285日目　基礎魔法陣製図：課題チェック

285日目

　なんか耳の後ろが気になってしょうがない。

　ギルを起こし、朝風呂に誘って入念に耳の後ろを洗う。少なくともギルよりかは綺麗に洗っているのにどうして今日に限ってこうも気になるのか。

　あと、ティキータのゼクトも朝風呂に来ていたので、三人でプチ・アクアカーニバルを開いておいた。『冬の朝のカーニバルも面白いよな！』ってゼクトは自慢げ。ギルは『今日もステキな筋肉だ……！』ってポージングしてうっとりしていた。

　朝食のデザートにフルーツゼリーをチョイス。ぷるぷるした食感とちょっとひんやりした感じが風呂上がりに最高。フルーツをごろっと贅沢に使っているところもグッド。こういう細かいところが本当によくできているからおばちゃんは侮れない。

　ギル？　『うめえうめえ！』ってジャガイモを平らげていたよ。風呂上がりのジャガイモは格別なんだって。

　今日はキート先生の基礎魔法陣製図。ここしばらく例の落書きを全く見ていなかったわけだけど、ドキドキしながら覗くとそこには──！

ここに書いてた男子全員呪っちゃうから

　……って魔法陣と一緒に書かれていた。しかもなんかうねうね動いている。ちょう怖い。そしてきちんと再現する俺マジすごい。

　どうやら俺たちの神聖なる議論は全て無駄に終わってしまったらしい。俺がこっそり張っておいた紙も全部消えてなくなっている。ちょっと気になるのは、明らかに俺以外の誰かが紙を張り付けたであろう痕跡がたくさん残っていることだろうか。なんか机の端から端までびっしりあるんだけど。きっとニューフェイスたちが熱い議論をしていたんだろう。

　……もしかしてバレたのそれのせいじゃね？

　さて、いつも通り出欠をとった後に授業に入る。『あけましておめでとうございます。休み明けで頭が働いていないかもしれませんが、気合入れていきましょう』ってキート先生がげっそりとやつれた顔でヤバそげに笑っている。『先生はとってもエキサイティングでスリルな新年を迎えました』って爛々と輝く瞳で虚空を見つめていた。

　どうみてもスケルトン一歩前。なんかみていて哀れになってくる。吐きに吐いて体重も落ちたのだろう。精神的な部分もあるのかもしれない。キート先生は自分の意思をしっかり伝えられるように……っていうかもっと図太くなれるように訓練するべきだと思う。

　内容だけど、来週に例の課題を提出するということで、冬休み中に仕上げた課題のチェックをやってもらった。が、基本はみんな大丈夫と思っていたのに、『線の濃さが一様でない』、『線の太さが一様でない』、『レイアウトはもっと工夫できる』、『課題の趣旨を理解できていない』……などと、結構な辛口でチェックを入れられてしまっているのが何人かいた。

　パレッタちゃんに至っては『虫の脚がまた挟まっています。しっかり落としましょう』、ポポルは『クッキーの食べかすがやっぱり挟まっています。ミルククッキーなら許しますが、チョコクッキーはありえません。ジャスティスをもっと考えてください』って言われてしまっていた。なんか本格的にアブナイ感じになってね？

　そんなわけで、その後は各々指摘された点を直す。あんま指摘されなかった組はゆったりと製図室でくつろいでいた。椅子がボロくて相変わらずケツが痛くなるけど、何もしないってのは楽でいい。

　夕飯食って風呂入って雑談して今に至る。そうそう、風呂に入るとき、女湯のほうで上級生たちがなんか妙なことをごそごそやっていた。ちょっと気になったので雑談中にロザリィちゃんに聞いたら、『魔磁性微小粉末を利用した魔磁場逆解析による魔振動位相変位および隠蔽魔法要素の検出手法の開発……っていう研究の検証実験って言ってた！』って笑顔で答えてくれた。

　あんなにも長い研究テーマ名を覚えてすらすら言えるとか、ロザリィちゃんの知的な部分に惚れ直さざるを得ない。ロザリィちゃんは何回俺を惚れ直させれば気が済むのだろうか？

　ギルは今日もスヤスヤと大きなイビキをかいている。ロザリィちゃんとなぜか俺にもついていた妙な粉（たぶん魔磁性微小粉末。風呂の前通ったみんなにちょっとずつついていた）を鼻に入れておいた。量が足りない気がするけど気にしない。おやすみずたまり。