「両国に有害」な日米関係 「暗黒啓蒙」唱える思想家の外交論とは
「暗黒啓蒙(けいもう)」と呼ばれる思想を展開し、大手メディアも軒並み特集を組むなど米国で急速に存在感を高めているカーティス・ヤービン氏。トランプ大統領は王のような存在になるべきだと述べ、民主主義を否定するような言説は物議を醸している。朝日新聞の取材に応じたヤービン氏は、外交面では米国の徹底した孤立主義を主張し、対日関係についても、旧来の米外交主流派とは全く異なる意見を述べた。
トランプ大統領は「王」であれ 「暗黒啓蒙」で注目の思想家は何者か
トランプ大統領は、王のような存在になるべきだ――。米国ではいま、民主主義を根幹から覆す考え方が一部の知識人の間で真面目に語られています。その核心にいる、カーティス・ヤービン氏。3時間を超える朝日新聞のインタビューに応じました。
――戦後の日米関係をどう考えますか。
「日本やドイツは米国の属州として複雑な関係を続けてきた。米国はこの関係から手を引かなければいけない。日米いずれから働きかけてもいい。日本は米国との戦略的デカップリング(切り離し)を始めるべきだ。(非対称な関係は)両国にとって有害だ」
「日本の従属は(敗戦後の)1940年代だけではなく、例えば80年代の(ドル高是正に応じた)『プラザ合意』などでも示されているだろう。プラザ合意が、日本の(輸出主導の)重商主義的な野望を深刻に打ち砕いたのは明らかだ。それでも、非文明国になってしまった米国と違い、日本は多くの点でまだ文明国であり、繁栄しているのだが」
――米国が東アジアから手を引けば、中国はどう対応するでしょうか。
「日本はあの(フビライ・)ハンの時以来、中国から攻め込まれていないだろう。(元寇(げんこう)の)結果を見ればわかる。(対外侵攻は)中国が望むやり方ではない。彼らはヒトラーとは違う」
――あなたは民主主義を否定しますが、戦争で米国による甚大な破壊を被った日本人が、それにもかかわらず米国を好意的に受け止めたのは、その民主主義を……。
「(質問を遮って)『にもかかわらず』でなく『だからこそ』だ。(日本の対米感情が比較的良かったのは)米国の価値観が良かったからではない。ストックホルム症候群(監禁事件などの被害者が、犯人と長く過ごすうちに過度の好意的な感情を抱く現象)だ」
――米国があなたの言う孤立主義に回帰すれば、世界がより不安定化する懸念はないでしょうか。
「いや、むしろ安定する。(米国が他国を)子どものように扱うから、各国が子どものように振る舞うのだ。ウクライナの戦争も即刻停戦すべきだ。戦争をけしかけた米国の外交官たちの責任は投獄に値する。日本のようにナショナリズムが激しく非難されている国からあなたは来て、ウクライナでナショナリズムがわき上がっていることを、奇妙には感じないのか」
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- 【視点】
ヤービン氏のようなタイプの知識人は、ロシアでときどき目にします。例えば、ネオ・ユーラシア主義を唱えるアレクサンドル・ドゥーギン氏です。また、私とモスクワ国立大学哲学部科学的無神論学科で机を並べて勉強し、ラトビア人民戦線幹部として活躍したが、今はプーチン政権を強く支持するオピニオンリーダーになっている政治学者のアレクサンドル・カザコフ君(与党「公正ロシア」幹部会員〔非議員〕)も典型的なこのタイプの知識人です。 こういう人たちは、難関大学を卒業し、学生時代の成績も良いのですが、制度化したアマデミー(大学や科学アカデミーなどの社会的評価が確立した学術研究機関)には背を向けます。 基本的には、読書を通じた独学と、自分の周辺の狭いネットワークでの深い意見交換を通じて、自らの思考を深めていきます。そして,既存のアカデミーやジャーナリズムの常識にとらわれない、実にユニークな見方を示します。こういう知識人は思想は現実に影響を与えなくては意味がないと考えるので、政治家との交遊に積極的ですが、政治家からカネやポストを要求することはありません。カネは自分で稼ぐし、ポストには関心が無いからです。政治家からするとこういう知識人は、国家のことを真剣に考える誠実な人のように映ります。 因みにヤービン氏のロシア・ウクライナ戦争に対する評価も鋭いです。 <――米国があなたの言う孤立主義に回帰すれば、世界がより不安定化する懸念はないでしょうか。 「いや、むしろ安定する。(米国が他国を)子どものように扱うから、各国が子どものように振る舞うのだ。ウクライナの戦争も即刻停戦すべきだ。戦争をけしかけた米国の外交官たちの責任は投獄に値する。日本のようにナショナリズムが激しく非難されている国からあなたは来て、ウクライナでナショナリズムがわき上がっていることを、奇妙には感じないのか」>(8月13日「朝日新聞」デジタル) 私も、ロシア・ウクライナ戦争が起きた背景にはヌーランド氏らネオコン系外交官の工作が大きかったとみています。 また、西ウクライナのガリツィア地方に拠点を持つウクライナのナショナリズムはかなり過激です。その危険性については、フランスの家族人類学者のエマニュエル・トッド氏も指摘しています。 この戦争を即時に止めるべきだというヤービン氏の意見に私も賛成します。ネオコン型の民主主義や人権という大義を掲げて戦争を継続しても、死傷者が増えるだけで、失地回復という目標をウクライナが達成することはできないからです。
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トランプ再来
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