YOSHIKIは“違法性”を匂わせ『ダンダダン』に苦言も…“芸能人パロディキャラ”に「事前の許可」は必要か?
芸能人パロディに原則として許可が「不要」なワケとは?
芸能人でも一般人でも、人は誰しも他人に自分の肖像を無断で、あるいは不当に利用されない権利を持っている。いわゆる肖像権と呼ばれるものだ。 しかし、芸能人や歌手などの有名人の場合、その職業性質上、社会からの関心の対象となることは必然である。そして、表現の自由を重視する観点から、芸能人等の肖像については、社会の関心に応えるための表現行為においては、ある程度は利用される必要性・正当性がある、とされている。 つまり、芸能人は一般人よりも肖像権が制限されており、肖像を利用されることを基本的には受忍しなければならないのである。 その代わりに、彼らは一般人にはない権利として「パブリシティ権」を持っている。これは、有名になった自分の肖像や氏名が持つ顧客吸引力をコントロールできる権利である。 一般に、芸能人等が自分の肖像等を無断で商用利用されたときに主張する権利は、このパブリシティ権だ。 だがパブリシティ権とて、いかなる商用利用に対しても行使できるわけではなく、実際にはその範囲はかなり限定的だ。最高裁は「専ら(もっぱら)肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合」に限るとしている。「専ら」ということは実質的に顧客吸引力を利用する以外の目的がないということだ。 これに該当する具体的なシチュエーションとして、タレントグッズとしての商品化や、広告への利用などが挙げられている。 では、アニメ等の作品内に芸能人の肖像を利用することは、どうだろうか。制作サイドに、その顧客吸引力にあやかる狙いが多少はあったとしても、メインの作品内における表現行為の一環の行為であるから、「専ら」あやかる目的しかない、とはいえない。大半のケースで、パブリシティ権を侵害することはないだろう。これが、作品内における芸能人パロディキャラが合法となる理由である。
パロディに伴う著作権侵害や名誉毀損には要注意
ただし、いくつかの注意点はある。作品内での肖像の利用に伴って、パブリシティ権ではない別の権利を侵害することがあるためだ。たとえば著作権。アーティスト写真を忠実に模写して掲載したような場合は、写真の著作権侵害になり得る。また、パロディキャラに本人の楽曲の替え歌を無断で歌わせれば、楽曲の著作権侵害になるだろう。 もっとも、今回の『ダンダダン』がそうであるように、著作権に抵触しない形でのパロディやオマージュは可能である。また、パブリシティ権を持つ芸能人本人が、自身の写真や楽曲の著作権を保有していないことも多い(写真家や作曲家、音楽会社が権利者)。その場合、少なくとも元ネタの芸能人との関係においては権利侵害を生じない。 もう一つの注意点が、名誉毀損(きそん)や侮辱の問題だ。悪意のあるパロディで、元ネタの芸能人等の名誉を毀損したり侮辱する場合は、この点での法的責任を負うことになる。その際、たとえパロディによるディフォルメや名前のもじり・伏せ字などの措置を施したとしても、表現全体から客観的に本人と特定できる状況にあれば、免罪符にはならない。 また、アニメ等ではあまり関係がないが、芸能人等であっても隠し撮りなど私生活における肖像写真等の利用は、プライバシー権の侵害に当たり得る。