「被害者ノート」に救われた…池袋暴走事故の遺族松永拓也さん「怖かった未来」に差した明かり

2022年4月18日 06時00分 有料会員限定記事
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自身の被害者ノートを手に経験を話す松永拓也さん(左)と発案者であいの会代表の小沢樹里さん=2月26日、東京都豊島区東池袋で(中西祥子撮影)


 2019年4月に東京・池袋で起きた乗用車暴走事故の直後、死を考えるほどの絶望感に襲われた遺族松永拓也さん(35)が、生きる意味を見いだすきっかけになったノートがある。犯罪や事故の被害者らが経験することをまとめた「被害者ノート」だ。有志がつくったこのノートを参考にする自治体も増え、支援の充実が図られている。今月19日で事故発生から3年になる。(福岡範行)

被害者ノートの中で、松永拓也さんが役立ったと話した刑事裁判のアウトライン

◆「どうか1人で抱えないで下さい」

 松永さんがノートと出合ったのは事故から1カ月余り過ぎた後。「関東交通犯罪遺族の会」(あいの会)の代表小沢樹里さん(41)から「どうか1人で抱えないで下さい」という手紙とともに郵送されてきた。A4判100ページには、司法手続きの流れやマスコミ対策、役所での手続き一覧表などが詳しく載っていた。
 妻真菜さん=当時(31)=と長女莉子ちゃん=同(3つ)=を突然失い、「『将来こうしたいな』が一気になくなる。先が真っ暗になった」という松永さん。ノートを通じて支援者の存在を知り、刑事裁判の流れを学ぶことができたことで、何が起きるか全く分からなくて怖かった未来に「少し明かりが照らされた気持ちになれた」。
 当時の大きな悩みは、マスコミへの恐怖心。事故5日後の記者会見でも記者の目を見られずにうつむいていた。一方、被害者ノートには「社会に向けて訴えかけられます」などと報道のプラス面も書かれていた。

被害者ノートについて話す松永拓也さん

 小沢さんに相談すると、記者と一対一で会うことを勧められた。19年6月、本紙記者と互いの事故防止への思いを語り合った。感想をノートに書いた。「真面目そう。記者も人間だった」。さまざまなメディアの取材依頼に積極的に応じていく転機になった。
 気持ちが沈んだときも、ノートに助けられた。松永さんは涙が出なくなった時期があり、「自分はすごく非情な人間なのか」と悩んだ。そんな時、ページの端に書かれた過去の被害者、遺族らからの「30字コメント」が目に留まった。「泣けないこともあります」。その一言に救われた。「実務的なことだけじゃなく、混乱する心とも向き合える。すごくバランスがいいなと思いました」
 隣のページには「あなた...

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