天宮のバルネアにて、一人の男がアグライアと相対していた。
重い沈黙を破るのはアグライア、彼女は男の一挙手一投足を注意深く観察しながら彼に近づいた。
「まず、貴方と約束を交わした少女は、現在どのような身分にいるか知っていますか?」
「黄金裔だろう?知っている」
「知っているのなら、私が何を言いたいのかについても理解できるはずです」
「“これから永く生きることになる黄金裔にとって、定命の友はその心に傷を残す足枷にしかならない”、と言いたいんだろう。俺も同意見だ」
「……なら───」
「だが、俺は違う」
アグライアは目を細めた。
それが、ただの強がりであるのなら心の底で恐怖や緊張が現れ、それが金糸を通じて伝わるはず。
だが、目の前の男にはそれがない。
まるで自分がこれから黄金裔になれるとでも信じているかのようだ。
「黄金裔は、後天的なものではありませんよ」
「知っている。だが、俺はお前たちと同じだけの時を生きると誓おう」
「……おかしなことを言いますね。貴方はただの人間では?」
「キャストリスから、俺の謎について聞き及んでいるだろうか?……もっとも、彼女は気がついていないかもしれないが」
「いえ、キャスから聞く貴方は、常に穏やかで理知的な雰囲気……毒を抜いたアナクサゴラスのようだったと」
アグライアはほのかに顔を顰めながらそう言った。
「それは確か、神悟の樹庭の学者の名だな?そのような高名な人物と並べられるとは光栄なことだ。……話を戻すが、俺の出自にはただ一つの謎がある」
「喪失した記憶ですね?」
「違う。それも確かに謎ではあるが出自に関係するか怪しい。それよりもさらに明確なものがひとつ。俺は如何にしてエイジリアに辿り着いたと思う?」
その問いに、アグライアは首を傾げた。
「その話はキャスが語ってくれましたよ。記憶喪失の状態でエイジリアに辿り着き、それを理由に庇護を求めた。そうですね?」
「しかし、エイジリアは雪に囲まれた都市だ。そんな場所を防寒具なしで長い間歩き、なぜ生きてエイジリアへ辿り着けたと思う?」
「……貴方は、ただの幸運で私たちと同じほどの時を生きられると言いたいのですか?」
「違う、明確な理由がある」
ゼノスは、ここへと来る際に持っていたクレムノスの大剣を取り出した。
身構えたアグライアの目の前で、大剣は微かな音を発しながら黄金の粒子となって消えた。
その瞬間、アグライアは自身の金糸に
「っ!」
「……落ち着け、質の悪い模造品だ」
「なぜ、貴方がそれを?」
「先ほどの大剣を対価に呼び寄せた
彼は一歩前へ踏み出し、右手を左胸に添えて宣誓のように言う
「俺は……エイジリアへ辿り着くより以前の記憶を焚べ、不老の身体を求める」
青白い炎がまとわりつくように彼の体を覆い、彼は膝を突く。
苦悶の表情を浮かべた彼に纏わり付いた炎は、一分ほど彼の体を焼き続け、その後に前触れすらなく消え去った。
「……それが、貴方の力なのですね?」
「その通りだ。──さぁ、アグライア。これで俺は不老にして不滅の肉体を得た。お前たちの隣に並ぶにふさわしいはずだ」
「……なぜそこまで」
そう聞かれた男は、一度深呼吸をしてアグライアの目を見つめ
「