藤井七冠が羽生前会長の面前で「女流棋士新制度」に苦言 「棋力の担保は取れているのでしょうか」
「よくぞ言ってくれた」との感想も
こうした「藤井発言」が、女流棋士をはじめ羽生前会長ら連盟幹部に反感を持たれることは必至。それでも波風が立つことを承知の上で質問した理由はどこにあったのか。 「若手を中心に反対の声は根強く、“よくぞ言ってくれた”との感想を抱いた棋士もいました。多くの棋士は幼少期から人生を将棋に捧げて、血のにじむ努力をしてきた。それでもプロ棋士への正規ルートである奨励会を勝ち抜けず、涙ながら将棋界を去った人たちの姿を見ている。藤井さんは新制度でプロ棋士のレベルが担保されるのか。伝統が壊れやしないかと心配なのでしょう」(前出の参加者) そもそも将棋界でプロになるためには、奨励会で25歳までに三段リーグを勝ち抜く必要がある。年間4人しか選ばれない狭き門。規定の年齢を超えるとプロになることは不可能に近い。こうした厳しさが、将棋界で数々のドラマを生んできたゆえんでもある。 先の記者が言う。 「夢破れても、女性なら女流棋士として活躍できる選択肢が与えられてきました。女流棋士には、公式戦で棋士を相手に一定の成績を収めれば、プロ編入試験を受けられる制度があるのです」 かつて編入試験には福間香奈女流六冠(33)と西山朋佳女流二冠(30)が挑戦したことがあるが、残念ながら合格するには至っていない。 将棋ライターの松本博文氏に聞くと、 「長い将棋界の歴史を見ると、女性の競技人口は増えつつありますが、まだ圧倒的に少ない。一般的なルートでの棋士昇格は男女問わずに難しく、数の上で少ない女性が棋士になった例はまだない。女流タイトル獲得で棋士になれる新制度導入によって、女性棋士誕生も近いかもしれません」
「週刊新潮」2025年8月7日号 掲載
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