霊園には礼拝室や洗体場も
関越自動車道「本庄児玉IC」から車で15分。市の中心部から離れた丘陵地の坂道を上ると、突如「本庄児玉聖地霊園」の看板が現れた。丘陵の頂上にある霊園の周囲に民家はなく、太陽光パネルが林立している。
霊園の入口近くにはプレハブの管理事務所が建つ。その中には礼拝室がもうけられており、管理事務所の隣には洗体場もある。管理事務所を出て砂利の坂道を上ると、そこには平地が広がっており、入口にアラビア語の看板が立つ。その奥には見慣れない墓が並ぶ。ここがムスリムの土葬墓地区画だ。
本庄児玉聖地霊園は、全国でも10ヵ所程度しかないムスリム土葬墓地のひとつだ。なぜムスリムの土葬を受け入れるようになったのか。こう問うと、早川さんは苦笑いして「『先見性がありますね』なんて言われることもありますが、ムスリムの増加を見越していたわけではありません。まさに偶然が重なった形でした」と明かした。
「墓地を開設した1995年、当時許認可を管轄していた保健所の担当者から『土葬もできる墓地として申請しますか』と尋ねられました。というのも、この周辺地域には土葬の風習が残っていたためです。そこで、1万7000坪の敷地すべてを土葬ができるように申請しました。それがスタートです。
霊園には地主がいて、管理面を私の会社が担当しておりますが、地主が土地をめぐるトラブルに巻き込まれ、紆余曲折の末、4800坪だけが墓地として残りました。残りの土地には現在、太陽光パネルが置かれております。
もともと日本人向けの墓地であり、最大で270基の日本人のお墓がありました。もっとも、土葬を希望する人は長年現れず、現在に至るまで日本人による土葬の申し込みはわずか1件だけです。近年は墓じまいをする人も多く、収益は激減。墓地の維持が長年の悩みでした」