日本の著作隣接権切れレコードについて私が知っている二、三の事柄
著作隣接権切れレコードをご存知でしょうか。
おそらく一番身近なところでは、主にCDやカセットテープで、駅やホームセンター、ドライブイン(今は高速のサービスエリアというべきですかね)などで売られていた、
懐かしのオールディーズ、ロックンロールのベスト盤・コンピレーション
価格が妙に安い
知らないメーカーでどうにも公式リリースではなさそう
しかしどうもオリジナル音源が使われている模様
JASRACのシールが貼られてたりする
…という特徴を挙げたらピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。街のレコード屋さんの片隅でもワゴンに突っ込まれて扱われていた記憶もあります。今でも量販店、大型スーパーの片隅のワゴンあたりには潜んでいそうです。
世の中いろんなものに歴史というのはあるもので、しかしいっぽう記録されそれが残ることがないまま時が過ぎてしまったあれこれもなかなか多いです。隣接権切れレコードも、そのなんとも微妙な立ち位置からか、あまりまとまって歴史や情報を得ることができるところは見つからないと思います。そこで今回はそんなニッチな隣接権切れレコードファンのみなさまに捧げようと、この記事を書き始めました。「日本で製造・販売された」「洋楽ポップス」、と範囲は限ってはいますが、お好きな方はぜひご覧ください。
著作隣接権切れレコードとは
まずは大前提として、著作隣接権切れレコードとはなんなのかという話です。
基本的にレコードなどに収録されている録音された「音」そのものの権利=原盤権というのは、演奏家や作者本人ではなく、録音物の製作費を出した人(社)に帰属します。CDや配信等で、(P)とクレジットのある会社が権利者にあたります(譲渡契約を結んでいる場合、譲渡先がクレジットされています)。この原盤権は日本国内では著作権ではなく、著作隣接権のひとつという扱いです。
著作隣接権は保護期間が定められています。保護の範囲から外れた音源は、JASRACに所定の申請・著作権使用料の支払をするのみで、原盤権利者に著作隣接権使用料を支払うことなく、商用レコードの製造・販売が可能となります。ただし、権利者がマスターテープを貸してくれるとは思えないので、音源自体は市販されていたものから複製することになるでしょう。
この仕組みを使ってリリースされたレコードを今回「著作隣接権切れレコード」と呼ぶことにします(細かいことを言うと著作隣接権切れ音源使用レコードとかでないと誤解を生むとは思いますが、語呂の観点からこれでいきます)。
実際はつかみどころのない存在であることからいろんな呼び方があり、「複製盤」とか「ハーフオフィシャル盤」となどとも呼ばれます。このハーフオフィシャルという絶妙な名のとおり、きちんと法の仕組みには則っているので海賊盤・ブートと法的には一線を画している、ということになるわけです。
著作権法改定の流れ
著作隣接権の保護期間については2025年現在、レコードの場合発売から70年とされています。この保護期間はこれまで法律の改定により度重なる延長が行われています。さらに、基本的には「保護の不遡及」という考え方が適用されるのですが、例外としてされなかった時があったりで複雑な変遷を辿っていました。「保護の不遡及」については以下の説明をご覧ください。
問4 既に保護期間が切れている著作物等の保護期間はどのようになりますか。
(答)著作権法においては,一度保護が切れた著作物等については,その保護を後になって復活させるという措置は採らないという原則があるため,改正法の施行日である平成30(2018)年12月30日の前日において著作権等が消滅していない著作物等についてのみ保護期間が延長されます(TPP整備法附則第7条)。したがって,既に保護期間が切れているものについては,遡って保護期間が延長されるわけではありません。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_chosakuken/1411890.html#:~:text=%E5%95%8F4%20%E6%97%A2%E3%81%AB%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E6%9C%9F%E9%96%93,%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%8B%E3%80%82&text=%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AF%EF%BC%8C%E4%B8%80%E5%BA%A6%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E3%81%8C%E5%88%87%E3%82%8C%E3%81%9F,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%8F%E3%81%91%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
ここでは「洋楽ポップス」という観点を軸に、簡単に保護期間についての変遷を眺めていきます。ちなみに、法律に関しては私は素人もいいところですので、あくまで私個人の解釈です。解釈等誤りがあればご指摘いただきたいと思います。もちろん責任も取れませんので、詳しく知りたい方は専門家にご確認ください。
1971年 現著作権法施行 著作隣接権の保護期間は発売から20年
1978年 日本、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」に加入 これ以降の海外盤の保護期間は発売から20年
1987年 Paul McCartneyが日本の保護期間20年は短いと抗議
1988年 著作権法改正 著作隣接権の保護期間を30年に変更(遡及なし)
1992年 著作権法改正 著作隣接権の保護期間を50年に変更(遡及なし) 罰則規定に海外盤を参照としたレコードが加わる
1996年 WTO を設立するマラケシュ協定が締結、94年末の附属書1C(通称「TRIPS 協定」)締結の影響で著作権法改正 著作隣接権の保護対象を1971年発売以降、と変更
1997年 著作権法改正 著作隣接権の保護を50年に変更(遡及あり)
2018年 著作権法改正 著作隣接権の保護を70年に変更(遡及なし)
現在の著作権法が施行されたのは1971年ですが、あくまで国内リリースについての話で海外盤については特に定めがなかったようです。78年10月14日に日本が「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」に加入することで、この日以降発売となった海外盤が保護対象に加わりました。著作権法(とその罰則規定)と、さらにこの条約の合わせ技になっていることが、具体的な保護期間を見えにくくしている側面があります。
隣接権切れレコード自体は80年代前半から細々と存在していたようですが、世がCD時代になりつつあった87年、リリースが多くなり話題になっていきます。5月には朝日新聞の記事に登場。困るオフィシャル・メーカーと、法的に問題ないことをアピールする隣接権切れCDメーカー、さらには隣接権切れCD界に参入する大手企業などそれぞれに取材しています。
一九六〇年代を風びしたビートルズの国内レコード販売権を持つ東芝EMIは、人気ナンバー各十数曲が入ったCD七枚を今年二月から発売。合計七十万枚を売る大ヒットとなった。
ところが、先月末、東京都中野区に本社を持つ音響メーカー「CTA」が、やはりビートルズのCD九枚を追いかけるように売り出した。
(略)
レコード業界をあわてさせているのは、大手の企業が参入してきたことだ。西武流通グループに属する「ディスクポート西武」は、米国のポップミュージックを集めたCDとLPそれぞれ十枚組を一昨年から発売。このほか、映画音楽、クラシックなどの古いレコードの複製合わせて三十種類を発売した。
『朝日新聞 1987年5月26日』朝日新聞社、1987
同年8月、あの世界のPaul McCartneyがロンドンはMPL Communications Ltd.を通じてコメントを発表します。
LOS ANGELES --Former Beatle Paul McCartney attacked what he called the 'exploitation' of a legal copyright loophole in Japan Monday that allows firms to reproduce early Beatles recordings without paying royalities to the band.
McCartney also called for a boycott of what he called the 'low-quality' reproductions of early Beatles albums now surfacing in Japan.
https://www.upi.com/Archives/1987/08/17/Former-Beatle-Paul-McCartney-attacked-what-he-called-the/4339556171200/
元ビートルズのポール・マッカートニー氏は、8月17日、ロンドンのオフィスで、日本の著作権制度の欠陥を指摘し、抗議する声明文を発表しました。
これは、日本の株式会社シーティーエーなど数社が、初期ビートルズ作品を、日本での著作隣接権の保護期間(現行20年)が経過したことから、このCDを制作、販売していることに対し、これを容認している著作権法を批判し、保護期間の延長を訴えたものです。
『The Record 昭和62年10月号 No.335』日本レコード協会、1987
こういった外圧もあってか、著作権法の改正が行われます。保護期間がレコードの発売から30年に延長されました。92年の改正でさらに延長され、保護期間は50年になります。ただし、これらはいずれも保護の不遡及の考えが適用されていました。そのため実態としては、1968年以降のリリースが保護対象のままになっています。
McCartneyは保護期間が20年であることを問題視していましたが、実はこの時点でも厳密には海外盤をソースにすれば78年までのものは保護対象外となっていたようです。
ところで、原盤契約以外の企業が自由にレコードを“コピー”できるのは、レコード制作者らの権利を定めた著作権法の著作隣接権規定が、その保護期間を「二十年」と決めているからだ。
しかも、この法律はもともと海外録音のものには適用されず、日本は国際間の隣接権条約にも加入していない。従って、厳密にいえば、日本がもう一つの国際的取り決めである「レコード保護条約」(海賊版防止条約)に加わった一九七八年以前に海外でつくられたレコードの複製と販売は、法的にはフリーなのだという。
『朝日新聞 1987年5月26日』朝日新聞社、1987
これに対しても、後追いで法改正の動きがあったようです。
92年の著作権法改正により、罰則規定に国外リリースの盤も含まれることで、部分的保護対象となった…という流れです。
95年1月にWTO、世界貿易機関が発足します。WTO設立のためのマラケシュ協定の附属書であるTRIPS 協定が締結され、日本は保護期間の遡及を余儀なくされます。ただし、遡及の適用は各国間の特別条約の規定に従い、ない場合は各国に委ねるということになっていました。そこで日本は、現著作権法施行の71年まで遡及する、という法改正を行います。そうすると保護期間は25年ということになります。これにより、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」の78年までの保護対象期間が遡及され、71年までとなりました。
しかし、遡及は一律50年となるべきというアメリカのクレームが発生します。これは日本をターゲットとしたというよりは、その向こうの東南アジア諸国を視野に入れての圧力ということだったようです。96年にはアメリカからWTOに提訴されるなど強硬な圧力をかけられた日本は再度、法改正を行うことになります。97年の著作権法改正で、国内外のレコードすべての著作隣接権保護期間が発売から50年、と遡及適用で定められました。ここで複雑だった隣接権切れレコードの範囲は国内発売があろうとなかろうと「1947年以前に発売されたものしか使えない」と明確化されることとなり、ポップス系の新規リリースはいったん途絶え、既存のCDも在庫が切れたところで廃盤…ということになりました。
時は流れて2010年代…このあたりになると1960年代リリース作品でも50年の保護期間が満了していきます。
いよいよ1968年以降発売の音源が保護対象から外れるか…という2018年、保護期間がさらに延長され70年となりました。しかし、この際は遡及は適用されませんでしたので、1967年以前発売の音源は隣接権切れ扱いということは変わりません。来たる2038年、またなにか動きはあるのでしょうか。これは隣接権切れレコードファンは注目せざるを得ませんね。気を長くして見守りましょう。
著作隣接権切れレコードの名(迷)レーベル・名(迷)盤の数々
さて、ここからは日本における隣接権切れレコードのレーベルと作品たちを、洋楽ポップスというくくりで見ていきたいと思います。もちろん無数にメーカーはあったと思いますので、ここで紹介するのは私が知るほんの一握りに過ぎません。
また、海外の隣接権切れレコードを輸入して帯や解説等をつけて販売している会社もありますが、国内の法律との兼ね合いがどうなってるのか私がよくわかってないのと、なにより範囲が広がりすぎて収拾がつかなくなりそうなので、勝手ながら今回は除外します。例えば、2000年代前半くらいに(「ザ・」がついてた頃の)ダイソーで売っていた「ザ・CD」などは権利表記が「TIM, CZ / The International Music Company AG」と海外の隣接権切れメーカーになっているようですので、こういったものも掲載を見送っています。
ちなみにクラシックなどは「♪KechiKechi Classics♪」さんが昔からいろいろ書かれていました。興味のある方はぜひご参照ください。
https://kechikechiclassi.client.jp/kaizoku-index.htm
Diskport (Wave)
西武グループのレコード部門、ディスクポート西武が83年11月に六本木にオープンした「音と映像の専門デパート」、Wave。今となっては伝説のレコードショップと呼ばれる存在ですが、このWave、オープンと同時に店内販売用レーベルを始めていたようで、Waveレーベルとしてこの手の隣接権切れレコードをリリースしていました。
<オリジナルM・D - 文庫盤・単行盤>
<文庫盤>は、一枚1,000円で、”三文オペラ・屋根の上のバイオリン弾き・アニーよ銃をとれ・マイフェアレディなどのミュージカルシリーズが大変良く動いております。
<単行盤>は、“Xマスジャンボリー”“Xマス歌の饗宴”あるいはセットものとしては“世界の名曲1001”などのオリジナル盤(英・独・仏・伊・露等)が良く動いております。
レジャー・マーケティング・センター、1984
1,000円の「文庫盤」と2枚組2,000円の「単行盤」として、隣接権切れ音源を安価に提供するというコンセプトだったようです。
こちらは年末という店舗オープンのタイミングにあわせたと思しき「単行盤」おそらく第一回発売の2枚組クリスマスレコード、『Christmas Jumbo-ree / クリスマス 歌の競演』(Wave MFPL-83Y01-2)。
Frank Sinatra、Bing Crosbyなどによるクリスマス曲を集めたアルバムです。
先の87年朝日新聞の記事で言及されていた10枚組というのはこちらのようです。
『Mighty Sixties - All American Hit Pops In 1955-1964』(Wave MFPL-85201-10)はアメリカのヒット曲を集めたコンピのボックスセットです。85年リリースなので64年までの音源を収録したんだと思いますが、60sといいつつ64年までしか入っていないのがご愛嬌といったところです。ブックレットには歌詞と、関光夫さんによる楽曲解説も掲載されています。
こちらはCDもあり、1枚ずつバラでリリースされたようです。歌詞はありますが解説はなく、10枚全て買うとLPのブックレットがもらえる…という仕組みだったようです。
それから私は持ってませんがTony Sheridan & The Beat Brothers「My Bonnie」のピクチャー12インチなんかもリリースしているようです。さらにはWaveとしてではなくDiskportレーベルとしても、Beatlesのクリスマスレコードを10インチ1枚にまとめた『Christmas Fun With The Beatles』なんてのを出しているようですね。レーベルの使い分けはいまいち不明ですが…。
前掲の朝日新聞記事の4年も前からリリースが始まっていることを考えると、このWave、記事の時点で既にそれなりのキャリアのある隣接権切れ音源レーベルであったことがわかります。
Soup Records
スープ・レコードは、音楽評論家で「ニューミュージック・マガジン」(現「ミュージック・マガジン」)創刊者である中村とうようさんのレーベルです。
84年にとうようさんがインドネシアに旅行に行った際、現地のレーベルとライセンス契約を締結、その音源を日本でリリースするために作られたのがスープ・レコードでした。
このスープ・レコード、インドネシアのポップスシリーズをライセンス契約でリリースしつつ、古いラテン音楽のシリーズも並行リリースしています。この「ラテンの古典」シリーズが、隣接権切れの仕組みを使ったコンピレーションでした。これは同時期の欧州の隣接権切れレーベルを参考にしつつ、対抗していたようです。
実はこういった古い時代のルンバの音源など、いわゆる第三世界の音楽のヴィンテージ録音は、ちょうどこの時代になってイギリスのハーレクィンなど、ヨーロッパのいくつかの私家版レーベルによって復刻がはじめられていたからだ。日本だけでなく、アメリカやヨーロッパでも、こういう音源の権利を正式に持っている大レーベルはこんなマニアックな音楽の復刻版は採算が取れないので手をつけようとしない。それなら自分たちの手で復刻をやってやろう、というコレクターたちが、一発奮起して自身でレコード会社をスタートさせてしまうことが多くなってきたのだ。とうようさんが自分のレーベルをスタートさせたのも、そんなヨーロッパの小レーベルの仕事ぶりに刺激を受けたからに他ならない。なので、当時の解説を読むと、この曲は「世界初復刻」だとか、これはどこのレーベルが復刻してるけど実はこっちの方が内容が良い、とか、そういった海外の私家版レーベルをライヴァル視していることがアリアリとわかる。
挙げられている英HarlequinはInterstate Musicの一レーベルで、このInterstateはジャンルごとにレーベルを分け、82年ごろから様々な隣接権切れレコードをリリースしています。
https://www.discogs.com/ja/label/51042-Harlequin
https://www.discogs.com/ja/label/263864-Interstate-Music-Ltd
素晴らしい音源であるにもかかわらず採算の問題でリリースに後ろ向きなメジャーカンパニーに代わって、熱心なコレクターがその気になれば世に提示できる…隣接権が切れることで、こういったことが可能になったのでした。
ラテンの古典第一弾はLecuona Cuban Boys『Coubanakan』(Soup T-101)。とうようさん自らのコレクション、1930年代に録音された音源のSPを使用し、マスターが作成されています。
なお名曲「ルンバ・タンバ」はこれまでコロンビアに録音したものが何度かLP化されたが、今回このアルバムには、未LP化のポリドール盤を使用した。これは昭和12年(1937年)に日本ポリドールから発売されたものである。ついでに本アルバムで初めてLP化されたものを挙げておくと「ルンバ・タンバ」のほか「私は奴隷」「トカラトラ」「やさしきボレロ」「モンテルカルロの月」と、合計5曲になる。
スープ・レコードはラテンのみならず、85年からはブラック・ポップ・シリーズも開始。3つのシリーズが続いていましたが、86年のとうようさん著『大衆音楽の真実』(ミュージック・マガジン、1986)と連動したLPの第二弾『大衆音楽の真実 II』を最後にリリースはいったん途絶えます。
さて、80年代中盤になると世はCD時代を迎えることになります。このあたりから、もともとカセットテープやカートリッジなどでカラオケ用音源などを制作・リリースしていたような会社がこの仕組みに目をつけ始めます。おそらく個人向けカラオケのテープが地味にブームになっていた70年代〜80年代前半に大発生した、今では「パチソン」として扱われているような、言ってしまえば非常におおらかなクオリティのカバーを制作・リリースしていた会社たちです。
そういった会社たちが、製作費なしで60年代のポップス、ロックンロールをカバーでなくオリジナル、「本人歌唱」でリリースできるのですから、非常に「美味しい」話であったことでしょう。
CTA (Sphinx)
まずは朝日新聞や『The Record』にも登場していた「複製盤」会社の代表格、CTAというところを見てみましょう。CTAとは「セントラル・テープ・エージェンシー」の略で、もともとカセットや8トラック等テープメディアで独自作品をリリースしていた会社のようです。
得意としていたのがやはりカラオケ市場です。音源の制作・販売だけでなく、カラオケ音源の出前サービスを始めたという話も『エディター的発想 : ビジネスマンの企画・編集術』(猪狩誠也・鍋田紘亮 筑摩書房、1983)にありました。
もちろんカラオケやそれに付随するカバーものが無数にあるのですが、なんと2025年の今ではCTAの名を冠したカラオケやカバー音源がサブスクで聴けたりします。
現在ではパチソンと呼ばれるこういったカラオケ関連のビジネスのみならず、70年代半ばには将棋講座テープの広告を将棋雑誌『近代将棋』に出しているのを確認できます。
さらにはパソコンゲーム界にも進出していたようで、80年代には安価なゲームも多数リリースしていました。
音楽ビジネスに話を戻すと…この会社、70年代末のオリコン(コンフィデンス)年鑑にはレコード・テープ会社一覧にキャニオン、CBS・ソニーとディスコ(メイト)、フォーライフ、ポニーと錚々たる顔ぶれに挟まれて掲載されています。
基本的に自社生産しやすいテープメディアをメインにやっていた会社で、アナログレコードはリリースはしていますがさほど数は出ていないようです。
しかしCDの登場で、プレスのしやすさにいち早く目をつけたのか、85年〜86年のBillboard誌ではいくつかの記事でなんとCDプレス業者として登場しています。
More CD Capacity is prompting CTA Co, Ltd., an independent manufacture near Tokyo, to begin soliciting outside CD pressing clients. According to Ed Koppe of Corporex, the Los Angels-based firm now representing CTA here, the Japanese firm began pressing its own CDs late 1983 as an outgrowth of its software manufacturing for "karaoke" sing-along systems. After initially producing eight-track tape cartridges for the Japanese sing-along market, CTA reportedly secured a Phillips license and began creating high-tech CD programs.
The Billboard, April 6, 1985
CD需要が高まる中、かなり早い段階でプレス工場を持っていたため海外からのプレスオーダーにも応えていたようです。Discogsを漁ってみたところ…米Atlantic(Phil Collins『No Jacket Required』)、米Motown(『Lionel Richie』、『The Composer Series: The Greatest Songs Written By Smokey Robinson』、『The Greatest Songs Written By Ashford And Simpson』)、米Reprise(Neil Young『Harvest』)、米Rhino(Everly Brothers『Cadence Classics』、Little Richard『18 Greatest Hits』)、英Virgin(XTC『Drums And Wires』、Ryuichi Sakamoto 『Merry Christmas Mr. Lawrence』)…と、名盤たちのオフィシャルCDをプレスしていたのがわかります。教授の戦メリの英盤CDまでプレスしていたとは…!
このリソースを保有していたところでこの隣接権の仕組みに気づき、隣接権切れCD もリリースするに至ったと思われます。なお、イエロー・マジック・オーケストラがYMOと呼ばれるようになったかのように、いつの間にか社名も正式にCTAに変わりました。
ではようやく本題、CTAの隣接権切れCDをいくつか…おそらくこれは初期のもののようですが、スフィンクス・レコードというレーベルで出していますBeatlesの『Super Stars Hit Collection』(Sphinx SSD-1001)。
全曲ステレオミックスでの収録。スクラッチノイズも少し入っていますので、盤起こしと思われます。冒頭4曲は若干ピッチが速い気がしますね。こういうのはアナログ時代ならではのおおらかなクオリティといえましょう。
カラオケ・カバー音源製作会社としては「本人の歌声で収録」がなんといってもアピールポイントです。歌詞カードは付いているのですがカセット並みに小さく折りたたんでおり、これはおそらくカセットと共用なのでしょう(でもちょっと検索するとカセット版はCTAでなくW. B. Tradingという別の社名が…!?)。オフィシャルの米英盤CDをプレスしていた会社がこういったおおらかなものを出しているというのが、一筋縄ではいかない、常にチャレンジングであり続ける企業の在り方を示しており学びがあります。
Beach Boysもありました(Sphinx SSD-1006)。「In My Room」「Little Honda」「Fun, Fun, Fun」はステレオですが、あとは特記なくモノラルです。「Surfin’ U.S.A.」も「Surfer Girl」もモノという、当時の東芝EMIの方針と一線を画す収録内容といえましょう。ステレオのフォールダウンではなさそうで、盤起こしっぽい音ですがどこから持ってきたんでしょう?「Surfer Girl」の冒頭のBrian Wilsonのファルセット、シングルヴォーカルっぽく聴こえますが…。
これは90年代のリリースだと思いますが、『Best The Beatles』(Volume:12 CTA TF-32)。67年までの全曲をアナログ時代のステレオミックス(リアルステレオが存在しないものはご丁寧に擬似ステレオ)で収録しています。『Super Stars Hit Collection』のようにピッチが明らかにズレてるということもなく、普通に聴くことのできる盤です。公式のCDリリースでは当時聴けなかった65年までのオリジナル・ステレオバージョンがCDで聴けるということで、こういったところを知ってる人にはいわゆる「コレクターズCD」的な意味合いで需要があったかもしれません(ジャケの片隅に「STEREO」とあるだけで、一切アピールはしていないのですが)。「Thank You Girl」「I’ll Get You」もUSキャピトルの『The Beatles’ Second Album』から前者はステレオ、後者は擬似ステレオを持ってくるなど、きめ細やかな編集方針です。シリーズ最後のVol.12に入っている「This Boy」「Yes It Is」などはリアルステレオです。
これも90年代のものっぽいですが『Big Hits Of Soul』(Vol:3 CTA BS-3)というソウルもののコンピのVol.3。この頃になるとジャケなどは「それっぽい」デザインで作るようになっています。しかし、相変わらず作者のクレジットはありませんでした。
BAC
『Big Artist Hit Collection』というシリーズで様々なミュージシャンの編集盤をリリースしていたのがBACというところです。基本的に1枚に2組のカップリング、いや抱き合わせといったほうがしっくりきますね、抱き合わせのコンピレーションで、私の手元には『Ray Charles / Sammy Davis Jr』(BAC CF-24)というタイトルがあります。
ホムセンのワゴンとか吊るし時計の横のラックで売ってた適当CD「Tレックス/トム・ジョーンズ」を持ってないやつはホームセンターとか駅売りCDを語る資格がないよ何でその二組が一緒なのか?ぁあ"っ💢どっちもイニシャル「T」にきまってるからだろっタコスケきしょめいてやんでィ#ビートルズを語る資格 pic.twitter.com/72EMpMv44r
— Atsuo Onoda 斧打淳央 (@ATSUOONODA) March 24, 2024
ということはこれもアルファベット順の「R」と「S」というだけでこの組み合わせに…!?
Alcam / Juptter (Culture)
Sales AgentがAlkam AV、ManufacturedがJuptter(原文ママ)でさらにレーベルらしきものとしてCultureというロゴがあります。複雑です。
『The Great Artist Best Hits』というシリーズもの、こちらもBACのように抱き合わせのコンピで、そしてなかなか凄いです。
『The Great Artist Best Hits ビリー・ジョエル/他』(Culture ERF-023)
『The Great Artist Best Hits エリック・クラプトン/他』(Culture ERF-027)
『The Great Artist Best Hits スティビー・ワンダー/他 (オールディーズ・ベスト・ロックンロール)』(Culture ERF-044)
「スティビー」(原文ママ)も気になりますが何より「他」とは誰なのか。なんと、Billy JoelはEarth, Wind & Fire、Eric ClaptonはSantanaという、組み合わせ基準がこれまたいまいち不明な抱き合わせコンピレーションです。BACのようにアルファベット順でもなく…Clapton/Santanaはギタリストつながりでしょうか。
3枚目はStevie WonderとChuck Berry、そしてJames Brownの超豪華コンピレーションとなっています。「オールディーズ・ベスト・ロックンロール」というのもよくわからないサブタイトルですが…。
「他」とか小さい括弧閉じのフォントで片付けるには大きすぎる存在にも動じることのない、この手のメーカーの心の強さを感じます。
Eastern Enterprise (Lily)
『Stevie Wonder』(Lily LC-46)というシンプルなタイトルのベスト盤です。「解説付 歌詞カード」とあるとおり、例によって作者のクレジットはありませんがこの手のCDには珍しく、歌詞だけでなく簡単なStevieのプロフィール解説がついています。
Discogsを見る限り、前述のAlkam / JuptterのCultureから出ていたClaptonとSantanaの抱き合わせ、全く同じ選曲・曲順の『Lament Electric Sound』のタイトルでこのLilyも出しているようですね。よくよく見るとAlkam - CultureだけどManufacturedがJuptterでなくEastern Enterprise、の盤もあるようです。なんらかのつながりがありそうですが、この先は、興味のある皆さんにお任せします。
TaskForce
タスクフォースという会社から出ているソウルのコンピレーションにも『Big Hits Of Soul』(3 Taskforce T-1848)というシリーズがありました。私の手元にあるのはまたしてもVol.3です。こっちのほうがCTAのより古そうですね。
Stevie Wonderの写真は明らかに84年頃の、もっというと日本盤12インチ「Don't Drive Drunk / スティービー・ワンダー・スペシャル」のジャケ写なのですが、収録されているのはきちんと隣接権が切れている66年の曲、「A Place In The Sun」「Blowin' In The Wind」というミスマッチ。音源は法的なリスクをクリアしていてもこの写真をジャケに使うのはアリなのかナシなのか、ちょっとわかりません。歌詞や作者の記載はありませんが、この手のものでは珍しく、無署名ですが楽曲解説が載っています。
ただ、よくよく曲目を見ると…先のCTAの『Big Hits Of Soul』はこのタスクフォース盤に4曲追加しただけですね?
また、Discogsを見るとBeatlesの『Perfect Collection』というのを出しているようなのですが、これがなんと先の87年の朝日新聞の記事ではCTAのCDとして紹介されていました。シリーズ末期のものは「企画 タスクフォース 制作 CTA」と単独でなくCTAの表記が…というかこれもCTAの『Best The Beatles』と同じ内容ですね?そしてこの盤に記載のタスクフォースの住所、野方でCTAと一緒のようですし。
これまたなんらかのつながりがありそうですが、この先は、興味のある皆さんにお任せします。
Della
デラ・インクというところから出ています『Champion Selection Series』(Della PF-7019)、末期Beatlesからの選曲です。なぜかジャケや裏ジャケにタイトルが無いのですが、背表紙やレーベル面には『Get Back』のタイトルがあります。
末期Beatlesとどう関係あるのかわかりませんがTriumphのベルト、バックルが渋いですね。こういう、収録されてる音楽をまったく感じさせないジャケもこの手のCDの特徴、魅力といえましょう。
ちなみにこのデラ、現在も健在で公式ホームページがあります。会社沿革を見ると1972年創業と歴史あるレーベルで(中村八大さんを役員に迎えたこともあるようですね)、90年代に入るとヒーリング・ミュージックの制作・リリースを開始、注力するようになります。現在では「音・音楽・映像による人々の健康並びに快適生活空間をプロデュースするリーディングカンパニー」となり、継続的にリリースしていたそれらの作品が2010年代には俗流アンビエントとして評価。2021年には、95年の作品をCDリイシューするにまで至るのでした。
ARC
CDカクテルというシリーズでカクテルの名前をタイトルにしたCD、ここにあります『Gin & Tonic』(ARC T24P-0165)はPrince「For You」から始まりELO「One Summer Dream」で終わる幅広いセレクションになっています。
歌詞カードはありますが1曲ずつフォントが違うので、それぞれソースのCDからコピーしてきたのでしょうか。まるで手作りコンピ・カセットのような良い雰囲気です。
また、隣接権切れレコードファンにはたまらないレアアイテムとして、5インチのマキシ・シングル用の薄型ケースに入った3インチ(8センチ)CDも出していた形跡があるのを見つけました。88年リリースで、David BowieやPrince、Beatlesなどの2〜5曲入りCDです。「限定盤」だそうです。ちょっと欲しいですね。
https://www.discogs.com/ja/label/810921-Greatest-Hits-First-Presentation
時を隔てて…2010年代にドン・キホーテなどで売っていると話題になった隣接権切れBeatlesものも、輸入会社がARCとなっており、おそらく同じ会社ではないかと思われます。自社国内制作ではなく輸入なので今回の記事では対象としていませんが、歴史ありということで参考程度に触れておきます。クレジットによると、企画自体はHHO Multimediaという英国の会社によるもののようです。
また、(おそらく)この会社、2015年にはシンコーミュージックと組んで「20世紀のミュージック・ライフ 第1集 ビートルズの作り方」というCD付きマガジンも出版しているようですね。
さらには…先にCTAの音源がサブスクにあると書きましたが、この原盤権利者にARCとあるんですね。ひょっとしたらCTA音源もいろいろあって?、今はここが権利を持っているのかもしれません。こちらもまた乱世を生き延びた安易系レーベルのひとつ、といえそうです。
Mido Enterprise
「絶滅シリーズ」とその強烈なネーミングセンスで記憶にある方もいるかもしれません。
こちらはよりによって怒れる当事者Paul McCartneyの『Jet!』(Mido ZS-9113)というアルバム…ですが、実態は『Band On The Run』全曲そのままに、ライブ音源5トラックをプラスした構成です。このシリーズ、基本的に後半の収録曲はオフィシャルリリース音源ではないライブ音源を収録しているようなので半分はブート的な存在で、「ハーフ・隣接権切れCD」とでも呼ぶべきなのかどうか…?
何がどう「絶滅」なのかはよくわかりません。手元のこれは帯に法改正の影響で91年いっぱいで廃盤となる旨予告されている(これは前述の92年の著作権法改正を受けてのものだと思います)のでそこからかと思いましたが、初期盤の帯にはそんな話は書かれていないようですので別の意味合いがあるのでしょう。「Save The Earth, Love The Music!」というフレーズとか、廃盤予告帯では「絶滅シリーズでは、動植物を絶滅の危機から救うため、1枚につき5円をWWF Japanによる保護活動に活用していきます」とあったりして、とにかく饒舌な帯です。
ただ、帯で力尽きてしまったのか、ライナーやクレジットなどは一切なく、ジャケもペライチ裏真っ白・レーベルもこれだけなのでした。
Tone
『Beautiful Pops Explosion』のBeatles編(Tone TNCD-1001)、これは禁忌のひとつですが、やってくれました。
Beatlesのコンピになんの断りもなく並べられたJohn Lennonソロ「Imagine」!アナログの盤起こしで全てステレオ・バージョン、音質・音量も曲によってばらつきのある、いかにも80年代後半のこの手のCDっぽいおおらかな出来です。
他にDavid Bowieの『Beautiful Pops Explosion』(Tone TNCD-1049)などもあります。「フェイム」で始まり「スペースオディティ」で終わる全12曲。「ヒーローズ」は左右逆マスタリングでの収録です。
Eyebic
John Lennonのベスト盤、『Big Artist Flash John Lennon Greatest Hits』 (Eyebic ECD-10027)。
1曲目「Give Peace A Chance」は1分弱で終わってしまう『Shaved Fish』バージョン、「Happy Xmas」もフェイドアウトの後にStevie Wonderをフィーチャーした「Give Peace A Chance」ライブが入る『Shaved Fish』のメドレーバージョンですが、いずれも注釈などはありません。ということはおそらく、『Shaved Fish』がCD化されたのち、『John Lennon Collection』がCD化されるまでの間に編纂されたものなのかもしれませんね。
Seagull Project
またまた怒れる当事者Paul McCartneyを尻目にリリースされていた『Paul McCartney / ポールマッカートニーベストアルバム』(Seagull SD-1022)がこちら。
「ポップスのゴールデンエイジと云われる'50年代後半から'60年代の名曲を中心に厳選」とあるのですが、70年代の曲しか収録されていないあたりがたまりません。McCartneyのソロですからそれは当然なのですが…あえてのGeorge Martin & His Orchestra「Theme From 'The Family Way'」とかを入れてくれてるわけでもありません。「ビッグアーティストの熱いハートを青春の心でお楽しみ下さい」というなんだかよくわからないフレーズも強烈な味わいがあります。
FIC (FIC Excellent)
ここはなかなか攻めていた会社です。まずは『John Lennon & Paul McCartney』(FIC Excellent EX-021)と題されたCD。
とにかくこの赤帯に尽きます。駄菓子・子供向け玩具にありがちなパチモンのノリ、しかも非公式ならではのビッグネーム共演夢のベスト盤(この帯によると「超ベスト盤」)、もちろん本人歌唱…というのが大きな売りですね。平成初期はまだ昭和のノリがバリバリに残っていました。帯の上のほう、「LENNON-McCARTN」で切れてるのもいい味を出しています。
「Happy Xmas」はこれまた「Give Peace A Chance」とメドレーの『Shaved Fish』バージョンですが、ノークレジットです。
これも凄い『The Beach Boys And West Coast Sound』(FIC Excellent EX-030)。BB5の東芝盤CDに赤帯は無いと思うのですが、そんなことはお構い無しの勢いを感じます。
上掲2作は「FIC Excellent」というレーベルロゴがありますので無印FICの以下のほうが古いのかもしれませんが、作りがさらに雑な『Rock Collection』。シリーズ物のようですがVol.2とVol.4(FIC F-010、F-012)を。
レーベルには楽曲タイトルすらありません。トラック番号とミュージシャン名のみ。ジャケは一応2つ折りになっていますが、表面以外真っ白でした。
さて、このような安易なノリの隣接権切れメーカーが跋扈する中、音楽評論家・マニアによる企画・選曲・解説のCDも登場します。先のスープ・レコードよろしく、公式リリースが滞っていたレア盤音源を集めた、マニアに嬉しいCDです。特に、60年代前半のポップス〜ソフト・ロック関連のリリースはかなり充実しており、当時のオフィシャル・リリースを補完、底上げ、プレッシャーをかけるという意味で非常に重要な仕組みだったといえるでしょう。
Audi Book
まずはスープ・レコードの中村とうようさん。89年にミュージック・マガジンの編集長を退任し季刊「ノイズ」を始め、同時に始めた新レーベルがオーディブックでした。
特にこの頃は実際に原盤を持っているメジャー会社が古い時代の音源の復刻にさほど精力的でなかったこともあり、多くの分野でコレクターたちの復刻専門レーベルが活躍した。それに、彼らは原盤を持っているレーベルによる復刻とは違って、複数のレーベルの音源も自由に使って編集盤を作れたので、より魅力的な編集盤を作ることができたとも言える。
オーディブックがやりはじめたのは、もちろん、そんな欧米のレーベルがやってきたのと同じことだ。ただし、レコード店には輸入盤も同時に置かれていたので、欧米のレーベル以上に魅力的な商品を作れないといけない。負けず嫌いのとうようさんが、ここで燃えないわけがない。とうようさんが自身のSPコレクションを増やすことになお一層力を入れるようになったのがこの時代だった。
これはCDと解説本をジョイントさせたもので、当初とうようさんとしては単なるCDとしてCDショップに置くのではなく、書籍の流通ルートで販売しようというねらいがあったようです。この辺は80年代前半からあったカセットブックを念頭にしたアイディアでしょうか。結局CD(の流通)として売ることになったそうですが、テーマが概論のものをブックサイズ「CDブック」でリリースし、各論のデジパック「ミニCDブック」を出す…という2種類のリリースで展開されました。
CDブック第一弾の『A Guide To The Black Gospel/ブラック・ゴスペル入門』(Audi Book AB-1)。全25曲、1920年代から61年ごろまでの音源の入ったCDと、とうようさんの解説がハードカバーのブック形式で読めるのが魅力です。
デジパックスタイルのミニCDブック、『Muchos Mambos / マンボの散歩』(Audi Book AB-110)。マンボ第一弾の『マンボの祝祭』の続編で、今度はB級バンドの演奏も気軽に楽しんでほしいというコンセプトです。
Pérez Pradoのレア音源を入れたのに、そのあと他レーベルに先に越されてしまったのに気づいたと正直に書くとうようさんのライナーが楽しいです。
(21) ペレス・プラード/アシ、アシ
この『マンボの散歩』はB級マンボの味わい深さを試食していただこうという狙いをメインにしたが、ペレス・プラードが(11)(12)のバックをつとめただけというのでは物足りぬファンもいらっしゃると思い、彼の楽団の珍しいレコーディングを1曲入れることにした。ところが実は、この選曲を済ませてから入手したスイスのトゥンバオの“Kuba-Manbo”(TCD006)に収録され、ひと足さきにCD化されてしまっていた。まあ仕方ないだろう。
全49タイトル、最後のコンピ『とうようズ・チョイス』をリリースした97年、レーベルは閉鎖されます。後続のレーベルもPヴァイン以外全てそうなのですが…97年の著作権法改正で保護期間が遡及となってしまったことから、終了となってしまったのは悔やまれます。
P-Vine
Pヴァインというと76年にブルース・インターアクションズ社が創立したレーベルです。創立当初は海外のレーベルとライセンス契約を結んで名作を国内リリースしていました。現在でもおなじみのところですね。
このPヴァイン、80年代末からミュージシャンごとのカバー元オリジナルバージョンのコンピをリリースしており、これらは選曲や権利クレジットから隣接権切れの仕組みを利用したものと思われます。『Rolling Stone Classics』『The Beatle Classics - A Collection Of Original Songs Made Famous By The Beatles』あたりが始まりでしょうか、『Classics』のタイトルで順次リリースされていました。
『Clapton Classics』(P-Vine PCD-2530)はEric Claptonが取り上げたブルース・クラシックのオリジナル・バージョン26曲を集めたコンピレーションです。ギタリストの小出斉さんによる選曲で、小出さんによる楽曲解説が付いています。
『The Beach Boys Classics』(P-Vine PCD-2734)もありました。こちらは武蔵小山はペットサウンズレコードでおなじみ森勉さんの選曲・ライナー付き。ライナーではカバー曲の傾向分析まであり、充実の一枚です。
M&M
M&M(Enterprise、95年頃はRecords、のようですがその後Entertainmentになったのでしょうか?)はこちらのサイトによると、Chu Takahashiさんによって89年に創立されたレーベルということです。各コンピのプロデュースまたは選曲などにもTakahashiさんの名がクレジットされています。
上掲のサイトのディスコグラフィーには記載がありませんが、90年ぐらいにまず前哨戦として?『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』やBob B. Soxx & The Blue Jeans『Zip-A-Dee Doo Dah』、そして『Phil Spector Rare Masters』(M&M PHLP-5000X)などのCD化を行なっているようです。ライナーは壁野響一さんによるものです。
こちらは92年の本格リリース第二弾あたりでしょうか、Bruce And Terryの『Rare Masters』(M&M MMCD-1001)。
これはTakahashiさん選曲の18曲入り1st Issueと、34曲入りの2nd Issueがあるようで、手元にあるのはご覧のとおり2nd Issueです。特に2nd Issueは豪華な仕様(ブックレットが分厚いのでプラケースも厚いものを使用)とレア音源を含む内容で、一枚もののCDとしては高額な4,000円でしたが納得の出来です。ちょうど90年末に伝説のミニコミ誌「Vanda」を創刊したばかりの佐野邦彦さんを選曲やライナーに迎え、壁野…いえ大嶽好徳さんデザインのジャケットも素晴らしいものでした。
93年のソフトロックのコンピ『The Melody Goes On Vol.1』(M&M MMCD-1005)。帯コメントは佐野さん、選曲はレーベルオーナーのTakahashiさん。共同選曲には現ナイアガラの坂口修さんと思しき名前もあります。Curt BoettcherプロデュースのEternity's Children「Mrs. Bluebird」からスタートし全20曲+α。Roger Nichols・Gary Zekley関連作を中心とした選曲です。珍しく?解説はなく、ライター/プロダクション・クレジットの書かれた各曲オリジナル盤のレーベルをカラーで掲載しています。「Mrs. Bluebird」なども英Rev-OlaからオフィシャルライセンスのCDが出たのは99年のことでしたが、多くがこの時点でCD化されていない曲で、公式リイシューはこのリリースの後〜2000年代まで待たねばなりませんでした。
タイトルのとおり当初よりシリーズ化の意図があったようで、後に今度は佐野さんの選曲でVol.2、Vol.3が出ています(M&M MMCD-1013、MMCD-1024)。Vol.2はRoger Nichols・Curt Boettcher関連作、Vol.3は間口を広げてFour Seasons・5th Dimention・Backinghams・Tokensなどメジャーなミュージシャン半分・レアもの半分のセレクションです(ライナーによると、ヒット曲を通らずレア盤だけを求める層にも向けた選曲ということでした)。Vol.2・Vol.3は佐野さんによる詳細な解説も付いています。
Brian Wilson関連も『Still I Dream Of You - Rare Works Of Brian Wilson』(M&M MMCD-409)というのを出しています。Takahashiさんプロデュース、解説はもちろん佐野さんで、Brian Wilsonのプロデュースや参加作品などを集めたレア音源満載の一枚でした。
フルカラーのブックレットもBrianへの愛に溢れた内容で、このあたりはVanda編『The Beach Boys Complete』(シンコーミュジック、1998 / 増補改訂版2001 / 再増補改訂版2012)を予感させるような充実ぶりです。
1995年8月19日のBillboard紙のサーフィン〜ホットロッド・リバイバルの記事でM&Mは『In My Room - A Beach Boys Tribute for the Homeless』などでリバイバルを盛り上げる名リイシュー・レーベルのひとつとして取り上げられているのが確認できます。
このように隣接権切れレーベルとしては面目躍如たる活躍ぶりでしたが、リアルタイムでは隣接権切れの仕組みを利用していたことを批判する向きもあったようです。
D:そうだね、メール…の時代じゃないから基本は電話でだったかな。それにしてもM&Mはいろいろあったよね、まあ隣接権CDってことであちこちから叩かれた (笑)。
S:同じように隣接権でCDを出していた音楽業界の大物もいたんですよ、当時。ダブルスタンダードでしたね、そちらには言及せずに叩きやすいM&MとかA-Sideに鉾先が来てた…。
http://sakatomi.com/iFrame_4/22_sano-Vanda01.html
D: Dennyオクヤマ、S: 佐野邦彦
この「音楽業界の大物」とは、スープ・レコード〜オーディブックの中村とうようさんのことでしょうね。
ジャズものはLPで出していたようでDiscogsで何枚か確認できます。Charlie Rouse『Yeah!』、John Lewis & Sacha Distel『Afternoon In Paris』、Marty Paich『I Get A Boot Out Of You』など…ジャズではないですがYellow Balloon『The Yellow Balloon』はLPで出していますね。
7インチも2枚ほど出していたようです(先のサイトのdiscographyにも一番下にCarole Kingだけあります)。Blossoms「Things Are Changing」とCrystals「Please Be My Boyfriend」のスプリット・シングル(壁野響一さんによるライナーの英訳がここで読めます)、そしてCarole Kingの「Oh, Neil」(M&M AE-57)です。
https://www.45cat.com/label/m-m-enterprises
Pendleton
某社の業務でLA在住だった頃の宮治淳一さんが編纂プロデューサーを務めたレーベルがPendletonです。宮治さんはLAにいましたがこのレーベル自体は「Chigasaki, Japan」の記載があります。これは宮治さんが70年代からかかわっているエレキ・サークル、ニュー・エレキ・ダイナミカによるレーベルということのようで、ライナーには「あなたも参加してみませんか?」と、ニュー・エレキ・ダイナミカの連絡先住所も記載されています。
このグループもレコードデビュー前はPendletonsを名乗っていました
2枚のリリースが確認できており、91年にリリースされた第一弾はVenturesのレア音源を集めた『The Rarities』(Pendleton PC-101)。
楽曲解説は仙台のパラダイス・レコード永山直幸さんによるものです。いきなりBlue Horizonからの「The Real McCoy / Cookiess & Cooke」のマトリクス違いの2バージョンからスタートし、その後もシングル・オンリーやレアもので固めた逸品に仕上がっています。ライナーでの宮治さんの挨拶も自信に満ちたものでした。
もう一つはまったくエレキものではなく、ソフトロックです。宮治さんがLAはロングビーチのレコード屋で、500箱あるレコードから残り5箱まで見たところで発掘したという「The Drifter」7インチを収録したRoger Nichols & The Small Circle Of Friends『The Drifter』(Pendleton PC-102)。Roger Nichols & SCOFのモノラル音源を集めたコンピレーションで、宮治さんのモノ音源収集の成果を共有する一枚ということになります。
シングル曲(タイトル曲以外)は97年の日ポリドールのコンプリート盤(POCM-2065)、アルバム本編のモノ・ミックスは14年の日ユニバーサルのデラックス・エディション(UICY-75172/3)を待たねばなりませんでしたから、これまた時代をリードしたCDであったといえるでしょう。
A-Side
M&Mと同じドメインでA-Sideのサイトがありました。音楽評論家の上野シゲルさんらによるレーベルです。
ガールもののコンピ『Golden Records - Girls Collection 1』(A-side AZ-5002)。Girls Collectionはシリーズとして5枚目までリリースされていたようです。上野さんや守屋須三男さんによる詳細な楽曲解説が掲載されています。
作家の作品集、Legendary Songwriter Seriesというのもあり、こちらは『Carole King Masterpiece』。
ライナーはVol.1(A-side AZ-5006)が東ひさゆきさんと上野さん、Vol.2(A-side AZ-5013)は増井裕美さんと上野さん。このシリーズではBarry Mann、Burt Bacharach、Jeff Barry & Ellie Greenwich、Phil SpectorやBrian Wilsonなども扱っていました。クレジットを見ると大嶽好徳さん(Spector編では選曲・ライナー・ジャケも)、M&MのChu Takahashiさんらの協力も仰いでいる盤もあるようですね。Bacharach編Special Thanksの“City Boy” Sakaguchiってのは坂口修さんでしょう。
他にもドゥー・ワップものでは山下達郎『On The Street Corner』のカバー元を集めたコンピ『Chapel Of Dreams - Street Corner Symphony』(これもTakahashiさんや坂口さんがSpecial Thanksにいます)などもリリースしています。
Real Music
こちらも選曲や解説で佐野邦彦さんがかかわっているレーベルです。
『US Soft Pop Rarities』(Real Music RMD-1002)はAnders & Poncia作品(Red Bird期のTradewinds)、Gaudio & Crewe作品(Four Seasons)、そしてGary Zekley作品という3つの柱で構成されたコンピです。Four SeasonsはWonder Who?名義のレア・トラック「Sassy」のみならず、お馴染みの曲たちの珍しいオルタネイト・ミックスもいくつか収録しているのはさすがです。
Teddy Randazzoの作品集『Teddy Randazzo Songbook』(Real Music RMD-1007)は(Little)Anthony & The Imperials、Royalettes、Ginny Arnellの作品から、Randazzoのペンによる珠玉の名曲たちが収録されています。こちらも佐野さんの解説付きです。
他には大嶽好徳さんによるイラストジャケ&解説の、Phil Spectorのレア音源(レアどころかSpectorが直接関わっていないPhi-Danレーベル作品まで収録!)集『Off The Wall』やJack Nitzscheのレア音源集『His Restless Days』なども出しています。
Keystone
前掲のレーベルの中では96年ごろ創立のようで後発と思われますKeystone。『It's A Soft Rock World』(Keystone SR-9601)はまたまた選曲やライナーに佐野邦彦さんを迎えています。同時期にFree Soul CollectionからリリースされているAlzo & Udineの2曲からスタートし、Van Dyke Parksのデビューシングル「Number Nine」(2023年に7インチでリイシューされることになります)で締める全20曲の収録。このコンピについては、LPもSolid Records経由でリリース(Solid Solid-0012)されています。
『It's A Soft Rock World』はシリーズ化され第二弾『Sitting In A Rockin' Chair - It's A Soft Rock World Volume 2』(Keystone SR-9603)がリリース。こちらはGroopの2ndシングル「The Jet Song」(オフィシャル・ライセンスCDが出たのは2007年でした)で始まり、Roger Nichols作のThe Neighborhood「So Many People」(これはいまだにオフィシャル・リイシューや配信はされていませんかね?)で締め、さらに嬉しいYoung Rascals「Groovin'」のイタリア語版・スペイン語版つきの20曲入りでした。
佐野さん選曲・解説の第三弾『A Taste Of Girls - A Taste Of Honey Ltd.』(Keystone SR-9605)、という女性ヴォーカルものも出ています。2013年にオフィシャルCD化されることになる、当時米国でもレア盤であったHoney Ltd.のLPから全曲収録という大サービスぶりでした。
Keystoneは他にもHep Stars『It's Been A Long Long Time』(なぜかほぼ同時にM&Mからも出ました)や、隣接権切れではなくオフィシャルのライセンス契約でRobert Lester Folsom『Music And Dreams』などもリイシューしています。
こういった濃いリリースが音楽ファン・マニアを唸らせる傍ら、先のCTAをはじめとする、安易系レーベルもまだまだ健在であったのが90年代です。
Amuse
Amuse Inc Tokyo Japanとありますが、大里洋吉さんのアミューズではなさそうです。ジャケから凄いBeatlesのコンピ、『The Beatles Special Collection No.1』(Amuse EB-1701)。
ざっくり再現したBeatlesロゴ、ロシアAnTrop盤『Yellow Submarine』を彷彿とさせるマニアにうれしい(?)イラスト。そして収録曲は映画「Yellow Submarine」とまったく違う時期、『Please Please Me』から8曲と「I'll Get You」「I Want To Hold Your Hand」…というなかなか強烈なコンピです。音源は市販のCDから持ってきたと思われ、「I Want To Hold Your Hand」だけステレオ、あとはモノラルバージョンが収録されています。歌詞カードはついていますが、相変わらず作者名を記載するという概念はなさそうです。
Hamamatsu Sinkin Bank
なんと、金融機関のノベルティとしてもあったのですね、隣接権切れCD。1996年の権利表示があります『The Beatles Best Hits』(Hamamatsu Sinkin Bank DAC-018)。Beatlesの初期7曲とはまったく関係がない、そびえ立つ浜松アクトタワーのジャケが魅力です。
お金絡みという意味では「Can't Buy Me Love」は収録されていますが、「Money」は入っていませんね。ステレオで収録できるものは収録しようというコンセプトだったのか、冒頭2曲はステレオで、聴く限りは1993年の赤盤CDから持ってきていると思われます。制作としてDNP AV Centerのクレジットがあります。
97年の法改正で、それまでかなり自由に出せていたポップス系の隣接権切れCDはリリースが途切れます。60年代の音源は、保護期限が切れる2010年代までこの仕組みを利用してリリースすることはできなくなりました。しばらくの時間が開いた2014年、新たなレーベルが始動します。
Clinck (Oldays)
レコードショップ芽瑠璃堂のレーベル、クリンク・レコードが2014年からシリーズを開始したのがオールデイズ・レコードです。現在に至るまで、60年代の音源を中心に精力的にリリースしています。
このサブスク時代、安易系レーベルのようなコンピでは誰も見向きもしないでしょうから、CDについてはいかに物理メディアとして付加価値を提示できるかというのが肝になるかと思います。例えば詳細な解説、はたまた過去リリースされているにもかかわらず、オフィシャルが現在廃盤にしてしまっているミックス/バージョンなど…。このオールデイズでは、これまで見てきた過去の名門の意思を受け継いだような切り口も多く、Pヴァインやエーサイドレコードからの伝統ともいえるカバー元音源集、同じように元ネタ集、ラジオでかけた曲、M&M『Still I Dream Of You』をリヴァイスしたようなBrian Wilsonワークス集など…様々な切り口のコンピリリースを続けています。
こちらは音楽評論家の大貫憲章さんによる1980年から続くイベント「London Nite」でプレイされた曲やそれらのオリジナルバージョンなどを、隣接権切れの範囲で大貫さん自ら選曲・監修した『Roots Of London Nite Vol.1 Archive ロンドン・ナイトが教えてくれたオールディーズ』(Oldays ODR-7222)。一時期ぴあやソニー、ワーナーなどからLondon Niteのコンピが出てましたが、隣接権切れの範囲でのこういう観点のコンピも面白いですね。
中学生時代、既に芽瑠璃堂の顧客名簿に名前があったという小西康陽さんを選曲・監修に迎えたシリーズ「レディメイド未来の音楽シリーズ」もありました。こちらは『レディメイド未来の音楽シリーズ CDブック篇07 また夜遊びが恋しくなる』(Oldays ODR-7007)。
小西さん選曲のロックンロールをノンストップで繋いだCDと、小西さん監修・アートディレクションのフルカラーのブックレットがついたセットです。ブックレットのほうは小西さんの収録曲解説以外にも大場純子さん・松林天平さん・長谷部千彩さんによる文芸特集「東京ところどころ」、東京の達人15名による街歩きガイド「こんど東京にいくときは。」、大江田信さん、小梶嗣さんの連載などが収録された豪華な内容です。
レディメイド未来の音楽シリーズは洋楽7インチシリーズ『レディメイド未来の音楽シリーズ 7インチ編』とコンピCD&ブックレットセットのシリーズ『レディメイド未来の音楽シリーズ CDブック篇』がありました。それぞれ2ndシーズンまで続き、7インチは24タイトル、CDブックは11タイトルがリリースされています。
「オールデイズ音庫」というシリーズもやっています。ブックレットとのセットスタイルはオーディブックなどのアイディアを下敷きにしているのかもしれません。ルーツ系のコンピについては、芽瑠璃堂の長野和夫さんによるとマニアだけでなく、ライト層含めたリスナーにリスニング範囲を広げてもらうという、地道な種まき作業の一環としてリリースしているのが伺えます。
長野 イベント自体は毎回赤字なんだけど、初心者のレベルアップを狙って継続してるの。
──そういう取り組みって小売業では本当に重要ですよね。
長野 それと「オールデイズ音庫」っていう、冊子とCDがセットになったシリーズもやってる。これは始めてから1年経つから、もういっぱい出てるよ。この「ジョージ・ハリスン特集」は彼のルーツになった音楽の特集。ビートルズ自体は入ってないよ。これはすごく売れたね。しかも800円だから、これだけで言えば売っても売っても儲からないんだけど、これを買った人が必ず関連音源を買ってくれるのよ。これがさっき言った「初心者にどうレベルアップしてもらうか」の一つ。きっかけをお客さんに与えちゃうのよ。
https://musit.net/interview/merurido
レーベル開始から10年以上、長年にわたってかなり手広いジャンルをリリースしているのはさすが老舗のレコードショップのレーベル、といった感があります(ここまで書いて気づきましたが、当記事頭で紹介した西武のWaveもレコードショップなのできれいに一周した感があり、ひとりで悦に入っています)。近年では珍しくなった隣接権切れレーベルとして孤軍奮闘するオールデイズレコード、今後も上記のような興味深い企画のさらなる展開を期待しつつ…今回の記事を締めたいと思います。
参考文献
「著作権Q&A 著作権って何? 著作隣接権とは?」公益社団法人著作権情報センター CRIC
https://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime4.html
「著作物等の保護期間の延長に関するQ&A」文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei/kantaiheiyo_chosakuken/1411890.html
安藤和宏『よくわかる 音楽著作権ビジネス 実践編 3rd Edition』リットーミュージック、2005
『朝日新聞 1987年5月26日』朝日新聞社、1987
UPI Archives Aug. 17, 1987
https://www.upi.com/Archives/1987/08/17/
『The Record 昭和62年10月号 No.335』日本レコード協会、1987
「著作権データベース 著作権審議会/文化審議会分科会報告 第1小委員会の審議結果について」公益社団法人著作権情報センター CRIC
https://www.cric.or.jp/db/report/h2_11/h2_11_main.html
「駅売海賊盤」♪KechiKechi Classics♪
https://kechikechiclassi.client.jp/kaizoku-index.htm
佐藤洋一『Report Leisure No.386 音と映像の館 -「WAVE」の発想と戦略- 』レジャー・マーケティング・センター、1984
Discogs
https://www.discogs.com/
田中勝則『中村とうよう 音楽評論家の時代』二見書房、2017
猪狩誠也、鍋田紘亮『エディター的発想 : ビジネスマンの企画・編集術』筑摩書房、1983
『近代将棋 1975年10月号』近代将棋、1975
佐々木 潤「“いちきゅっぱ!!”なソフトを多数発売した「セントラルソフト」と、ヨット業界に名が知られた「ライブハウスアロー」~永久保存版 激レア!お宝発掘!! 80年代マイコン読本~」AKIBA PC Hotline!
https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/column/retrosoft/1167386.html
The Billboard, April 6, 1985
The Billboard, May 11, 1985
The Billboard, Jan 18, 1986
The Billboard, Aug 19, 1995
Atsuo Onoda 斧打淳央(@ATSUOONODA) X、0:56pm 2024.3.24.
https://x.com/ATSUOONODA/status/1771747816056230328
癒しの音楽ヒーリングプラザ(株式会社デラ) HISTORY 会社沿革
https://www.della.co.jp/pages/company#aboutHistory
M & M ENTERTAINMENT
http://www2.gol.com/users/davidr/m&m/index.html
「音人千一夜 第2回 宮治淳一さん」Circustown.net https://www.circustown.net/ct/onjin/vol_02/index.html
Dennyオクヤマ、佐野邦彦「D's Talk session #22 with 佐野邦彦 part1 "Soft Rock 前記"」酒冨デザイン
http://sakatomi.com/iFrame_4/22_sano-Vanda01.html
The A-Side Records Website
http://www2.gol.com/users/davidr/aside/index.html
「オールデイズ完全カタログ」芽瑠璃堂
https://merurido.jp/oldays_catalog.php
仲川ドイツ「【インタビュー】レコードショップ・芽瑠璃堂 長野和夫が提唱する、ローカルの優位性とBack to Basic」Musit
https://musit.net/interview/merurido

