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高森明勅
2025.8.16 10:06皇統問題

旧宮家系子孫による皇位継承も「世襲」と言えるのか

旧宮家系子孫による皇位継承も「世襲」と言えるのか

時折こんな質問を受ける。
「憲法は『皇位は世襲』(第2条)と定めていますが、
旧宮家系子孫による皇位継承は果たして
“世襲”と言えるのですか?」と。

これについては、憲法の条文にまで
「皇位ハ…皇男子孫之(これ)ヲ継承ス」(第2条)と
男系主義を明記していた大日本帝国憲法のもとでの、
標準的な憲法教科書だった美濃部達吉
『憲法撮要』の記述が参考になる。

私の手元にあるのは改訂第5版(昭和7年刊行)だが、
「皇位継承ノ基礎原則」の第一(!)として
「世襲主義」を掲げる。世襲とは勿論、
“皇統による皇位継承”を意味する。
その場合、重要なのは「皇統」の概念規定だ。

「皇統トハ唯(ただ)皇族タル身分を
有スル者ノミヲ意味シ、既ニ臣籍ニ入リタル者ヲ含マズ。
一タビ皇族ノ身分ヲ脱シテ臣籍ニ降ルトキハ、
皇位継承ノ資格ハ消滅シテ又之ヲ復スルヲ
得ザルコトハ、当然ノ原則トシテ認メラルル所ナリ」
(212ページ)

前例を振り返ると、かつて皇族だった方が
皇籍から離脱後に再び復帰したり
(宇多天皇、忠房親王など)、
親の皇籍復帰に伴ってお子さまが皇籍を
取得されたり(醍醐天皇など)した実例は、
ある(継体天皇は天皇からの血縁は
5世という遠さでも皇籍から離脱されていない。
源明子のケースは皇統の継承とは無縁な“養女”の例だった)。

しかし、それらは「元皇族の皇籍復帰や
その復帰に伴うお子さまの皇籍取得」なので、
既に“親の代から一般国民”である旧宮家系子孫の
場合と、同列に扱えないのは当然だ。

皇統は単なる生物学的な血統ではなく、
皇室と国民との名分上の区別を踏まえた、
文化概念として把握する必要がある。

その場合、
「皇統トハ唯皇族タル身分ヲ有スル者
ノミヲ意味シ、既ニ臣籍ニ入タル者ヲ含マズ」
との帝国憲法下での通念に照らすと、
旧宮家系子孫男性は皇統に属していると見做すことはできない。

ならば、世襲が皇統による皇位継承を
意味する以上、それは該当しないだろう。
なお、男系主義を採用する帝国憲法下でも、
皇統そのものには女系も含む
(但し制度設計上は排除される)と
解されていた(例えば佐藤丑次郎
『逐条帝国憲法講義』昭和17年刊行、59ページ)。

▼追記
①漫画家の小林よしのり氏が脳梗塞で入院された。
それでも毎日ブログを更新されている。
9月上旬に予定されているイベントにも登壇される予定とか。
病床にあっても強い意志を示し続けておられるのは、さすがだ。

②8月18日発売の「週刊現代」にコメントが掲載。

▼高森明勅公式サイト
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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