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毎年某文学賞の下読み委員の私が考える、「本当に読みたい小説」

読書オタクとして名乗りをあげて、とある文学賞の下読み委員になったのは数年前のこと。今年はもう勝手知ったるものだった。

今回は毎年某文学賞の下読み委員をしている私が、どうやって実際の選考の場で小説に点数をつけていくのかについて書いてみる。

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受賞のためには下読み委員のプッシュが必須

下読みとは、選考委員が読む前に、膨大な数の応募作を選別するために読む人のこと。菊池風磨くんのtimelesz projectだって、一万何千人の応募者が書類審査で数百人まで絞られている。

文学賞での下読みは、風磨くんに会える一次審査通過者を決めるための審査を行う人だ。実際の文学賞で、風磨くん、つまりプロの作家に謁見できる作品はわずか数点なので、下読みによる選考→下読みによる選考…→プロの作家の審査という感じで、何度か下読みによってふるいにかけられている。

ここまでは「ところでお気に入りの作家さんってどうやってデビューしたの?」と思ってchat GPTに聞けばわかる前提だ。

逆に、chat GPTに聞いてもわかないことといえば、選考基準。文学賞によって選考基準は違うからこそ、文芸誌による特色のようなものも感じられる。

たとえば私は群像とか文藝とかの文芸誌が好き。で、この二つの雑誌には毎回いくつかの話がキュレーションされているわけだけど、なんとなく雰囲気が違くて、これは群像っぽい、これは文藝っぽい、とかぎ分けられる。

この特色なんかは、最終的な基準にはなるかもしれない。でも、一次、二次、三次、四次、五次…と審査を切り抜けられた先にある話だ。

どうやって一次審査を通過するか?

応募作は玉石混淆だ。この四字熟語だと、玉と石が半々くらいで入ってくるようなイメージだが、実際は無限に石が続く。下読みの多くは石の山を前に、どうしてだよ、どうしてもっと見直さないんだよ、という悲鳴をあげている。

ちゃんと推敲してますか?

つらい理由の一つは、「書けたので出しました」という姿勢がありありと伝わってくる作品が多い。いくらなんでも初デートの時に相手がパジャマで来たらガッカリする。誤字脱字、論理破綻、文量の配分ミス、構成の崩壊など、これらはパジャマデートなんだとわかってほしい。
待ち合わせ日時というか締め切りはわかっていたんだから、最低限、なんかの服着てきてよ見直してきてよと思う。

しかも初対面で、パジャマデートだからね…長年の恋人だったらお茶目だな、と思えるかもしれないけど、初手パジャマはちょっとキツイ。

ただこれが意外と難しいポイントなんじゃないかと思う。自分のことに対して客観的になるというのは難しいんだ。だからこそ、自分なりにどっからどう見てもパジャマに見えない工夫はしてみるべきだ。

あえてパジャマ着てます、気崩してますっていうのは、菅田将暉くらい戦略的に自己ブランディングしてからにするのがベターだと思う。となると、文体にまで話が及ぶので、大工事になるけれど。

読者は誤字脱字ですぐ離脱します

「歌詞忘れてるようじゃ無理か。歌詞はね、入れとかないと」

timelesz projectで風磨くんが言ったセリフ。ネットミーム化されて久しいですが、「歌詞忘れてる」に当たる部分が、小説においては誤字脱字、論理破綻、文量の配分ミス、構成の崩壊だろうと思う。表現方法、扱う内容もろもろを差し置いて、これらがあると、作者の意図通りに読めない。無理なんである。

誰からもまだ求められていない小説を書くのはきついと思う、つらいと思う。それこそ、「こんなのどうせ自己満足だよ」と思いながら、それでも勇気を振り絞って投稿してくれる人が大半だと思う。
でも本当に見てるから、下読みはちゃんと読んでいるから、だからどうか投げやりにならないでほしい。下読みには作者が工夫しているところも、しっかり伝わっているし、たとえ受賞や予選通過にならなかったとしても、下読みの頭の中には、候補作の断片が残っています。

ほんものに出会う瞬間は最高

これまで候補作を読んできて、「ほんもの」だと思う作品に出会ったのは一度だけ。その瞬間は、もう初めの数行を読んだだけで、すごいものを読んでいるという確信があった。

じゃあ何を持って私はほんものだと思ったんだろう。さっき言ったような文法的な正確さはもちろん巧みだ。そして、ほんものの文章には奥行きがある。

文学賞は文字数が決まっているものがほとんどで、みんな同じような長さの文章を書いてくる。
それなのに、読み手が受け取る情報量と感情の厚みはまったく違う。

ほんものの文章は、物語を読み通したときに、色々な思いや思考が自分の中で生まれている。それをじっくり解釈したくて、何度でも読み返したいと思う。本棚のスタメンにしたいと思う。友達にあげたいと思う。

ここまでくると、もうその人はプロになれる。読者というか、ファンがついた状態になっている。timelesz projectでも言っていた、ファンが応援したくなるかが重要なんだって。

ほんものの文章が持つ奥行きの正体。それをもっと細かくあれこれ言ってみたものの、なんだかどれもしっくりこない。ただ圧倒されるあの感覚。それがわかったら私は読書オタクとして、次のステージに行ける気がしている。

私が下読みを続けるわけ

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購入者のコメント

3
星乃夜衣
星乃夜衣

次作の参考にさせていただきます。ありがとうございます。
創作大賞中間選考は通過したので、待ち合わせ場所に服は着て行ったようですが、デートの相手に会えなかったみたいです。(今頃までに連絡がなければ無理だと思いますので)

文章の奥行きの正体、、、これは日本語特有の「行間を読む」に似ているかもしれませんね。やはり読者の感情を動かすことが重要なのだと感じされられました。頭ではわかってるんですが、なかなか難しいところです。しかし動かせなければお金にならないこともわかっています。

的確な記事、ありがとうございます。

晦

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下読みとしての経験もまだまだなので恐縮ですが、陰ながら応援しております🍀

みゆ☆生活保護脱出計画

はじめまして。突然のコメント、失礼します。
私は今年から文学賞の新人賞に挑戦しています。下読みさんがどのように作品を読んでいるのか、リアルな声を聞けてとても嬉しかったです。

読み手の心を動かせる文章、物語が作れるように頑張りたいと思います。

本当に貴重なお話を書いていただき、ありがとうございます😭

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毎年某文学賞の下読み委員の私が考える、「本当に読みたい小説」|晦
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