言っちゃだめなことを言え。
新潟在住の女性S様から「坂爪さんが初対面の女の人にお前は妖怪みたいだって言った話が大好きで、私も会ったら妖怪みたいだって言われるのかなって思ったらすごい怖かったけど、会うなら今しかないと思ってご連絡をいたしました」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。私に連絡をする人は勇者だと思う。何を言われるかわからないのに、それでも連絡をくださる。昨日は「女性を讃えよ」と言っていた男が、今日は「お前は妖怪みたいだからだめ」とか言う。めちゃめちゃなのに、みんなありがとう。俺は嬉しいよ。
S様は「坂爪さんに会う人は悩み相談をする人が多いのですか」と言った。私は「半分は悩み相談で、半分は怖いもの見たさだと思う」と言った。S様は「私は後者です」と言った。大酒豪のS様は、私に大量の酒を奢ってくれた。新潟の女は、海賊みたいな飲み方をする人が多い。屈強だし、カッコいい。冬の曇天に鍛えられているからだと思う。千葉の男と結婚した新潟の女は「千葉の男はぬるい」と言って離婚した。千葉のみなさま、ごめんなさい。私が代わりに謝ります。問題は新潟県民にある。新潟なんて日本からなくなっても誰も困らない。S様の趣味はカラオケスナックに一人で行き、そこの客に「お前も歌え」と絡むことだと言った。酒ヤクザのS様は「仕事が忙し過ぎるから飲まないとやってられない」と言った。
真面目と不真面目が同居している新潟の人々は、面倒臭いけれど愛くるしい。県民全員が陰険で、一丸となって「坂爪圭吾は新潟の恥だ」と爪弾きにするが、大谷翔平くらい有名になったら「俺は坂爪圭吾と同級生なんだぜ」とか言い出す。礼儀を重んじる癖に、礼儀だけの人間を見ると「お前は面白みのない人間だ」と心の中で断罪する。俺は新潟を許さない。故郷と取っ組み合いをする。そんな新潟県民も、酒を飲ませると可愛くなる。本性がだだ漏れになり「なーんだ、本当はみんなだめなんじゃん」と安心する。私は誰よりも陰険なので、今がチャンスとマウントを取る。相手の弱みを握り、相手の弱みにつけ込み、有利な方向に動かす。弱い人のマウントを取るのが趣味なので、吉本ばななさんのように強い人を前にした時は即刻自害。即刻媚びて、即刻権力におもねる。
序盤は礼儀正しかったS様も、終盤は「カラオケスナックに行くぞ。歌うのが恥ずかしいとか言ってんじゃないよ。それでも男か。◯玉ついてんのか。私の酒が飲めないとでも言うのか」くらいには暴れた。私が「お、お、お金がないから」と言うと、S様は「金なら私が出す」と言った。S様とは年齢が十個くらい離れている。私が年上で、S様は年下だ。年下なのにこの貫禄はなんだ。終いには「タクシー代を出すから付き合え。俺たちに明日はない。私は今日終わってもいいと思っている」と言った。怖い。新潟の女は強くて怖い。生粋のロックンローラーであり、生粋のアウトローだ。老後はアウト老になるのだろう。私の母がそうであったように、不埒な女になるのだろう。
麻雀とパチンコが趣味の母は、時間があるとパソコンを開いて麻雀をしている。母は「麻雀の勉強をしているんだよ」と言う。勉強熱心な母を、私は尊敬している。誰にも頼まれていないのに、母は毎日勉強をする。立派だなあ。努力家だなあ。お母さんは偉いなあ。俺も見習わなくちゃいけないなあ。母は、自分のことを欲たかりババアと言う。六十歳を超えた時に「俺は不良になると決めたんだ」と宣言して、臆面もなくパチンコ屋に行くようになった。アウト老の誕生である。アウト老は、人間としては間違っていると思う。人間としては間違っている坂爪家のビッグマザーには、どこまでも透きとおった明るく白い虚空がある。常人に見られるどす黒い翳りがなく、かすかに哀しみの風が吹いているのを感じるばかりである。この親にして、この子あり。アウト老になろう。
おおまかな予定
8月15日(金)新潟県新潟市界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
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