表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/248

第五話 混迷する世界

今回の話はセリフのない説明回なので、以下の事がわかっていただけたら読み飛ばしてもらっても構いません。


・世界中でいくつかのダンジョンからモンスターが溢れだした。

・政府で対応しようとするけど人も物も金も足りない。

・日本まさかの民間にダンジョンの間引きを手伝ってもらおうとする。

・ダンジョンとは別に貿易を邪魔する霧が海の上に発生。

・冒険者が職業になった。



第五話 混迷する世界


サイド 福矢 亮太



 夕方、とんでもないニュースがテレビで報道された。


『モンスターがダンジョンの外に出て来た』


 アメリカの山奥。普段人が出入りしていない場所で、ゴブリンと思しきモンスターが複数目撃されたらしい。ゴブリンは警察に通報した麓の住民を殺害。そのまま麓の小さな町で何人も殺してその死体を持って行ったらしい。


 すぐにその地域の保安官が警察を引き連れて急行。山の周りに警戒網をしいた。だが、範囲の問題で警察だけでは手が足りないと判断され、州兵への応援要請も出されたとか。


 そうしていると、麓の町に再度ゴブリンによる襲撃があった。その場にいた警察が迎撃したが、ゴブリン十五体に対し二十人の警察が銃を使って、警察官一人が大怪我をする被害が出たとか。


 ゴブリンと言えばゲーム序盤の雑魚敵だが、銃で武装し、また攻めてくるかもと警戒していた警察を相手に『戦いになった』という事実だけで驚いたし、恐怖も感じた。


 州兵が到着すると、すぐに山狩りが行われたらしい。その日の情報はそれで終わりだったが、どこの局も話題はそれでもちきりだった。


 続報が出たのは翌日の朝。山狩りを行った結果、山の中にいたゴブリンは殲滅を完了。出て来たと思しきダンジョンも発見したとか。


 だが、その際に州兵から死者が出たらしいのだ。それも十二人も。負傷者は三十人近いらしい。


 とりあえず今は州兵によりダンジョンの入口を監視中で、麓から重機を持って来てどうにかダンジョンの入口を塞ごうとしているらしい。


 最初は爆弾でダンジョンの入口を破壊しようとしたらしいが、どういう方法でも破壊は出来なかったらしい。銃をどれだけ撃ち込もうが、C4を使おうがだ。


 テレビではしきりに、『ダンジョンを発見したら速やかに警察に連絡。絶対に中に入ろうとしないでください』と呼び掛けていた。


 その呼びかけが正しく、同時に間違っていた事がわかったのは昼休みの頃だった。


 教室にいたクラスメイトが、スマホ片手に騒ぎ出した。何事かと思って聞き耳をたてれば、なんと長野県のある家でダンジョンからモンスターが出て来たらしいのだ。


 そのダンジョンは既に発見され、警察に通報済みだった。それは正しい判断だった。家主も中には入らなかったらしい。それも正しい。


 だが、そもそもダンジョンからモンスターが出てくるならそれだけでは間違いなのだ。警察は人員不足からダンジョン一つ一つを見張れないし、何かしら対策もしてくれなかったのだから。


 そのダンジョンから出て来たのは、人間大の二足歩行する赤いカエルだったそうだ。


 それが何十匹も出てきて、家主はすぐに逃げ出した後、警察に通報した。家主は大声を上げながら逃げたそうだが、近所の住民は不思議そうにするだけですぐには逃げなかった。


 それが運命の分かれ目だった。


 二足歩行のカエルたちが近隣住民を襲いだしたのだ。一人に対し何匹も群がって殴りかかり、カエルなのに存在する牙で人間を食べ始めたのだ。


 不幸中の幸いと言うべきか。カエルは見た目ほど強くなかった。レベル1なら素手でも数匹までならどうにか逃げられるぐらいだし、一匹だけならレベル0でも数人で挑めばどうにかなったそうだ。


 ただ、いかんせん数が多く住宅街だったこともあり、警察では手が足りなくなった。結局、市が自衛隊に救援を要請してどうにかなったらしいが、現在確認されている死者は十八人。行方不明者は八人。負傷者は五十人近いそうだ。まだ確認がとれていないだけで、増えるかもしれない。


 同様の事件が日本国内でも複数発生し、世界規模で見れば今日だけで百近い数そういった事件が発生したのだ。


 それから、世界中が上を下への大混乱だ。とにかくダンジョンを封鎖しろと大騒ぎになったのだが、残念なことに『不可能』となった。


 アメリカの山奥で発見されたダンジョンをはじめ、各地のダンジョンが重機によりコンクリートで封鎖される事になった。門を開けて中に流し込んだり、門を外から固めるようだったりだ。


 だが、内側に流し込んでも、何故か固めたコンクリートの壁に『扉』が出現したのだ。それをくぐると、コンクリートの向こう側につながっているらしかった。


 外側から固めた場合は、なんとその固めたコンクリートにダンジョンの入口が現れた。


 そんな報告があっちこっちからされ、世界中とにかくどうにかして塞ごうと躍起になった。


 とりあえず、ダンジョンの入口に直接触れないようにスペースをとった位置からコンクリートを固めるという状況にいたった。だが、再度のダンジョンからのモンスター出現。コンクリートを削って外に出て来たのだ。


 モンスターが出てくるダンジョンと出てきてないダンジョンがあるし、今の所出てくるダンジョンの方が圧倒的に少ない。だが、人間にモンスターが出てくるダンジョンの見分け方なんてこの段階でありはしないのだ。


 しばらくの間テレビではひっきりなしに『どこでダンジョンからモンスターが出てきた』とか『あそこでダンジョンが発見された』とかのニュースばかりになった。


 当然ながら、ダンジョンが現れた場所は皆避けるようになった。そして、ダンジョンから逃げるために引っ越したい人たちでどこもてんやわんやだが、国が金銭や一時的にでも住む場所を支援するのは結構後になってからだった。


 いつもの与党野党の怒鳴り合い野次の飛ばし合い足の引っ張り合いである。


 不謹慎かもしれないが、うちの市ではダンジョンは発見されていないし、どこか他人事めいた空気が学校中で広がっていた。自分もその一人だった。


 とにかく、各国は警察や軍隊でダンジョンをどうにかしようと動き出した。だが、ゲームで言う『ダンジョンコア』的な物は存在せず、『ボスモンスター』らしきモンスターを倒してもダンジョンからモンスターが消える事もないし、なんならボスモンスターも時間が過ぎれば勝手に復活した。


 今の所、人類にダンジョンを消す方法はない。


 だが、ダンジョンからモンスターを出さない方法は、一カ月ほどで発見された。正確には、出さないというより『漏れ出ない』ようにだが。


 警察や軍隊でダンジョンを探索していれば、当然モンスターを倒しながらとなる。そうしてモンスターの数を削っていたダンジョンは、モンスターが溢れだす事はなかった。


 つまり、『ひたすらモンスターの数を減らせばとりあえず外には出てこない』とわかったのだ。


 なんでモンスターが増えると外に出てくるのかはまだわかっていないが、とりあえずの対処法はわかった。だが、次の問題が出て来た。


 どこの国も人手も物資も何もかも足りなかったのである。


 警察や軍隊だけで、やたらあるダンジョンの間引きとか全然間に合わない。というか、中には『ドラゴン』とかが出るダンジョンだってあるのだ。歩兵の装備ではどうにもならない。


 フランスでドラゴンが街中に出て来た時など、地獄絵図だった。ダンジョンの外に出た三匹のドラゴン。そう、たった三匹だったのだ。


 その三匹だけで、一時間もしないうちに街は火の海になった。


 最終的にドラゴンたちは緊急発進した戦闘機に殺されたが、それまでの間に二つの街が燃え尽きたそうだ。


 そういう大型のモンスターがいたりするダンジョンは入口も広いので特殊車両を中に入れる事が出来たので、戦車や装甲車。天井がやたら広いところだと戦闘用ヘリを持ち込んで間引きをしているところもあるらしい。


 とにかく、金も物も、なにより人手を必要とするのがダンジョンだ。どこの国もとりあえずドラゴンとかやばいモンスターがいるダンジョンを優先して対応しているのだが、その分ゴブリンやコボルト、二足歩行の赤いカエル『レッドフロッグ』といった弱いモンスターのダンジョンは入口にバリケードをはるぐらいが精々だった。


 今はまだそこまで頻繁にダンジョンから溢れてくることはないが、時間の問題だとは誰もが思っていた。


 どこの国も国民が『政府が何とかしろ』と叫んだが、結果的にそのデモ隊への対応で警察をまわす事になって逆効果に。


 そんな中、アメリカで傭兵を雇って彼らに比較的弱いモンスターのダンジョンを間引きさせる事が決定された。また、モンスターの死体を活用できないかと死体の食用化など色々な事が検証されるようになった。


 アメリカに続けと世界中の国がそういう方向で動きだしたのだが、これに日本をはじめ一部の国はかなり困った。


 日本、傭兵とかいないのである。


 ダンジョンに送り込めそうな戦力が警察と自衛隊しかない。そして両方とも人員も予算も足りない。


 じゃあどうすんのとなったわけだが、海外から戦力を引っ張ってくる伝手も金もない。というか金に関してはダンジョンどうこうのせいでえらい事になっているから本当にヤバい。


 結果、まさかの『民間によるダンジョンの調査を許可』となったのだ。


 これまた当然ながら、国民からは大反発。その時の総理は辞職する事になったのだが、これが世界中の国々で採用されるようになり、『成人している人で国が発行している探索者免許を持っているならダンジョンに入っていい』となった。


 ネット上ではこうしてダンジョンに入る人たちの事を冒険者と呼ぶようになった。


 だが、その冒険者になりたがる人はかなり少なかった。というのも、モンスターを食用にと言っても検査中の物ばかりだったし、ダンジョン内の物を持って帰ってもそれが売れるのかどうかもわかっていなかった。


 まあ、失業者は多かったので、そういう人達を送り込んでいく事になったそうな。


 これらの事が半年であった。政府の対応がやたら早かったとも思うが、逆に言えばそれだけ自衛隊だけじゃ対応しきれない問題だったという事だ。


 そして、この半年で新たな問題も発生した。『原因不明の霧』である。


 世界各国の国境近くに現れたこの霧。どういうわけか霧の中では電子機器の類がまともに機能しなくなり、普通の霧と比べて異常なまで人間の方向感覚も狂う。その結果、霧に入った場所に戻ってきてしまうのだ。


 今はまだ霧の範囲はそこまで広くないが、徐々に広がってきている。もしかしたら、どこの国も外国に行く手段がなくなるかもしれない。もしもそうなったら、本当に日本は干上がってしまうだろう。


 レベルだのダンジョンだのと浮かれていた世間だったが、今は暗い空気が漂い始めていた。





読んでいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。