生活音めぐるクレーム→「訴える」に発展 厄介な騒音トラブル、弁護士は「身の危険あれば110番を」
●相手方の恫喝は、単なる「文句」ではすまされない
──相手の行為について法的責任を問うこともできるのでしょうか 相手の行き過ぎた行為は、単なる「文句」では済まない、つまり刑事責任を問われるケースもあるでしょう。 例えば次のようなケースが考えられます。 ・「ただじゃおかないぞ」などと脅す → 脅迫罪 ・無理やり土下座や謝罪をさせる → 強要罪 ・勝手に家に上がり込み、退去を拒む → 住居侵入罪 犯罪に発展する可能性がある場合には警察に相談する、被害届を提出するなどの対応が必要です。それらの事実があった場合、相手は刑罰を受ける可能性があります。 また、どなり込みなどで精神的な苦痛を受けた場合、その慰謝料を請求できることがあります。 いずれにしろ、大切なのは「証拠」です。身の安全を第一に考えつつ、スマホや防犯カメラの録音・録画機能で記録を残しましょう。インターホンの録画も有力な証拠になります。 もし身に危険を感じたら、ためらわずに110番通報してください。警察官が来てくれたら、その場の危険を回避でき、公的な記録にも残ります。
●相談者が平穏な生活を取り戻すには
──本件のようなケースで、相談者が平穏な生活を取り戻すためには、自分が引越しするしかないのでしょうか 隣人トラブルのように一度感情がこじれると、誰かが快刀乱麻の手腕を振るって一件落着!とは、なかなかいかないのが現実です。段階を踏んで解決を目指し、どうしても解決に至らないときは、転居も最終解決の一つです。 まずは、マンションの管理組合や管理会社、役所の相談窓口など、中立な立場の人に間に入ってもらうのが穏便な第一歩です。 裁判よりも簡易で低コストな「民間調停」「民事調停」などの話し合いの場を利用する方法もあります。専門家が間に入ることで、冷静な話し合いが期待できます。 感情的な対立から一度離れて、「建物の音を防ぐ性能」という技術的な問題として捉え直すのも手です。専門家に調査を依頼し、もし建物に原因があれば、管理組合等を巻き込んで対策を考えることができます。 裁判による迷惑行為の差止や損害賠償請求は、時間・お金・心の負担が非常に大きい最後の手段です。 どの方法を選ぶかは、あなた自身がどこまでリスク・コストを許容できるかによります。まずは自分と相手の言動の証拠をしっかり確保して身の安全を図りつつ、負担の少ない方法から試してみてください。 【取材協力弁護士】 山之内 桂(やまのうち・かつら)弁護士 1969年生まれ。宮崎県出身。早稲田大学法学部卒。司法修習50期、JELF(日本環境法律家連盟)正会員。大阪医療問題研究会会員。医療事故情報センター正会員。 事務所名:梅新東法律事務所 事務所URL:https://www.uhl.jp
弁護士ドットコムニュース編集部