異物混入アカデミア!   作:伊良部ビガロ

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第10話 雄英体育祭 その7

「君の!! 力じゃないか!!」

 

 最終ステージ二回戦、轟焦凍VS緑谷出久の戦いの前評判は、轟焦凍がどうやって勝つか、が大方の予想だった。

 しかし、実際は意外なほど緑谷が粘っていた。

 開幕早々に氷結で勝負を決めに来た轟だったが、緑谷は即座にワンフォーオール・フルカウルでは対応し切れないと判断し、指を弾いて自損させながら100%の力で氷を砕いていった。

 次第に氷結の個性により、右半身に霜が降りて動きが鈍くなった轟に対して緑谷はここでフルカウルによる機敏かつ強力な近接攻撃を仕掛け、攻勢に転じる。

 このまま緑谷が番狂わせの勝利をつかみ取るかというところで、緑谷の叫びが上がったのだ。

 

「黙ってれば勝てたかもしれへんのに」

 

 ――でも、そうしないから、緑谷出久なんだよな。

 

 オレは浮かぶ笑いを抑えきれないまま、目を瞑る。

 

『楽しみにしとるで、ヒーロー』

 

 次にオレとぶつかることを伝えて、そちらを優先して勝ちにいくんじゃないかと少し期待もしていたが、やはり目の前に苦しむ人がいれば、手を差し伸べずにいられないのが、彼らしかった。

 しかしまぁ……

 

「轟くんの悩み、全然腋臭とちゃうやん」

 

 緑谷のOFA100%と、左側の炎を解禁した轟の激突を見ながら、轟音にかき消える程度の小さい声で呟いた。

 誰だよエンデヴァーが腋臭で轟もそれが遺伝しているんじゃないかと怯え、腋臭の臭いを出さないために炎を封印しているとか言ったやつ。

 それはないだろ、ジャンプのイケメンキャラ枠的に考えて。精々銀魂くらいだよやるとしても。

 氷結で冷やされた空気が炎で熱せられ、熱膨張による大爆発と緑谷の100%の拳がぶつかる直前でセメントス先生によって壁が作られ、威力が軽減された。

 爆風が晴れた先に見えたのは、場外に吹き飛ばされて気絶している緑谷だった。

 この試合は轟の勝利に終わった。

 

「でも、緑谷クンとやりたかったなぁ」

 

 少し口を尖らせながら、控室に向かう。

 次は飯田との対決だ。今の飯田がオレに勝る要素はレシプロバーストという十秒だけ使える超速移動での近接攻撃。

 とはいえ、あの速度ならオレはまだ対応できる。

 

 いっちょ最強キャラっぽく魅せてやるとしますか。

 

「ん……? アカン、緑谷クンの勝ちに金賭けてたから全然お金ないなってもうた」

 

 

 

 予想通り、オレと飯田の二回戦の激突は、飯田のレシプロバーストによる先制攻撃だった。

 

「この十秒で決める……レシプロ・バースト!」

 

 距離を一瞬で詰めてくる。

 確かに速い。並のプロヒーロー、いや速さに限れば多くのヒーローが対応することは難しい神速で迫り、オレに蹴りを放ってくる。

 そう、蹴りを放ってくる。見えているのだ。

 結論から言うと――オレにとっちゃ、まだ遅い。

 蹴りがオレに届く。手応え、いや足応えは飯田に間違いなくあっただろう。

 

「飯田クンの作戦は間違ってないで」

「な――硬い!?」

 

 飯田の高速の蹴りを水の盾を手のひらサイズに展開して受け止める。

 悪いな飯田。

 今のA組でオレと――もちろん手加減した状態ですら――まともな勝負になるのは、轟か爆豪くらいだ。

 個性の相性もあるから一概に二人より劣っていると言うつもりはない。

 ただA組の全員に言えることだが、まだまだ発展途上だ。そもそも、ヒーローになるために戦う技能を身につけ始めて数ヶ月も経っていないのだから、そうそう戦闘能力を備えられるものではない。

 

「クッ、もう一発!!」

 

 再び飯田の蹴りを手のひらで受け止めた。

 

「どういうカラクリか教えたるわ。

 プールに下手な飛び込み方で入ると痛いやろ? それと同じことを手のひらで起こしとるんや」

「……! 高速でぶつかるが故に、水面が固くなり盾のようになっているのか!」

「流石委員長さんや。そゆこと」

 

 水に高速で物体が衝突したとき、水は慣性力と粘性力でその場に留まろうとする。

 結果としてオレが手に用意した水の盾における反発する力は、かなりのものとなるわけだ。

 

「しかし海原くん! 種を明かすのは驕りが過ぎるんじゃないか! 飛び込み競技の選手のように、先端が鋭利なものであれば、水をかきわけることができる!

 即ち、衝撃と反力を打ち消すことが出来るということ!」

 

 レシプロバーストの勢いのまま距離をとると、再び超速で接近し、つま先をオレに向けて飛び蹴りを放つ。

 つま先から入水する飛び込み選手のように、つま先から蹴りを入れれば水の盾は効果を為さないという判断をした飯田の思考は正しい。

 だが所詮それは水の物理現象の話であって、そこにオレの原子レベルで操作できる個性の力が加われば、さらに一つ上の次元の話になる。

 バキン、という蹴りと水、そして手のひらがぶつかるには似つかわしくない音が甲高く響いた。

 つま先は再度水の盾に受け入れられ、その反動による衝撃に飯田は顔を痛みに顰めた。

 あの勢いだ、流石に右足の指の骨はイッただろう。

 

「アカンよ飯田クン。ボクのこと舐めすぎや。水が逃げるから衝撃は緩和されるけどな、ボクが水を操作して逃げ場を無くしてしまえば、硬い水面のままや」

「ぐぅっ……!!」

 

 右足の指先といえど、走るためには必要不可欠の部位だ。骨が折れたら片足で立つのが精一杯になる。

 飯田は左足で跳ねながら、よろめきつつ距離をとるが、そのときには既にレシプロバーストの制限時間に到達していた。

 ぶすん、とエンストした音と共に黒煙が彼のマフラーから吐き出される。

 

「さて飯田クン。詰みってやつやね」

「……参った」

「勝者、海原大海くん! 準決勝進出!」

『海原大海、なんと攻撃すらせずに完勝ッ! 防御を攻撃に転じたスマートな作戦だったぜェーッ!』

『水の個性で出来ることが半端ないほど多い。応用力がそのまま対応力に活きているな』

 

 足を押さえて蹲る飯田。悔しさに震えているが、彼は顔をあげた。

 

「海原くん! 君は強い……恐らく、A組の誰よりも……でもいつかきっと、必ず越えてみせる!」

 

 その気迫にオレは笑った。

 

「それじゃあ、それまでずっと目標として相応しくないとアカンな」

「うーん、青春ッ! 好みっ! 青春探索隊出動しちゃうわ〜ッ」

 

 ミッドナイト先生が少し気持ち悪くなっていたがそれを見ないふりをする情けが雄英生徒達にも存在した。

 

 続く二回戦は芦戸と常闇の対決だったが、変幻自在で実体を持たないダークシャドウに対して、芦戸の酸は効果が薄かった。

 速攻で強襲をかけられ、最終的には芦戸が場外となり、常闇が勝利。

 攻防一体かつ高い攻撃力を持つダークシャドウと常闇に対してプロヒーローたちも注目し、高評価だった。

 最後の二回戦は砂藤力道と爆豪勝己の激突だった。

 事前に砂藤が爆豪への対策をオレに相談してきており、持久戦は爆豪が有利だから早めに決めにいけとアドバイスした通りに砂藤は速攻を仕掛ける。

 パワーは爆豪に勝っているが如何せん機動力と反射神経、そして戦闘センスにおいて爆豪が圧倒的に上回っている。爆豪の動きや戦闘におけるカンは下手なプロ以上で、A組の中でも随一。

 騎馬戦を共に戦った仲間として申し訳ないが、砂藤は相手が悪すぎた。

 攻撃力に関しても爆破の個性で、パワーに劣る面を容易にカバーされてしまう。最終的にはシュガードープの反動で動きが悪くなったところを、両手の爆破で吹き飛ばされ、砂藤が敗北した。

 これでベスト4が出揃う。

 氷だけでもクラストップレベルだったが、緑谷戦で炎を解禁し隙がなくなった轟焦凍。

 中距離戦での高い万能性を持つダークシャドウを従えた常闇踏陰。

 戦闘センス、個性の攻撃力はA組で文句なしにトップクラスの爆豪勝己。

 そしてオレ。

 体育祭は佳境を迎える。

 

『いよいよ準決勝! 昨年優勝の勢いのまま突っ走るのか!? 海原大海バァーサス! 圧倒的な個性でここまでド派手に勝ち抜いてきた轟焦凍! バトル……スタァートッ!!』

 

「”濁龍(だくりゅう)”」

「凍れッ」

 

 お互いの取った行動は大質量での先制による一発KO狙いだ。

 轟の右足から氷が生み出され、オレの右手から水の龍が飛び込んだ。

 空気が一瞬で冷やされ、周囲に冷気をまとった突風と雨のように水しぶきが降り注ぐ。

 

『いきなり全開だぜ二人とも! ど派手に激突開始だぁーッ!』

「水だから凍らせられるかと思ったが、やっぱり無理か」

「まぁ水言うても常に動いてる水やからね。とはいえまさか全部散らされるとは思わんかったわ」

「そうか……なら、こいつはどうだ!」

 

 氷塊が地面から伸びる。

 轟の姿を隠し、視界を覆い尽くす。瞬く間にステージ全体が巨大な氷に埋め尽くされたが、オレに届く氷は両手で触れて分子運動を大きくさせ、すべて水に変えてしまう。

 

「――やっぱりな」

 

 声が響く。水分で居場所を感知しようにもこれだけの氷で覆われていたら、どれが轟でどれが氷か、判別が曖昧になる。もう少し集中すれば居場所を掴めそうだが、流石に隙になる。

 氷の城あるいは迷路と表現できるこの空間のどこかに轟は潜んでいた。

 

「海原、お前は水を自由に操っているが、自分が出した水以外は触れないと溶かしたり、操ることはできねえみたいだな」

 

 騎馬戦のとき、氷の壁を抜ける際に水分を操作して突破したが、まさかあの瞬間だけを見て判断したのだろうか。

 素晴らしい視野の広さと洞察力だ。

 

「もしできるなら全部溶かして押し流しちまえばお前の勝ちだもんな。正直、それができるなら相性最悪だと思ったが……最強に見えて、できないこともあるんだな」

「そらそうよ。最強でも万能やあらへん。でも轟クンが最強と言ってくれるなんて嬉しいなァ。自分が一番と思わへんの?」

「一番になると思っていた。けどそれは一番じゃないとわかっているから、そう言うんだ。さっき気づいたよ」

「そか。色々とあったんやね。やっぱり緑谷クンと?」

「ああ。アイツ、無茶苦茶やって人が抱えてたもんぶっ壊していきやがった」

 

 ああ、その節は……腋臭と勘違いしてすみませんでした。

 

「大会前にちょっと口出ししてもうたなぁ、ボクも。色々とすまんな」

 

 いやマジで。腋臭全然関係ないし。

 奇跡的に話の内容的には全部わかっているように噛み合っていたけど、見当違いなことを言ってしまっていたし。

 そうだよな、ジャンプキャラが腋臭なわけないよな……いやジョジョの奇妙な冒険のミスタは腋臭だったな。ごめんて。

 轟はどこかに隠れたまま言葉を返した。

 

「別にいいんだ。でも、あれ以来、何が正しくて、どうすればいいか、わからなくなっちまった」

 

 心の整理がついていないことがありありと伝わってくる弱弱しい声音。

 確かにそういう経験はオレにもある。オレが吹っ切れたのも緑谷出久のおかげ(、、、、、、、、)だから、効果的なアドバイスはできなかった。

 

「ほな、ボクに勝ちを譲ってくれるん?」

「……それは、嫌だ」

「せやろな。今も氷ん中をあちこち、ゆっくり移動して奇襲を狙っとる。勝ちを諦めてないんやろ」

 

 オレは手のひらに溜めた水の塊を見つめた。

 わずかな空気の振動を捉え、増幅し、波紋にしてレーダーのように大まかな方向を捉えている。観客の歓声も混じって精度は曖昧だが、水分の感知とあわせればまったくわからないという程ではない。

 

「ああ――俺も、ヒーローに……なりてぇ」

 

 頭上の氷が砕け、落ち始める。

 水のレーダーに反応はない。いつ砕いた? それともあらかじめ狙って最初から脆く造形していたのか。

 

「”多鬼(たき)”」

 

 鬼をかたどった水が下から上へ突きあがり、落ちてくる氷塊を砕き貫いた。

 観客席からは大氷塊の中から噴出した水が潮吹きするクジラのように見えるかもしれない。

 オレの意識が上へ向いた瞬間に氷の壁から轟が飛び出した。

 奇襲じみた近接攻撃。

 体術にも優れているオレに対して接近することは轟の個性を考えれば向いていないが、だからこその奇襲だろう。

 

「でも甘いで」

「ガハッ!?」

 

 攻撃をいなして反撃を叩き込む。

 轟の身長はだいたい170cmなかばで、オレは191cmの長身だ。攻撃時のリーチからして有利なオレに、体術で劣る轟では圧倒的に不利。

 

「だが、捉えた……!」

「ん?」

「大技ばっかだから、こういう小技は頭にねえだろ……!」

 

 右手が一瞬触れたことで、オレの左脚から腰にかけて凍結が進む。

 不利を承知で攻勢を仕掛けたのはこの直接凍結狙いか。

 

「お前ならすぐに溶かすくらい個性で造作もねえだろうが……隙だぜ」

 

 好き? 愛の告白か?

 なんて茶化すまもなく凍り付いていく。

 いい判断力だ。左足が完全に凍結したのを見て轟が目の前で右足を振りかざし、地面に叩きつけて決め技の氷結攻撃を放とうとしていた。

 

「無理に動くなよ……といっても、神経まで凍りついて、まともに動かせねえだろうがな」

「ああ、問題あらへん。ボクの腰から下は前から動かへんねん(、、、、、、、、、)

「――は?」

 

 轟の呆けた声。

 凍り付き、神経すらまともに働かない、本来ならば凍傷として壊死しても不思議ではない凍結を受けた左足を振り抜く。

 腕で防ぐ轟だが、わずかに後退った。

 

「動いてるじゃねえか……!」

 

 そりゃそうだ。腰から下が動かなければ人は立っていられない。

 オレはこれまで立つ、歩くどころか蹴りを放ち、ジャンプもし、自由に動き回っている奴が腰から下が動かないなど、信じる人は誰もいない。

 だが実際はできている。

 

「”鷹波(たかなみ)”」

 

 凍結が走るより早く脚元から巨大な翼を広げた鷹の形をした波が轟を飲み込んだ。

 氷塊に背中を打ち付け、咳き込む姿を見逃さず、氷りついた左足を動かして一気に走る。

 轟が再度氷結させようとするが、これまでの攻めで右半身に霜が降りていて動きが鈍くなっている。勝負あった。

 

「”濁龍(だくりゅう)”!」

 

 目の前で水の龍を解き放つ。

 水流に飲まれた轟は氷塊を割り、突き進み、場外に押し流された。

 

「炎、使(つこ)うとっても相性悪かったなァ」

 

 個性で凍った左足を溶かしながら、びしょ濡れで場外で倒れ伏す轟に声をかけた。

 

「轟くん場外! 勝者、海原くん!」

『ここでも轟相手に勝利! ど派手な水と氷のバトルは海原大海だ! 前人未踏というか前代未聞、史上初にして名誉ある不名誉な記録、二年連続雄英体育祭一年生ステージ優勝は目の前だ!』

『やめてやれ』

 

 プレゼントマイク先生の中々エグい強調を聞き流しながら轟に歩み寄る。

 

「立てるか?」

「ああ……さっきの腰から下っていうのは、どういう意味だ?」

「去年のインターンで大怪我して留年するハメになったんやけど、その時の怪我の後遺症で脊髄損傷して下半身不随やねん。だから水分操作の個性で常に神経の電気信号のやりとりを伝達させてマニュアルで筋肉やら色々を動かしとんねん」

「嘘だろ?」

「信じるか信じないかはキミの自由やで」

 

 先ほど凍り付いた左足は神経まで凍り付いていた。本来であれば筋肉も凍結し、まともに動かせない。そしてすべて溶かすには時間が足りなかった。だからオレは左足の主要な血管だけを溶かして血流を再開させ、水を筋肉に進入させた状態で水流の力を利用して左足を振り抜いた。

 言ってしまえば筋肉の力ではなく外付けの動力で動かしただけだ。

 もちろん外から見ている観客やヒーローたちからは凍った脚を頑張って振り抜いたようにしか見えないから、オレがやったことのすごさは欠片も伝わっていないが。

 オレは歓声を浴びながらステージを後にした。

 

 準決勝第二試合は常闇と爆豪の対決となった。

 お互いに戦闘力が高い個性ではあったが、常闇のダークシャドウが意外なほど攻めに出られなかった。

 爆破を受けるたびにダークシャドウは弱まっていく。

 確か第二種目でも騎馬戦で上鳴の放電を受けた際にかなり弱弱しい反応を見せていたところも見るに、確か強い光に弱い特性を持っていたはずだ。

 最終的に爆豪の攻勢に押されて常闇は降参した。

 決勝の相手は爆豪に決定した。

 

 ☆☆☆

 

 爆豪勝己が扉を開けると、控え室に何故か海原大海が椅子を並べて簡易ベッドにして寝そべりながらスマホを眺めていた。

 

「ん……? 爆豪クン、控え室間違えとるんやない?」

「あ――? ここ控え室……2の方かクソが!」

「おっちょこちょいやねぇ。決勝戦はよろしくなァ」

 

 顔だけ上げて、相変わらず見えてるのかわからないような糸目のまま手を振る海原。自室でリラックスしているかのような振る舞いに、もともと低い爆豪の怒りの沸点へあっという間に到達した。

 

「クソ糸目野郎! テメェ決勝前になに余裕ぶっこいてんだ殺すぞ!」

「大事な決勝やからのんびりするんやないの……アレッ、1号艇何しとるん!?」

「テメェ何やってんだマジで!」

「何って、大事なお金稼ぎや。今ボートレースが熱いんや……熱かったんや」

「学生のクセして競艇してんじゃねえ退学になんぞ!! ってか外してんじゃねえよボケ!!」

 

 海原は悔しそうに呻きながら体を起こした。

 飄々として、留年した落ちこぼれの癖して、誰よりも先に立っているこの男が爆豪は気に食わなかった。

 USJ襲撃事件のとき、あのオールマイトと並んで戦い、ヴィラン相手に圧倒した立ち回りを見せた。

 それに対して自分はチンピラを叩きのめした程度で、それどころか脳無に襲われた際に動けず、路傍の石ころ程度の存在だったはずの緑谷に庇われ、その後も海原に守られた。

 

(プロヒーローに、オールマイトに並ぶ存在のワケがねえ)

 

 幼い時から、ヴィランに、災害に勝つオールマイトの姿に憧れた爆豪には信じがたい事実。

 そこに並ぶのはオレのはずだ、お前じゃねえ、あの次元に立ち、越えるのは俺なんだと、爆豪は奥歯を噛みしめながら睨んだ。

 

「テメェは今、クラスで一番だ」

「爆豪クンが褒めるなんて怖いわァ。本当に思っとるん?」

「思ってねえよクソが!! オレが今日、テメェを超えるからだ! 糸目野郎、テメェを完膚なきまでに叩き潰して、圧倒的な一位をオレがとる……!」

 

 海原はスマホをテーブルに置き、立ち上がる。

 細身に見えるが、やはり背が高く、爆豪は自然と見下ろされた。

 

「嬉しい宣戦布告(ラブコール)ありがとさん。ボクも本気を見せたるさかい、爆豪クンも全力で頼むで」

「言われるまでもねえ……容赦なく望み通りブッ殺してやるよ……!」

 

 海原に背を向けて爆豪は控え室を後にした。

 強力な個性に、優れた身体能力、体術、そして応用力と機転すべて兼ね備えていると認める相手に怯むことなく、むしろ闘志を燃え上がらせていく。

 去年優勝した海原が決勝まで上り詰めた。その海原を正面から叩き潰せば、誰もが認める完全なトップとなる。

 爆豪は口角を吊り上げながら廊下にブーツの足音を響かせた。

 

 ――まもなく、決勝戦が始まろうとしていた。




峰田「飯田の負け方、なんかタンスに足の指ぶつけたみたいな反応だったよな」
麗日「ブフォッ」


主人公の能力を盛る……盛るペコ……
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