経済的に厳しい状態に置かれている方から「坂爪さんに会いたいけどお呼びするお金がない」とご連絡をいただく。私に金があれば「任せろ」と言って新幹線なり飛行機に乗って駆けつけることができるのだが、どうしたものか。普通免許と中型免許ならある。誰か「使っていない車（あるいはバイク）があるから貸すよ」的な方がいらっしゃいましたら、ご連絡いただけましたら幸いです。代わりに私が差し出せるものは、私の体か、私の家か。体を差し出す。私の家を差し出す。車種は問わない。高速道路に乗れたらなんでもいい。ブーンブーンと、月光仮面のようにあなたの街へ。

最近会社をクビになったり恋人から振られたり家を追い出されたりした人は、運が悪いのでなく、運がいいのだと思う。悪いことが起きているのではなく、良いことが起きているのだと思う。自然が「そっちじゃないよ」と教えてくれているのだと思う。だから、抵抗したり訴訟を起こしたりするのではなくて「ありがとうございました」と言って、潔く離れる。次に向かう。誰とも何とも比べない。自分は自分。他人は他人。他人と比べたり、過去の自分と比べるとズレる。昔は昔。今は今。引きずられない。思い出にしがみつかない。

一緒にいるとなんとなく楽しくなる人と生きる。一緒にいるとなんとなく苦しくなる人といながら「私が未熟なんだ」と思うと、どんどんズレる。自分を殺さず、自分を生かす。これまでは苦しむことが愛の物差しだった。自分を犠牲にしている人ほど真面目に生きていて、自分を犠牲にしている人ほど世の中に貢献をしていると考えられた。この考え方が行き過ぎると、苦しんでいない人はダメだということになる。楽しむことにブレーキがかかり、慢性的な罪悪感に苦しめられる。生きていることが罪になり、楽しむことが罪になる。生きていることは罪じゃない。楽しむことは罪じゃない。罪悪感を感じることで負債を支払う必要はない。愛の物差しは苦しみではない。喜びだ。

誰かのために死ぬことは愛じゃない。誰かのために生きることが愛だ。最大の他者は『自分』だ。自分という他者のために生きる。生きたくない世界を生きるのではなく、生きたい世界を生きる。生きたくない世界のために死ぬのではなく、生きたいと思える世界のために生きる。守りたいと思える世界のために生きる。帰りたいと思える世界のために生きる。平和が実現するのを待つのではなく、平和を生きる。自分が平和になる。自分が平和になるほど、世界が平和になる。世界の中に自分がいるのではなく、自分の中に世界がある。世界に通用する人間を目指すのではなく、自分を生きる。自分を生きると、世界が息を吹き返す。

自分を生きることは恥ずかしいことなのか。恥ずかしいと思うことが一番恥ずかしいことなのか。羞恥心と差別の感情は表裏一体。恥ずかしいと思うことが、一番の差別になる。世間的な常識から見たら、私たちは恥ずかしい存在かもしれない。だが、命を真っ直ぐに見つめた時、恥ずかしい命などというものはこの世の中に一つたりともないことを掴む。神様は、無用の長物を作るほど愚かではない。地球が一つの家ならば、私たちは同棲していることと同じである。愛することを恐れない。生きたくない世界のために死ぬのではなく、生きたいと思える世界のために生きること。愛の物差しは苦しみではない。愛の物差しは喜びだ。