生活音めぐるクレーム→「訴える」に発展 厄介な騒音トラブル、弁護士は「身の危険あれば110番を」
マンションやアパートなど集合住宅で起こる騒音問題。引っ越しを余儀なくされたり、刑事事件に発展したりするなど深刻な問題です。弁護士ドットコムにも多数の相談が寄せられています。 ある相談者は、マンションの階下住人から、日常の生活音を理由に「裁判で訴える」と恫喝されているそうです。「トイレやお風呂の音、話し声、日中の足音がうるさいと怒鳴り込まれた」といいますが、相談者には身に覚えがありません。 指摘されたものは生活音であり、そもそも「日中は、家族全員が外出しているため、私の家の音ではない」と伝えたが、聞き入れてくれないそうです。念のため、騒音対策としてパズル型のマットを部屋や廊下に敷き詰めるなどの対策をとりましたが、相手は納得しません。 度々怒鳴り込まれたり、裁判で訴えるなどと言われたりして「恫喝されて怖いです」(相談者)。このような場合、どのように対処するべきなのでしょうか。不動産トラブルに詳しい山之内桂弁護士に聞きました。
●日常の生活音も「騒音」になりうる
──日常の生活の音も、「騒音」として評価されますか はい、なり得ます。ポイントは「お互いに我慢すべき限度(受忍限度)」を超えているかどうかです。 日常生活で出る音には、「お互い様」として我慢すべき音と、そうでない音があります。 例えば、以下のように分類できます。 <我慢すべき音(セーフになりやすい)> ・トイレやお風呂の水の音 ・日中の普通の話し声やテレビの音 ・掃除、洗濯、料理などの家事の音 ・子どもの足音(日中、常識の範囲内) <騒音と判断されやすい音(アウトになりやすい)> ・深夜や早朝に響き渡る音楽やテレビの大音量 ・わざと物を叩きつけたり、床を鳴らしたりするような衝撃音 特に日中(朝7時~夜10時頃)の音は、よほどのことがない限り「生活音」として許容されることが多いです。
●裁判のリスクは?
──本件では、裁判に訴えられた場合、相談者が敗訴する可能性はありますか きちんと対策や証拠を示せれば、負ける可能性は低いです。 まず、「訴えてやる!」と感情的に言う人ほど、実際には裁判を起こさないことが多いです。裁判に大変な手間とお金がかかることを知らない場合が多いからです。 しかし、万が一、裁判所から「特別送達」という特別な手紙で「訴状」が届いたら、絶対に無視してはいけません。必ず期限までに「答弁書(あなたの言い分を伝える反論書)」を提出しましょう。 裁判所は、音の種類や大きさ、時間帯、あなたの対策などを総合的に見て判断します。今回のケースでは、 ・相手がうるさいと言う時間帯、あなたは外出していたこと ・防音マットを敷くなど、音への配慮をしていたこと これらは、あなたにとって有利な事実です。会社のタイムカードやスマホの位置情報ログなど、客観的な証拠で「その時間、家にいなかった」と証明できれば、責任を問われるリスクは低いでしょう。