靖国分祀、今の世代で解決を 古賀誠自民党元幹事長インタビュー
太平洋戦争の戦死者らを「英霊」として祭る靖国神社(東京都千代田区)が戦後80年を迎えた。日本遺族会会長を務めた自民党元幹事長の古賀誠氏(85)が時事通信のインタビューに応じ、天皇陛下の靖国神社への参拝を望み、参拝問題を解決するには「A級戦犯の分祀(ぶんし)以外にない」と強調した。分祀が実現していない中で、首相や閣僚が靖国参拝することに「反対」と訴えた。(時事通信政治部 大沼秀樹) 【写真特集】歴代首相の靖国神社参拝 ◇鎮魂と祈りの夏 〈太平洋戦争末期、父を出征先のフィリピン・レイテ島で亡くした古賀氏は母の苦労を見て育ち、政治家を志した。1980年の衆院選で初当選し、当選10回。一貫して「平和」を訴え続け、2012年に政界を引退した〉 ―戦没者遺族として戦後80年が経過した今の思いは。 暑い夏は鎮魂の祈りの季節だ。父親は私が2歳の時に赤紙が来て出征したため、父親のぬくもりや思い出は何一つ記憶にない。5歳の時に終戦を迎え、小学校の校庭に集まってラジオで玉音放送を聞いた。それから80年、長かったようにも、あっという間に過ぎてしまったようにも思う。 ◇A級戦犯合祀が理由 〈靖国神社は極東国際軍事裁判(東京裁判)のA級戦犯14人を「昭和受難者」として1978年に合祀(ごうし)した。太平洋戦争の開戦時に内閣を率いた東条英機元首相らが含まれ、首相らの参拝を巡る問題が注目を集める原因となった〉 ―靖国神社参拝がいまだ政治・外交問題になっている。 遺族として極めて残念、無念だ。靖国参拝問題はA級戦犯をひそかに合祀したところから起きており、昭和天皇がご親拝できなくなった理由はそこにあると思う。解決するにはA級戦犯の分祀以外にない。 英霊の御霊(みたま)を祭るのは靖国神社以外ないというのが遺族にとっての大きな観念だ。無宗教の新たな追悼施設を建設する案もあったが、仮に新施設ができたとしてもそこにお参りすることは全く考えられない。 ―靖国神社側は「分祀はできない」との立場だ。 靖国神社としては、いったん魂を納めた以上取り除くことはできないと拒否している。ろうそくに例え、火は分けられない、と。絞首刑を言い渡された7人のうち東条元首相以外のご遺族も「いろいろな問題が生じてご親拝できなくなっているのは甚だ心苦しい」として分祀に同意している。(神社側の主張は)理解できない。 ―東京裁判を否定する意見もある。 東京裁判は戦勝国による全く不公平な中で一方的に行われた裁判だから認める必要はなく合祀しても問題ない、という一握りの保守的な人の意見がある。この考えは、国際社会でとても通用する話ではない。わが国はサンフランシスコ講和条約(1951年に日本と連合国48カ国が調印)でA級戦犯が戦争責任者だと明示的に受諾し、日本再興のレールが敷かれて今日がある。歴史認識はしっかり持つべきだ。 ―靖国参拝時に母親が「赤紙を出した偉い人も一緒に入っている」とつぶやいたことが分祀論の契機になったのか。 犠牲者の妻として、命令を出した人と出されて死んだ人が、同じところに祭られていることに対する正直な気持ちだ。今でも母が言ったことは理解できるし、大切にしなくてはいけないと思っている。