“勾留322日” 大川原化工機えん罪事件…なぜ起きた?社長「がんと診断されても保釈されず、おかしいと思った」「証拠が全部出ても勾留期間を伸ばしていた」
機械メーカー「大川原化工機」の精密機械不正輸出をめぐる冤罪(えんざい)事件で、警視庁の鎌田徹郎副総監と、東京地検の森博英公安部長が、不当な捜査を謝罪した。警視庁公安部と検察の捜査が違法だったと認めた東京高裁の2審判決を受け、国と都は今月、上告を断念。警察庁も再発防止に努めるとしていた。 【映像】勾留中にがん発覚…生前の相嶋静夫さん(複数カット) ことの発端は、2020年に大川原化工機の大川原正明社長や、顧問の相嶋静夫さんら3人が、警視庁公安部に逮捕、起訴されたことだった。液体を短時間で乾燥させ、粉末や顆粒にするスプレードライヤーを、中国へ不正輸出した疑いだった。 この機器は食品や医薬品の製造に広く利用されているが、一部の製品が軍事転用できるとして、輸出が規制されている。その規制条件の一つが「製品の内部で滅菌・殺菌できる」というもので、警視庁公安部は製品がこの機能を有しているとして、不正輸出としたのだ。しかし大川原化工機側は、実験を繰り返し、製品内部で滅菌・殺菌が不可能であることを証明。これにより初公判の4日前に、検察は起訴を取り消した。 大川原化工機側は、違法捜査で逮捕・起訴されたとして、国と東京都を相手に約5億7000万円の損害賠償を求め提訴した。その裁判の中で、捜査に当たった警視庁公安部の捜査員自ら、事件が捏造(ねつぞう)だったと証言した。 今回の冤罪事件では、長期間の勾留を強いる“人質司法”も浮き彫りになった。逮捕・起訴された3人のうち、相嶋さんは勾留中にがんだと判明し、十分な治療が受けられないまま、釈放後に亡くなった。この冤罪はなぜ起きたのか。『ABEMA Prime』では、大川原社長と担当弁護士とともに考えた。
■警察謝罪するも社名、人名の呼び間違え…
大川原社長は、今回の謝罪について、「我々としては、来てくれたことに対しては、一応の評価をしている。我々だけでなく、従業員の前で謝罪してくれたことは良かった。ただ、もう少し突っ込んだ内容の謝罪にして欲しかった」と語る。 謝罪の場では、森公安部長が社名を「大川原化工機工業」、鎌田副総監が元取締役の島田順司さんを「ヤマモト様」と呼び間違えた点も話題になった。「社名や人名を間違えるのは仕方がないが、通常の謝罪時には文章を書いて持っていく。神道の祝詞(のりと)も、文章にして、話をして、渡すのが通常だが、それがなかった。形式的なものを作るのが、謝罪の1つの意味だ」。 大川原化工機の担当弁護士である高田剛氏は、「警視庁も東京地検も、まだ事実を検証していない。裁判所は捏造を半ば認定したが、東京地検や警視庁自身が認めているわけではない。そのため、現時点でできる謝罪は『捏造してごめんなさい』ではなく、抽象的な『ご心労をかけました』になる。我々の『捏造を謝罪しろ』という要求と温度差が出るのは仕方ない」との見解を示す。