兄の愛が法を動かした!元KARAク・ハラ…巨額の遺産は誰のもの?「ク・ハラ法」とは
2024年8月28日、韓国の国会で「ク・ハラ法」が可決された。一体なぜ、彼女の名前が付けられたのか?再現ドラマで紹介した。
K-POPの日本での人気のきっかけの一つとなったグループがKARAだった。2008年、KARAのメンバーとしてデビューしたク・ハラさん。人気は日本でも爆発し、様々なメディアに引っ張りだこに。しかしその後KARAは事実上の解散状態となった。
2018年9月13日深夜、警察に一本の電話が入る。顔のいたるところに傷があった男性は、恋人から暴行を受け通報したという。
その恋人とはハラさんだった。彼の話によると、この日2人は別れ話をしていたというが、突然ハラさんが暴力を振るってきたという。
その後の警察の捜査によりある事実が明るみに出る。
事件の2日前、仕事の合間に食事をしていると彼から連絡が入った。この日はマネージャーの他にもう一人男性スタッフがいたが、過剰に心配されるのを恐れ、そのことはあえて言わなかった。
すると、マネージャーにハラさんの彼氏から電話がかかってきた。マネージャーが「今はハラと男性スタッフだけですから大丈夫ですよ」と答えると、彼は怒りの表情になった。
2日後の9月13日深夜0時過ぎ、ハラさんが自宅で寝ていると突然彼が来て「なんでマネージャーの他に男がいたことを言わなかったんだ」と詰問し、暴力を振るった。
すると、彼はスマホを取り出し「今からこの動画を芸能記者に送る」と言った。それはハラさんの裸が映っている動画だった。
事件から1か月後、ソウル中央検察は男性を傷害に加え、映像で脅迫した疑いなどで起訴。一方、ハラさんの行為は正当防衛だったと不起訴になった。
裁判でハラさんはプライベート動画の存在を自ら認めて真っ向から戦った。
男性は暴行、脅迫で禁錮1年6か月の有罪となったが、脅迫に使われた動画に関しては、2人は恋人関係だったことから「意思に反して撮影されたわけではない」と判断され3年の執行猶予がついた。
アイドルである彼女は被害者でありながら責められた。だがハラさんは吹っ切るかのように精力的に活動。日本で全国ツアーを行い大成功に終わった。ツアーが終わり、韓国に一時帰国。そして2019年11月23日、彼女はSNSに「おやすみ」と投稿した。
その翌日、ハラさんは自宅で亡くなっているのを発見された。28歳だった。自ら命を絶ったと報じられている。
彼女の死に最も心を痛めた人物は、ハラさんの兄、ク・ホインさん。二人は幼い頃からどんなに辛いことがあっても互いに支え合い、生きてきた。
1991年、韓国南西部にある光州市で生まれたハラさん。ハラさんが9歳の時、子どもたちに別れも告げず母親が家を出て行った。
その後父親は2人の子供を養うため出稼ぎに行き、その間、子供たちは父親の妹夫婦の元に預けられることに。その夫婦にも2人の子供がいたが、分け隔てなく大切に育てられた。
ハラさんは2008年、KARAの追加メンバーオーディションを勝ち抜き、見事メンバーに選ばれる。しかしKARAの活動休止後の2017年、ハラさんは様々な不安からか心を病み、うつ病と診断され、さらに母親に捨てられた夢を頻繁に見るようになった。
通っていた心療内科からは「一度お母さんに会ってみては」という提案があった。ハラさんは叔母に相談し、叔母は母親に連絡をとった。
ハラさんが自宅を訪ねていくと、17年ぶりに見る母親は笑顔で迎えてくれたが、そこには近所の人たちが集まっていた。母親は「私が有名人ク・ハラの母よ」という振る舞いだったという。
ハラさんが亡くなったのち、その母親は葬儀の最中に現れ「私が喪主を務めます」と言い出した。韓国では家族だけが着る喪服がある。それを着て自分が喪主を務めるという。
さらにハラさんの葬儀から2日後、兄の元に母親の弁護士だと名乗る人物が現れ、「ハラさんの遺産に関してですが、彼女には配偶者やお子さんがいませんので、半分はお父様、そしてもう半分はお母様が相続することになります」と言う。
兄は「ずいぶん前に親権を放棄していると父から聞いています」と反論。実は、母親が家を出てから6年経ったある日、裁判所で正式な離婚の手続きを行った。その際に母親は子供のことに関しては一切聞いてこず、親権も放棄したという。
韓国の法律では配偶者や子供がいない人の遺産は、原則として両親が5対5の割合で相続すると定められている。別の人と再婚していても変わらず5対5の権利があり、例え親権を放棄していてもその効力は失われない。
2020年7月、裁判が始まった。兄は、ハラさんの遺産で育児放棄され苦しむ子供たちを救う財団を設立することを決意していた。
対して母親は「私は家を出た後も子供たちのことを常に思っていました。ハラは私がこのお腹を痛めて生んだ子です。私にはあの子の遺産を相続する権利があります」と答えた。
また、母親との裁判が始まる直前から、兄は韓国の国会で「ハラと私のような悲劇が再び起きないように『ク・ハラ法』を成立させたいと思っています。それが愛する妹のために私がしてあげられる最後のプレゼントだと思っています」と訴えていた。親として責任を放棄した場合、その親は相続を受け取る権利が一切なくなるという法律を作ろうとしたのだ。
母親との遺産を巡る審判の日、裁判所が下した審判は父親側が6割、母親側が4割を相続するというもの。自分達を捨てた母親にハラさんが必死になって貯めたお金が4割も渡る。兄にとっては到底納得いかない結果だった。
母親との裁判から約4年。去年の8月28日、ク・ハラ法は国会を通過。来年の1月から施行されることになった。
最愛の妹を失って6年。兄は今でも深い悲しみに襲われることもあるが少しずつ前を向いているという。また、ハラさんが所属していたKARAは2022年、かつてのメンバーが集まり再始動。そして去年8月、9年ぶりに日本でコンサートツアーを開催した。
