その指は美しき死に触れた


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第六話


アグライアがゼノスを仲間として受け入れることを決めてからしばらく経った頃、アグライアはトリビーを通じて黄金裔全体に通達を出して全員をピュエロスへ招集した。

 

「アグライアが全員を招集するなんて、珍しいな。一体なんだろう?」

「どうせくだらん要件だろう」

「その通りです。……全く、私が研究を中断してまで足を運ぶ価値があるのかどうか」

「えっ、アナイクス先生!?」

 

アグライアを待つファイノンとモーディスの目の前に現れたのは、神悟の樹庭の大演者(ヒュポクリテス)と呼ばれる学者にして黄金裔、アナイクス改めアナクサゴラス。

彼もまたモーディスと同じようなうんざりとした顔でピュエロスにやって来た。

アグライアと仲の悪いアナクサゴラスが何故ここまでやってきたのか、それは、心の底ではトリビーが直々にアグライア直筆での招集を伝えた時点で尋常な要件ではないことは分かっているからだ。

 

「先生と、ファイノン様とモーディス様。皆、呼ばれたのですね」

「キャストリスさんは、今回の招集の目的は知っているかい?」

「……わかりません。ですが、私に届いた手紙には、『キャストリスは必ず出席するように』と念を押されていました」

「──それならもしかして、タナトスの居場所がわかったのかもしれない!」

「それならば、キャストリス一人を呼べば良いだろう」

 

モーディスの言葉にファイノンが黙り込んだ。

するとそこに、昏光の庭の医師である黄金裔のヒアンシーが駆け込んでくる。

 

「すいません、ちょっと遅れちゃって!もう始まってますか!?」

「まだだよ、アグライアも姿を見せていない」

 

その時、ちょうどアグライアが姿を現した。

 

「皆さん、お待たせしました。今日集まってもらったのは他でもない、私たちにとって最後の新しい仲間のことです」

「新しい仲間……?でも、新たな黄金裔はもう長いこと現れてない」

「……えぇ、ですから彼は黄金裔ならざる者です。黄金裔でない者でありながら、火を追う旅に加わる為に相応の対価を払った。故に、彼を私たちの最後の新たな仲間として迎えましょう」

 

アグライアが手招きをすると、その後ろから紫の外套に身を包んだ男が歩いてくる。

彼が自らの顔に影を落としていたフードを取り払った時、モーディスの背後にいたキャストリスが彼を押し退けて男の元へと走った。

 

「ゼノスさん!……良かった、無事で良かったです」

「長らく待たせたな、すまなかった」

「謝らないでください、また会えただけで充分ですから」

 

キャストリスは彼の手を握りしめた。

瞬間、その場にいた殆どの人間が驚いた声を上げたが、彼の身には何も起こらず、それどころかキャストリスの手を握り返した。

 

「──アナクサゴラス、あなたを呼んだ理由はわかりましたね?」

「えぇ、十分に。そこのあなた、名前は?」

「ゼノス、そう名乗っている。生まれてからの記憶は捨ててしまったようだからな」

「そうですか。……あなたは今後、一時的に神悟の樹庭が身分を保証しましょう。その代わり、私の実験に可能な限り協力するように、良いですね?」

「願ってもないことだ、よろしく頼む」

 

こうして、ゼノスは火を追うたびに加わることになった。

 

「……貴様ら、俺を忘れているな……っ!」

 

押し除けられたモーディスは、戻ってきた直後そう唸ったという。

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