第78話
…子供達のことを考えてたら無性に会いたくなってしまった。
恥ずかしがるイスカやフィオの頭をワシワシ撫でたりニナ、ステラ、ラッツに抱っこを要求されたり、アリアメルと一緒に料理したりしたい。
……お昼寝する三人に絵本を読んであげたい。
”取り引き”の時間は明朝で場所もこの森の中のだからまだ時間には余裕がある。
エミリアがギルドへ攫われてきた子供達を送り届けるついでにその情報も報告する手筈になっている。
そして恐らくギルドは増援を提案してくるだろうが、それについてはエミリアに任せている。敵の規模がわからない以上は戦力が多いに越したことはないが……それはあくまでも”戦力”として数えることができる場合だ。
いくら緊急だからといって誰でもいい訳じゃない。足を引っ張られたりしたらたまったもんじゃないしな。
せめて……あまり言いたくないが『血斧』ぐらいの実力があればな。ガンザス達はああ見えて連携力だけは抜群に良い。個々の能力は微妙の一言に尽きるが。
それでもチームとして動けばある程度の格上とも渡り合えるだろう。
「な…なあ」
「あ?」
俺が腕を組んで考えごとをしていると人攫いの一人が声を掛けてくる。その顔には鼻や口から出た血が乾いて貼り付いている。
「み、水を……もらえねぇか?」
「……」
水…ねえ。
その言葉に他の人攫いどもも顔をこちらへと向ける。
「なあ頼むよ」
そう言ってその人攫い達は少し離れた場所にある、大きな蓋のされた瓶をチラチラと見ている。
「仕方ねえな」
「へへ……すまねぇ。恩に着るよ」
「んで?」
「…へ?」
俺は立ち上がり、間抜けな面でポカンとしている人攫いの男へと近づく。
「水はさっきからテメェ等がチラチラ見てるあれでいいのか?」
そう言って並べられている瓶を指差す。
「あ、ああ! そうだ」
「本当にいいんだな?」
「だからそう言っ「わかった」」
俺は相手の言葉を最後まで聞くことなく、男の腕を掴んで瓶の方へと放り投げた。
何が起こったかわからないという表情のまま空中を飛ぶ男は、自分が指定した瓶へとぶつかり地面へ叩きつけられる。その衝撃で瓶は倒れ、蓋が外れた。
背中の方から何人かの短い悲鳴が聞こえた。
「っ……う…ゲホッゲホッ……なにしやが……あ」
肺を打ったのか、むせながら顔を上げた男が蓋の開いた瓶を見て顔を青くする。
因みに倒れた瓶からは水は一切こぼれていない。まあそもそも最初から水なんざ入ってねえからな。
「ひ、ひいっ……た、たすけ…」
顔を青くした男は縛られた状態で、芋虫のように這って瓶から必死に距離をとろうとする。
だが
その瞬間、瓶の中から四本の昆虫の脚のような物が凄いスピードで伸びて、男を捕らえると瓶の方へと引き摺り始める。
男は悲鳴を上げながら体をよじって必死に抵抗するも、アッサリと頭を瓶の中へと引き摺りこまれてしまう。
少しの間足をバタつかせて暴れていたが、ゴリッという音とともに一度ビクリと体が跳ねてから動かなくなった。
何かを咀嚼する不快な音が鳴ると、後ろに居た人攫いの何人かは、その光景を見て悲鳴を上げたり吐いたりしていた。
やっぱ
ダンジョンの宝箱に擬態して間抜けな冒険者に襲いかかるようなイメージがあるだろうが、
蓋がしてある状態だと基本的には大人しく、開けてしまうと近くにいる動くものに見境なく襲いかかる。
だからずっと放置していたんだが……。
厄介な寄居虫だな。
そして
ある程度距離を詰めると、先ほど男を捕らえたように俺に向かって四本の脚を伸ばしてきた。
「クク…相手が悪かったな。
その脚の一本を掴んで逆にこちらへと無理矢理引き寄せてから、瓶の中へ直接魔法を撃ち込んだ。
その衝撃で瓶が割れて、中から火ダルマになった
暫くヨタヨタ移動すると、ギィィッと不快な断末魔を上げながら仰向けになり、脚を折り畳むようにして動かなくなった。
完全に動かなくなったことを確認してから魔法で一応消火しておく。
「テメェ等あの瓶の中に
俺はゆっくりと人攫いどもへと振り返る。
「俺を罠に嵌めようとしやがって……大人しくしてりゃあ少なくとも明日までは大人しく反省する時間があったのによ。どう落とし前をつけるんだ? あ?」
俺の顔を見た人攫いどもは
……確かに怖がらせる意図はあったが、これじゃまるで俺が魔物より怖いみてえじゃねえか。
――――――――――
出待ちしている胸糞、鬱展開をお父さんが襲う!(誤字ではない)
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
あと、前話の「このよおな」は一応わざとです。読みにくいなら修正します。
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