第81話
「……」
子の成長……か。
前世で両親と妹が事故で亡くなった時、俺はただ淡々とその説明を聞いていた。まるで他人事……どこか遠いところの話しのように。
葬式の時も親戚の人達が色々とやってくれてる中でぼうっとしていた。
あの時、自分が何を思っていたかは余り思い出せない。
住んでいた家を出て親戚の伯父さんの世話になることをすすめられ、特に何も考えずに了承した。
だが、遺品整理をしている最中に両親がつけていた日記を見つけた。ただ、なんとなくそれを開いて読みすすめていって……父さんと母さんが……俺と妹をとても愛してくれていたことを知った。途中から涙が止まらなくて、泣きながら読んだ。
妹が俺が誕生日に上げた安物の髪飾りを大切にしていたことを知ってまた泣いた。
多分……その時にハッキリと家族を失なったことを認識したんだと思う。
俺は親戚の伯父さんに頼みこんで、色々と条件を付けて家に住み続けることを了承してもらった。
……ただの思い出だとしても、離れたくなかったから。
俺はダルテの遺体をシーラの墓の横へと埋葬することにした。
あまり遅くなるとエミリアも心配するかもしれない。だが同じニナの”おとーしゃん”としてこのまま野晒しにしておきたくはなかった。
家の方も片付けたかったが流石に時間が足りない。
少し広めの穴を掘り何回かに分けて白骨化した遺体を運ぶ。その途中で遺体の下に落ちていたロケットペンダントを見つけた。
ダルテの物だろうか?
壊さないようにゆっくり拾い上げると、ちゃんと閉まってなかったのかペンダントの蓋が開いた。
その中には赤子を抱いて幸せそうに微笑む眼鏡をかけた人の良さそうな男と、髪の長い優しそうな女性が写っていた。これがダルテとシーラ、そしてこの赤子がニナ…か。
一見すれば何処にでも居そうな幸せそうな親子。だが女性の方はかなり痩せ痩けていてかなり不健康そうだ。
この世界には写真は無いが、似たようなものを作れる記録石という魔石がある。
ただ、流通量が少なく使い捨てなために余り売っている所をみない。例え売っていたとしても直ぐ売り切れてしまう。
ダルテも記録石を手に入れるのは簡単ではなかった筈だ。
日記にはニナが産まれてすぐにシーラは病気で亡くなったと書かれていた。ならばこの時既に……。
この二人はきっと家族として過ごした日々をなんらかの形で残したかったのかもしれない。
俺はダルテの手にペンダントを握らせる。そしてその上から土をかけていく。
……ニナのことが心配だろうがゆっくりと眠れ。
土をかけ終わり、そこにマジックバッグから取り出した魔石を墓石代わりに置く。
置いた魔石にダルテが掛けたであろう認識阻害の魔法を俺の魔法で上書きする。
この場所に誰も立ち入ることのないように。
祈ることはしない。
俺にはその
「……後は任せな」
そう言ってその場所をあとにする。
お前の無念は俺が晴らしてやる。子供の成長を見守りたいという細やかな願いを踏みにじった奴等を生かしてはおかん。
まだまだ気になることは多いが、幾つか見えてきたこともある。
推測だが”女神教”の目的はニナだろう。
ニナが何かしらのスキルを持っていて、それを”女神教”が探していると考えれば。
どうやってニナがこの場所からバストークへ移動したのか気になってはいたが、それもスキルによるものだとすれば……。
明日の”取り引き相手”とやらも見えてきた。
人攫い、人体実験、ダルテの殺害したニナを狙う敵。
どうすればいいか、なんて考えるまでもない。
―――――
「悪い。待たせたな」
「ああ、お帰りグレイ。……随分遅かったな」
エミリアのところへ戻る頃には日もすっかり落ちていた。かなり遅くなってしまったからか、やはり心配そうなエミリア。
「……すまん」
「グレイ」
俺があの家のことをどう説明しようか悩んでいると途中でエミリアが話しかけてくる。
どうしたのかとエミリアの方を見ると
「あそこで何を見つけたかはわからないが……話し難くてもありのままのことを教えてくれ。心配しなくても他言はしないし、任務に私情は挟まないようにするから。……できるだけ」
俺を真っ直ぐ見つめながらそう言った。
いや……俺がかなり私情を挟んでしまっているんだが。
「ああ、わかった。実はな……―」
――――――――――
記録石
『ブライトファンタジー』のセーブ用アイテム。
後にとある鉱山から大量に発掘され、割りと安価で手にはいるようになる。
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