「毎月あって、しんどいもの」。私たちにとっての“フツー”の生理は、生物界から見たら“異常”!? 類人猿のボノボやチンパンジーから、生理の常識を問い直す!
「生理は珍しい!?類人猿の生理 意外な真実」
ナレーション:増田明美さん
イラスト:名取祐一郎さん
現代の女性が生涯に経験する生理の回数は、およそ450回!でもこの回数、生物学的にみると異常な事態なんですって!教えてくれるのは、野生の類人猿を研究する京都大学野生動物研究センター助教の徳山奈帆子さんです。ヒトに最も近い大型類人猿の「ボノボ」を研究しています。見せてくれたのは、生理中とみられるボノボのお尻の貴重な写真。
(徳山さん)
「子どもとお母さんのボノボなんですけど、子どもが指でお尻を触って、血を触っているんですね。“なんじゃこりゃ?”って顔をしている。お母さんなんかは“なにこれ?”って顔していますよね。ボノボにとっても、生理を目にする機会がそんなにも多くないのかなと私はこの時、思いました。」
野生のボノボが生涯に経験する生理の回数は、50回~100回とのこと。私たちよりずいぶん少ないですが、それにはある理由が。ボノボは8歳から9歳頃、初潮を迎えると初産までの数年間は生理があります。しかし、妊娠すると生理が止まります。さらに授乳期間も生理がありません。離乳すると生理が再開。生涯で平均6回、出産するため生理の回数が少ないというのです。
(徳山さん)
「特にお腹が痛そうでもなく、イライラしている様子も目に見えるほどでもない。いいな~と思いますよね。」
でも動物園では、どうやら事情が違うようです。福岡市動物園のチンパンジーのサクラ。繁殖がコントロールされているため、現代の人間並みに生理の回数が多くなっています。そのせいか、私たちと似た不調にも悩まされているんです。2年ほど前から陰部からの不正出血があるのです。他にも、深刻な子宮の病気になった個体もいました。オランウータンのユキ。死因は子宮体癌でした。死後の病理検査では、子宮筋腫が複数見つかりました。不正出血のあるサクラと子宮筋腫の見つかったユキ。出産回数は1回と0回。何十年にもわたり、生理を経験してきました。
(福岡市動物園 獣医 山﨑理恵子さん)
「月経回数は多かったのかなと。体に負担を及ぼしている可能性もあるかなと思います。」
この動物園ではいま、サクラに「ピル」を飲ませています。生理の回数を減らして、体の負担を抑えようというのです。
「狩猟採集民VS現代の日本人 “自然な生理”とは!?」
ナレーション:増田明美さん
イラスト:名取祐一郎さん
1万年以上前の暮らしを今も続ける、アフリカ・タンザニアのハッザ族。ハッザの女性は16歳頃に初潮を迎え、42歳頃に閉経するまで生理を経験します。平均して6人の子どもを産むため、生涯で経験する生理の回数はおよそ140回。子宮など生殖器系の病気も報告されていません。
一方、現代の日本では、栄養状態がよくなったことで初潮を迎える年齢は早まり、閉経も遅くなっています。出産回数も少ないため、生理にさらされる期間が長くなっているのです。生理の回数が増えると、炎症を起こすリスクが高まり、子宮内膜症を発症しやすくなることも分かっています。生物学的にみると、不自然だという私たちの生理。どう付き合っていけばいいのでしょうか?東京大学医学部産婦人科の准教授甲賀かをりさんに伺いました。
(甲賀さん)
「現代医学のピルみたいなお薬を使って月経を(しばらく)止めている方が、むしろ本来のホモサピエンス、ヒトのメスとしては自然な状態とも言えると思うんですよね。仕事なり勉強なりをきちんとやりたい時期であるという場合は、生理が起きるという事は、乱暴な言い方をすると、女性にとっては全く不必要なことに振り回されるっていう状態とも考えられるわけです。選びたい人生を豊かにするために、生理をコントロールするというのも1つの方法だと思います。」