第79話


 それから次はないということを人攫いどもの体にしっかりと教え込んだ。

 やりすぎたらあとで確実に怒られるからちゃんと手加減もした。


 こうなることはわかっていただろうに。何故この手の輩は自ら死に急ぐようなことをするのだ……全く理解できん。


 そもそも俺がコイツ等の思惑通りに擬態虫ミミックに殺られたとして、その後は手足を縛られた状態で一体どうするつもりだったんだ……?

 一人一人喰われていくのを悲鳴をあげながら眺めるだけな気がするんだが。


 先ほどの反応を見るに、俺に殺されるぐらいなら魔物に殺される方を選ぶ…という訳でもなさそうだし。

 まさか何も考えてなかったなんてことはないよな…?


 そこからは時折人攫いどもの呻き声が聞こえるだけで静かなものだった。

 その後、俺の予想より遥かに早く戻ってきたエミリアにこの惨状について説明すると。


「グレイを罠に嵌めようとした? ……こいつ等はまだ自分達の立場が理解できていないのか? 愚かな」


 そう言って人攫いどもを睨み付ける。

 対してすっかり大人しくなった人攫いどもは下を向いたまま、一言も話そうとはしない。


「そういえばかなり早かったがギルドの方は何か言ってたか?」


「ああ、全力で走って戻ってきたからな…。ギルドの方は予想通り増援を申し出てきたがDやよくてCランクではな……彼等に何かあっても責任はとれないし、丁重に断っておいた」


「そうだな」


 やっぱりか。

 足を引っ張るかもしれないと分かっておきながら自分のところの冒険者を送りこもうとしたのは実績作りか、もしくはバストークの冒険者ギルドに恩でも売ろうとしたのか。


 くだらん。


「そういえば……移動途中で少し気になる場所を見つけたんだが」


 思い出したようにそう話すエミリア。


「気になる場所?」


「ああ。木々の間に小屋のようなものを見かけた。しかも……その、うまくは言えないのだが違和感を感じたんだ」


 少し歯切れの悪い言い方をするエミリア。

 こんな森の中に小屋? まあそれ自体に違和感があるのだが……。


「正確な位置は覚えてるか?」


「ああ、それは大丈夫だ。調べるのか?」


「取り引きの時間にはまだ余裕があるし、空もまだ明るい。一応調べておいた方が良いだろう。戻ってきたばかりで悪いがエミリアはコイツ等を見張っててくれ」


 流石に拘束しているとはいえ、人攫いどもから目を離す訳にはいかないからな。俺かエミリアのどちらかはここに残らなければならん。

 何もなければそれはそれで良いしな。


「なら私が行こうか?」


 俺が準備を始めるとエミリアがそう申し出てくる。


「いや。エミリアが感じた”違和感”とやらが魔法関係だとしたら俺が行くべきだろう」


 エミリアは魔法関連にはあまり詳しくはないしな。適材適所だ。


「わかった……気をつけてな」


「ああ、行ってくる」


 少しだけ心配そうにするエミリア。

 ……普通に俺の身を心配してくれてるのだろうが「小屋に人が住んでいたら、野盗に間違われるのではないか?」という心配をしているような気もする。

 いかんな…久々に子供達に怖がられたことを引き摺ってるのかもしれない。


 因みに俺の魔法や魔導具に対する知識の大半はフロイメールに叩き込まれたものだ。

 剣士としても、魔法使いとしても中途半端だった俺はできることは全て身に付けていった。


 射手アーチャーのロイとは斥候スカウトについて夜遅くまで語り合ったりもした。

 まあ大概は脱線して飽きない夜営ご飯の話なんかになっていたが。



「ここか」


 エミリアに教えてもらった場所は割りと近く、人攫いどもの居た広場から歩きで30分とかからない距離だった。


 成る程、確かにかなり弱いが幻惑魔法のようなものが掛かっている。

 幻惑といっても普通の人間が近くを通りかかっても、この場所には気がつかない程度のものだ。認識阻害…とでもいえばいいか。


 普段から魔法に接していれば、魔法が全く使えないエミリアにもアッサリと見つかる。そんなレベルだ。


 しかしわざわざこんな場所に小屋を建て魔法まで……この先になにか隠しておかなければならないものでもあるのだろうか?


 俺は警戒しながら進んでいくと…



 そこには小さな家と


 白骨化した遺体があった。


 ――――――――――


 因みにロイはエルフ。

 全体的なスペックは悪くないけど劣化ハルサリアみたいな感じ。ただ魔法と料理では勝っている。


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