霊園内にあるムスリム区画には見慣れない墓が並ぶ

管理費を払わないムスリム

ムスリムの土葬を受け入れたことで霊園の維持は可能になった。だが、悩みや気苦労は絶えないという。

「お墓の収益なんて微々たるもの。何とか維持できているような状態です。日本人とムスリムでは価値観がまったく違うこともあり、新たな悩みも出てきました。

ムスリムにとって値切るのは当たり前。埋葬してから値切ってくるので呆れてしまいます。向こうは10人以上で事務所に入ってきて、『高い。安くしろ』と訴える。あまりにしつこいので『持って帰ってくれ』と言ったこともあります。こっちはひとりで、向こうは集団ですから怖いですよ。

ムスリムは女性も手ごわい。盛んに『お金がない』と訴えてきます。あまりにもしつこい場合、やはり『持って帰ってもらうしかないね』と伝えます。すると女性は観念して『払います』と現金を取り出す。たとえお金があってもないと言い張る。日本人の感覚とはまるで違います。

霊園を管理する早川さん
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約束を守ってくれないのも困ったものです。埋葬をしたいという連絡を受け、準備して待っていても、当日に現れない。こうしたことは一度や二度ではありません。また、年間1万2000円の管理費を払わないケースも多い。これでは草刈りもまともにできません。うちの場合、区画のサイズは決まっていますが、勝手に増設し続ける人もいます。

もちろん常識的なムスリムも多くいます。ただ、彼らは基本的に自分たちの慣習や常識を大切にしており、日本の風習や考え方をさほど意識していません。多文化共生というのは双方の歩み寄りがあってのもの。自分の主張ばかりでは相手も嫌になってしまいます。地域住民の反対により、各地でムスリム向け墓地の計画が頓挫していますが、そうしたことも根本にあるのでしょう」

後編記事『「闇土葬」が行われている…〈ムスリム土葬墓地不足問題〉在日イスラム教徒向け霊園経営者が懸念する「最悪の事態」』では引き続き、ムスリム向け土葬墓地不足の「実態」、そして霊園を管理する当事者としての「本音」や「悩み」を紹介しています。

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