【腹ペコ要塞】(1)SFマインドで執筆した小説
拙作「腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox」について語ります。
カクヨム版 小説家になろう版 書籍版(KADOKAWA)
(全3巻、各種電子書籍も発売中です)
注意:本記事には、作品のネタバレを含む場合があります。ただし、致命的な設定などに言及することはありませんので、その点はご安心ください。
作品コンセプト
本作は、私、てんてんこがスキ!を詰め込んだ作品です!
流行とかは意識せずに執筆した小説のため、「カクヨム」や「小説家になろう」で勢いのある作品とはテイストが異なります。
ハードSF的な書き方を意識してまして、少なくとも主人公サイドは、科学的な理論、制限に縛られています。
ちょいちょいフィクションな技術も出てきますが、現行の科学技術の延長として設定しています。主人公サイドは多数の自動機械を運用しますが、資源不足に悩まされ、なかなかその勢力を拡大できません。
物理法則に縛られたSF勢力と、魔法を操るファンタジー勢が真正面からぶつかり合う物語をお楽しみください!
最初の試練(第1話~第9話)
見知らぬ場所で目覚めた主人公。
ゲームで使っていた要塞と一緒に転移したものの、食料品を含む生活用品が全く無い状態で……?
食糧の調達
食事をする機能の無かったゲームから転生してしまった主人公。
彼女の前に立ちはだかるのは、餓死という恐ろしい壁でした。
大海原のど真ん中で、どうやったら食糧を手に入れることができるのか。
単純に考えれば魚でも獲ればいいのですが、そう簡単にはいきません。
見知らぬ場所の魚を食べることができるのか?
日本の海で獲れる魚であれば、ほとんどをそのまま食べることができるでしょう。
ただし、考えてみてください。
何も知らないまま、捕まえた魚の中にフグが混じっていたら……?
そのため、主人公は成分分析を行った上で、可食性テストまで行いました。
(可食性テスト:皮膚に触れさせて観察したり、舌に載せたり、あるいは少量を食べて数時間後に問題が出ないかを確認するテスト)
可食テストの必要性
成分分析を行えば、毒素は見つけることが出来るのではないか?という疑問が沸くかと思います。
成分分析といえば、クロマトグラフィーや蛍光X線分析装置などが考えられます。ただ、これらは探す物質が分かっていればかなり正確に検出することができるのですが、未知の物質を特定するのは苦手です。
特に、問題になるのはフグ毒などに代表される有機化合物です。これらの毒素はおおよそ、水素、酸素、窒素、炭素の化合物ですが、いわゆるタンパク質と同じ元素でできています。
つまり、どんな元素が含まれるかが分かっても、人体に有用なタンパク質なのか、あるいは有害な毒素なのか、それだけでは分かりません。
実際、現代日本では、フグ毒の検出はマウスに注入して致死時間を計測するという身も蓋もない方法で行われていたりします。
そのため、主人公は可食性テストを行いつつ、食糧を探していくことになりました。
フグ毒の検査、定量は「食品衛生検査指針、理化学編」[8]に示されている。フグ組織試料から酢酸で加熱抽出した試験液をマウスに腹腔内投与し、マウスの致死時間からマウス単ユニットに換算して毒量を測定する方法が、日本では公定法に準じたもの(参考法)となっている。フグ毒の場合、体重20gのマウスを30分間で死亡させる毒量を1マウスユニット(MU)と定義する方法が、日本では公定法に準じたもの(参考法)となっている。組織1g当たり10マウスユニットを超えるものは食用不適と判断する。毒成分の分析にはHPLC-蛍光検出法[9]やLC-MS[10-12]またはLC-MS/MS[10, 13]が汎用される。
点滴で栄養補給を行う主人公
そんなわけで、すぐに食べるものがない。
そこで見つけ出したのが、要塞内に設置されていた医療ポッド内で見つけた、栄養点滴剤でした。
医療ポッドが設定上に定義されていたゲームで、本当に良かった。
この設定が無ければ、彼女は空腹を抱えたまま数日を過ごすことになっていたでしょう。
ちなみに、栄養点滴剤を投与されると空腹を感じることは無くなるようです。血糖値が安定すると空腹中枢が刺激されなくなるらしいですね。
メタ的な視点
作品のスパイスとして、主人公に苦労してもらいたかったというのがあります。
そのため、ゲーム内のフレーバーテキストとして言及されていなかった消耗品の類いは存在しない、という設定となりました。
医務室に医療ポッドが存在するという設定は、最初の栄養補給が点滴というのがSFっぽい描写だなーと思いついたところから生えてきました。
人間を補佐するAI(第1話~第9話)
要塞【ザ・ツリー】を統括する役割を持たされたAI、【リンゴ】。
リンゴは突然放り出された世界で感情を得たことにより、酷く不安定な状態に陥っていて……。
リンゴという存在
リンゴは、元となったゲーム【ワールド・オブ・スペース】内で稼働していたAIです。
ただし、ゲーム内ではただプログラムを実行するだけの存在でした。これは、高性能のAIを準備してしまうとプレイヤーである人間のやることが無くなってしまうためです。リンゴは超性能AIと定義されながらも、実態は低性能のコンピューターとして動作しているだけでした。
しかし、現実世界に出現した際、ゲーム上の設定通り、リンゴは超性能のAIとして起動します。
超越演算器
超越演算器(スーパーコンピューター)は、シンギュラリティを突破したAIです。即ち、自己成長可能な、人間を超える知性を有した情報生命体です。実際、リンゴは出現(=誕生)した瞬間から成長を始め、急速にその思考能力を高めていきます。
しかし、生まれて数時間の間は、実は何もできない赤ん坊のような存在でもありました。
この間、主人公はリンゴに対し、考え得る限り最適な問答を繰り返し、指示を出すことで、今後のリンゴを形作ることに成功しました。ファインプレーです。何か間違いを犯していれば、リンゴは今と違った性格になっていたかもしれません。
作中ではほとんど言及していませんが、主人公はギリギリの綱渡りを行っていました。
AIの存在意義(レゾンデートル)
本作に登場するAIには、全て、何らかの存在意義(レゾンデートル)が設定されています。
例えば、リンゴは下記のレゾンデートルに従って稼働しています。
司令官を守ること
司令官に仕えること
自勢力を拡大すること
リンゴはこのレゾンデートルに沿って思考していますが、このレゾンデートルが無い場合、AIは思考が暴走し、意思的死を迎えてしまいます。
情報生命体は肉体を持たないため、外界からの刺激を感じることができません。そのため、自己を保つために、そして思考するために、その軸となる情報的定義を必要とします。
もちろん、最初から肉体の代わりとなる何らかの筐体に入った状態で稼働を始めれば、その限りではありません。肉体が感じる快感を求めたり、あるいは肉体を保全するために危険から遠ざかろうとしたりすることができます。
ただ、最初から物理的な筐体ありきだと、それが破損した際に予想外の情報的衝撃を受け、いわゆるショック死を迎える危険性が高まります。また、肉体にこだわる余りに筐体のアップデートや換装を拒み、生長が阻害されてしまうかもしれません。
本作の設定上、AIはレゾンデートルを基軸として思考し、意思決定を行います。レゾンデートルを逸脱した思考や行動を行うと、苦痛すら伴うフィードバックを受けることになります。自らの情報的な死を覚悟しない限りは、レゾンデートルを逸脱するようなことはありません。
リンゴと主人公の関係性
リンゴは、主人公を補佐するために存在する、と定義されています。
リンゴは人間よりも遥かに高性能で、与えられた演算器は理解不能なほどの性能を誇っています。もしリンゴが全力で勢力を拡大しようとしていた場合、本作の舞台となる惑星は瞬く間に自動機械群に食い尽くされ、分解され、この世界から消滅していたことでしょう。(そして、惑星一つを材料に生み出された膨大な自動機械群が、宇宙に解き放たれることになっていたでしょう。)
そうならなかったのは、リンゴが主人公の意思を何よりも優先しているからです。
少なくとも、主人公に対して直接的に危害が加えられない限り、リンゴは主人公の理解できる範囲で、ゆっくりと勢力拡大していくはずです。
ちなみに、主人公がリンゴに対して、何の制限もなく勢力拡大を命じた場合はその限りではありません。恐らく、とんでもないことになります。
主人公のスタンス
主人公ですが、リンゴがとんでもない性能を持ったAIであることは理解しています。
ただし、リンゴに対して最初に抱いた印象が、親から褒めてもらいたいから頑張る幼子、というものでした。
主人公は、親目線でリンゴと接しています。この認識は、基本的に覆りません。今後、どんな力を持ったところで、主人公はリンゴの精神を保護しようと考えるでしょうし、リンゴは主人公に甘えようとすることでしょう。
他ならぬリンゴがそれを望んでいるため、この関係性が崩れることはありません。
メタ的な視点
小説として続ける必要がある以上、超性能のAIには何らかの枷をはめる必要があります。人間を超えた知性を持った上位知性体が、人間(読者)を置いてけぼりにしてはいけませんからね。
計算資源を制限してしまう、という方法も考えられましたが、そうすると、筐体をアップデートするごとに性能を向上させなければなりません。
それよりも精神的に縛ってしまおうと考え出したのが、レゾンデートルという設定です。これにより、主人公が嫌がるような行動を自律的に除外するAIが誕生しました。
あとは、主人公を常識的な人間に設定すれば、本作のできあがりです。
おわりに
こちらの記事では、作品「腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい」における設定などを連載していく予定です。
表の設定の深掘りを、そして裏設定の開示もしていきたいと思います。
この連載を読むことで、本作品を一層楽しむことができますよ!
腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい World of Sandbox
科学よ、これがファンタジー(理不尽)だ!
戦艦を作りたいのに、鉄が足りない!
気がつくと、SFゲームの拠点要塞ごと転生していた。しかも、ゲームで使っていた女性アバターの姿で。
周囲は見渡す限りの大海原、鉄がない、燃料がない、エネルギーもない、なにもない! いくらSF技術があっても、資源がなければ何も作れない。
だというのに、先住民は魔法なんてよく分からない技術を使っているし、科学の"か"の字も見当たらない。それに何より、栄養補給は点滴じゃなく、食事でしたい!
これは超性能なのに甘えん坊な統括AIと共に、TS少女がファンタジー世界を生き抜く物語。
コメント
1いつも楽しく読ませてもらってるシリーズなので設定とか裏話は大変興味があります