氷の口づけあげる』とパレッタちゃんがヴィヴィディナと氷獄呪を使ってステキに禍々しい超巨大雪玉を発射。『デカいだけならどうとでもなる』、『割ってくれと言ってるようなものだ』とクーラスが罠魔法で動きを止め、ジオルドが覇王の拳を具現化魔法で具現化し、雪玉を粉砕した。


 俺とロザリィちゃん? 『えーい!』、『こぉら、やったなぁー!?』ってすっごく平和的にイチャイチャしながら雪合戦してたよ。もうね、愛のあるロザリィちゃんの雪玉を避けるとかマジ考えられないよね。それに、お願いポーズされたら動けなくなっちゃうし?


 さて、そんな感じで雪合戦を楽しんでいたんだけど、『今度は先生の番ね!』とステラ先生が本気で杖を構えだした。みんな、なんだかんだで先生らしい可愛らしい雪玉を投げてくるのかな……なんて思っていたら、パレッタちゃんが作ったのよりもデカい雪玉をポポルやアルテアちゃん以上に用意し、『いっくよぉーっ!』ってはしゃぐ子供みたいな笑顔で撃ちこんできた。


 さすがに焦る。俺もロザリィちゃんもこの時ばかりは真面目になった。眼前に迫るそれは雪崩と大差ない。『炎魔法で焼き尽くせ!』ってみんなに声をかけたんだけど、『出力が違い過ぎる!』、『あんなのに太刀打ちできるはずがないでしょ!?』と悲鳴が上がった。


 俺さ、炎魔法を凍らせるほどの冷気って初めて見たよ。パレッタちゃんの呪も凍ってるし、ミーシャちゃんのリボンも氷一歩手前までいってるんだもん。さすがステラ先生だよね。


 あとはもうギル頼み。『こいつで最強だろ!』ってポポルがギルに連射魔法をかけた。これで破壊の拳の超連打ができる……と思ったんだけど、ギルの筋肉は味方の補助魔法さえ弾いた。絶望と何とも言えない表情が広がったのは言うまでもない。


 が、『きたきたきたきたぁ!』とギルはなぜか絶好調に。びゅんびゅん飛び回ってガンガン雪玉をぶっ壊していく。あいつの筋肉マジでどうなってるんだろう?


 で、『私たちもやるよ!』ってロザリィちゃんが声をかけてきたので、熱いキスを交わして【浮気デストロイ:ピュアハート】をぶっ放す。いくらステラ先生とはいえ、雪玉程度が俺たちの愛に敵うはずもなく、熱々だったからか面白いようにかき消すことができた。


 雪煙が晴れた先には、『これが雪合戦……! 楽しい……っ!』って感動で身を振るわせるステラ先生がいた。おそろしいことに、『じゃあ、もう一発行くよー!』って息切れの一つもしていない。みんなで慌てて止めたのは書くまでもない。書いたけど。


 夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。ステラ先生、雑談中にクラスルームに遊びに来て、『ごめんなさいごめんなさいごめんんさいぃ……!』ってずっと謝っていた。どうやらあの時は軽い興奮状態にあったらしく、冷静になって考えてみたら相当やらかしてしまったことに気づいたらしい。


 『お願いだから先生を嫌いにならないでぇ……!』って涙目になるところがめっちゃかわいかった。先生を嫌いになるはずなんて絶対にありえないのに。もちろん、クラスのみんなで『そんなことないですよ!』、『また一緒に遊びましょう!』って笑顔で答える。みんなステラ先生大好きだしね。


 ステラ先生、ぱぁって顔を明るくしてにこにこと微笑みだした。で、『えへへ……♪』って笑いながらいつぞやみたいに誰彼構わずぎゅっ! って抱き着きだす。最近ステラ先生のスキンシップが激しくなりつつあるけど、俺的には問題ないどころか超ウェルカム。


 クーラスもジオルドも真っ赤になって照れていた。ギルはトロールみたいな顔して笑ってミーシャちゃんに首筋をガジガジされていた。フィルラドはアルテアちゃんに無言でケツビンタされていた。


 俺? ロザリィちゃんは『先生ならいいよ!』って抱きしめてくれたよ。浮気じゃないから問題なし。


 ギルは大きなイビキをかいて寝ている。ふと思ったけど、もしかしてステラ先生って今日のが素の状態なのだろうか。だとしたらなかなかうれしいことだと思う。背伸びしているステラ先生も好きだけど、やっぱりリラックスしているステラ先生のほうがステラ先生って感じがして超大好き。


 なんか俺今超いいこと書いた気がする。気分がいいので、ギルの鼻には奮発して金の欲望を詰めておいた。おやすみなさい。

20160117 誤字修正

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