異物混入アカデミア!   作:伊良部ビガロ

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第7話 雄英体育祭 その4

 騎馬戦が始まると同時に、大半のチームが緑谷の騎馬チームへ殺到した。

 

「結局のところ、この種目は実質1000万ポイント争奪戦だろ!」

 

 B組のチームが突撃する。

 A組の生徒も容赦なく緑谷狙いであり、瞬く間に囲まれていく。

 しかし緑谷チームはサポートアイテム――サポート科らしき生徒が同じチームを組んでいる――や麗日の個性を利用して空へ逃げると、追撃に対しても常闇の個性“ダークシャドウ”が死角までカバーし、窮地を脱した。

 

「SMASH!!」

「このパワーはっ!」

 

 肉薄されてもOFAの力をわずかに引き出し、振り抜いた腕から生み出される風圧で簡単には近づかせない。距離が開けば即座にダークシャドウが間に入り、距離を保つ。

 接近戦は緑谷、中距離戦は常闇、回避のための機動力はサポート科生徒のアイテムと麗日の個性”無重力”で確保と中々バランスの良いチームになっている。

 

「おお、やるやん緑谷クン」

「海原どうする? 一位狙うか?」

「序盤にとっても勿体ないわ。あと心操クン、キミの個性はあまり明かさないほうが有利にやれるやろうから、しばらくは回避と様子見やね」

 

 大半が緑谷に集中している、かと思いきや。

 

「心操気をつけろ、左からB組の騎馬が!」

「やべえぞ右からも来てる!」

「あちゃー、ボクら囲まれとるなァ。心操クン、絶体絶命やで」

「なんでB組から囲まれるんだよ! お前らなんかやったのか!?」

「まァまァ。予想はつくわ。何も問題はないで」

 

 オレは右脚でダン、と地面を踏みつけた。

 シングルアクションに遅れて、足元から大量の水が波濤の如く、全方位に向けてあふれ出す。

 B組の騎馬チームすべてが波にのまれた。

 

「ぐわあああ!?」

「この大量、というより、大質量の水はぁ……!!」

「ん!?」

「OH!? SPLASH!?」

「ゴボゴボゴボゴボ」(吹き出しが宙に浮かんでいた。不思議な個性だ)

 

 全員が水流の中に埋もれて、立つのが精いっぱいの状態になるのを確認してから周囲を警戒しつつ距離をとる。

 

「派手にやると悪質な騎馬崩しとして失格扱いになってまうから、あくまで一割以下の出力やで。みんな気ぃつけてなぁ。水は怖いで」

『昨年優勝者の海原が前騎馬を務める心操チーム! B組複数から攻勢を受けるが一蹴ーッ! 古来から人類は河川の氾濫と戦ってきたが、それが繰り返される!』

『何言ってんだお前』

 

 オレたちの得点合計は560点の5位スタート。鉢巻を確保しないと上位進出は叶わない。

 心操の個性を活かすために最終盤に攻勢をかける作戦をとっている以上、鉢巻を取られずにいることは必須。

 

「よし、海原の個性で足が止まった! このまま鉢巻をとれるうちに……」

「砂藤クン、慌てるのはアカンで。ボクのあの水はあくまで足止め。すぐに抜け出して態勢を整えとる。A組のことをよく見とる証拠やね、今のボクらの騎馬に中距離攻撃や範囲攻撃ができるのがボクだけやとわかっとる。

 さらに心操クンが騎手として戦えるタイプと見られてないから、近づきたくてみんなウズウズしとるで」

 

 背後へ回り込んでくる気配。うまいこと喧騒やほかの騎馬チームに隠れているが、最短で狙いに来ている。

 オレの個性”水分操作”はいってしまえば水を感知し、操るだけの個性だ。だが、徹底的に自己分析をし、磨きぬいた。その結果、出力と共に精密性を高めるにつれて、文字通り原子レベルで水を感知し、操作も可能なレベルに至った。

 水とは水素原子と酸素原子で構成されている。だから、水分子を分解し酸素と水素を生み出すことや、水分子の運動量を上下させて温度の操作も可能だ。

 そのレベルで水を知覚可能なオレにとって、人体という60~70%が水で構成された物体の動きが把握できないわけがない。

 つまり――

 

「心操クン、そのまま頭を前方に倒すんや」

「ッ!?」

「かわされたッ!?」

 

 心操の後ろ――尾白の尻尾が届かないよう砂藤側から、手を伸ばしてきた金髪のB組生徒が不意打ちしてきているのも、見なくともわかるということ。

 

「くっ、離れろ!」

 

 尾白の尻尾がB組生徒の騎馬に振られる。オレたちは距離を取りながら反転して相対した。

 

「今のよけるなんて……しかも普通科の生徒に。落ちこぼれだったわりには良い反応だった。いや、去年優勝したそこの留年生の指示があるからかな? それもないかぁ……だって結局は留年した落ちこぼれ! 落ちこぼれ同士で組んでるんだからねぇ!」

「よく喋るコやね。奇襲失敗したのが堪えとるみたいやけど……見え見えの挑発をしとるあたり、焦りが見えとるで。キミはB組のコかな」

「僕の名前は物間。ヒーロー科B組さ。対戦相手のことをちゃんと調べてないなんて、愚かにもほどがあるね」

「なぁ海原。やっぱりヒーロー科は偉そうなのが当たり前(デフォルト)なのか?」

 

 騎馬の上で心操の呆れる声に、オレたち三人は否定できない、と内心で呟いた。

 そんなオレたちを煽った物間と名乗った生徒が騎手を務める騎馬チームが中心となり、B組の大半の騎馬チームがオレたちを囲んでいた。

 尾白と砂藤は警戒と焦りを見せているが、オレが動じないのを見て、声を上げることはしていない。

 物間が首から下げる鉢巻は三枚ある。よく見たら情緒爆発少年こと爆豪チームの鉢巻や他のA組チームの鉢巻を奪い取ったあとだった。

 ほかのチームの多くが鉢巻を奪取しているがいずれもA組の騎馬チームのもので、1000万を狙いに行くB組生徒は二組ほど。そして戦術的によく練られた間合いをキープしながら、A組の中で数少ない、得点を保持している心操チームを狙いに来ていた。

 

「ふゥん……合点がいったわ。

 キミら、第一種目で手を抜いてたんやな。大方、上位として次戦進出する数を予想し、A組の個性を観察にまわっていた、といったところか」

「へぇ、流石二年生、ご明察。あ、なれなかったんだっけ、悪いね」

「せやな、キミらのようなコたちが襲ってくると焦ってまうわ。下から足を引っ張られるカンジが特に」

「おい海原」

「心操クン。まだ早いて」

 

 口喧嘩に対して口で返す。

 長らくやっていなかった煽り合いを少し楽しむ反面、周囲の反応を無視することはしない、それでいて心操にも切り札はとっておかせる。

 

「その下から来る僕たちに負けるんだよ、A組は!」

 

 物間の騎馬たちが突っ込んでくる。

 それに合わせて、角を生やした女子のチームや、毛むくじゃらの大男のチームも襲い掛かってきた。

 

「いやァ、怖いわー」

「言い訳は負けてからするといい!」

「そんなんちゃうわ、雑魚が」

 

 個性を発動させ、右の掌に水が集まり、球体となる。ちょうどソフトボールほどの大きさの塊だ。

 砂藤、尾白、心操、すまん。見せ場はこのあと用意できるはずだから、今はちょっと遊ばせてくれ。

 

「本気でボクに勝てる。そう思てることが怖い言うてんで」

 

 水球から水が触手のように広がり、そして柔らかな動きで空気を裂いた。

 オレは見せつけるようにうっすらと瞳を見せるように瞼を持ち上げて笑った。

 

「色々と策を練ったようやけど、無意味やで。ボクとの力の差の前には」

「――! 円場、ガード!」

 

 言葉を皮切りに広がった水の触手が全方向に広がった。

 三本の水の触手が物間の首元に殺到する。直前に騎馬を組んでいた生徒――円場と呼ばれた彼が、息を吹くと壁のようなものが生まれたが、迂回して物間へ水が伸びた。

 物間も円場と同じように空気の壁を展開するが、一方向だけの壁など無意味だ。

 それすらもかわして瞬く間に一本奪う。

 一本しか奪えなかった――即座に逃走を選択したことは、素直に褒めてやろう。

 

「ワオ!? 鉢巻が!」

「あっ取られた!」

「なんですと!?」

 

 枝分かれした複数の水の触手は空を覆い、B組の生徒たちは反応すらできずに他三チームはオレに鉢巻を一気に奪い取られた。

 これで1170ポイント。現時点で2位に進出した。

 

「くっ、すぐに取り返せば……!」

「無理、無駄やで」

 

 指を鳴らすと同時に水の触手の状態を変化させる。水の分子運動速度を大きく――つまるところ、液体から気体へ。

 一瞬で水蒸気となった水が周囲を白い霧で覆い尽くした。

 残ったチームがオレたちのチームを見失い、奪還すら困難になる。

 

『心操チーム、というか騎馬の海原がなんと一瞬でB組のメンバーほとんどの鉢巻を奪取! 水の個性なのになんだあの触手はァーッ!?』

『個性そのものはシンプルで決して珍しいものではない。だが個性の操作性や精度に圧倒的な差をつけている。一年の経験と鍛錬の差では片付けられないほどにな』

『さぁ心操チームはこのまま逃げ切りを図るのか、それとも物間チームへ追撃をするのかッ、いや、物間チームもここで残りの鉢巻を奪われたァーッ!

 残り時間も僅かになりつつあるがどんどん展開が変わっていくゥーッ!』

 

 振り返るとめちゃくちゃキレてる爆豪が空気の壁を粉砕して物間チームから鉢巻を奪い返していた。

 あの挑発は冷静さを失わせるものだっただろうが、挑発しなくても既にキレてる爆豪には逆効果だったようだ。

 

「おいコラァ!待ちやがれクソ糸目ェ! それは俺が奪い返す鉢巻なんだよ!」

 

 やっぱり追撃してきた。

 その怒声に追われる心操が焦りを見せる。

 

「あいつだ、あの俺以上に性格がイカれたやつ!」

「尾白クン」

「問題ないよ、せいっ!」

「ああっ俺のテープが!」

 

 直接鉢巻を奪い取ろうと伸ばしてきた瀬呂のテープを尾白が弾いた。

 両手で騎馬を保持しながら後方からの攻撃には尻尾で確実に防御するスタイルは地味ながら大いに助かっていた。

 ステージの端では氷の壁ができている。轟が氷で壁を作り、1000万ポイントを持つ緑谷とのタイマンに持ち込んだのだろう。

 

「心操クン、そろそろ出番やで。チャンスを逃したらアカンよ」

「ああ、わかってる! このまま追撃をかわしつつ、1000万ポイントをとる!」

 

 騎馬は氷の壁に突撃する。

 オレが足を氷に押し付け、氷の分子移動速度を早める。あっという間に水になって氷の壁にトンネルができた。

 

「マッスルチーム突入だーっ!」

「後ろから爆豪も来る、塞げるか海原パイセン!?」

「ええよ塞がなくて。どうせ爆豪クンなら爆破で来るやろ。流石にそこまでスムーズに凍らせることはできないんよ」

 

 氷の壁の中では丁度今、轟チームが緑谷チームに襲いかかっていた。

 

「取れよ、轟くん! “レシプロバースト”!!」

 

 轟チームの前衛騎馬を務める飯田が叫ぶ。

 飯田の脚から生えたマフラーから噴いた火がオレンジから青に変わり、直後に凄まじい速さで緑谷の傍を過ぎ去った。

 緑谷が指示を飛ばすよりも早く、轟が鉢巻を奪い取る。速度に反応できていない。

 

「OFAも動体視力まで高めるわけやないんかな?」

「パイセンなんか言ったか!?」

「なにも。1000万は轟クンのチームにあるで、心操クン」

「ああ、このまま接近して奪い取る!」

 

 オレたちは轟のもとへ襲いかかる。

 緑谷チームも残り時間僅かで1000万ポイントを失ったことで0ポイントとなっている。鉢巻を奪わなければ上位進出は不可能だ。

 奪い返そうと一気に接近する。対する轟チームは飯田が動けていない。マフラーから黒い煙を吐き出して、エンジンストールのような状態になっていた。足が止まっている。

 

「いくぞ海原、尾白、砂藤!」

「ええよ」

「ああ!」

「オウ!」

 

 好機と見るやいなや突貫する。背後からは爆豪チームが怒鳴り声(ほぼ爆豪だけ)を上げつつ猛追してくる。

 

「半分野郎! クソデク! クソ糸目! 全員もれなくぶっ殺して鉢巻奪い取る!!」

 

 爆豪が宙へ飛ぶ。爆破の個性を利用した飛行は言葉にすると簡単だが、常に推進力をかけつつ、体勢を保持しなくてはいけない。

 それを簡単にするのは賞賛する他ない。とはいえそのままにはやらせない。

 

「騎馬へおかえり」

「クソが!」

 

 ぶしゃーと水鉄砲のように放水する。爆豪は躱したあと、諦めて瀬呂のテープによって回収されていた。

 しかし騎馬で前進してきており、轟チームに向かうオレたち心操チームへの攻撃を緩める気配ない。

 

「チッ……一か八かだが……八百万!」

「お任せ下さい!」

 

 なにか布のようなものを被る轟チーム。遅れて上鳴の体がバチバチと明るく輝き始めた。

 無差別放電、となるとあの布は絶縁体シートで全方向攻撃か。

 

「いくぜこれでカンバンだ! 無差別放電130万ボルトォ!!」

「常闇くん!」

「ダークシャドウ!」

「ヒエエッ! 守ラナイトイケナイヨナァ!?」

 

 電撃が周囲に撒き散らされる。眩い輝きとともに電撃が到達する前に、オレは騎馬ごと水で覆い球体を生み出した。

 

「“水亀(みずがめ)”」

 

 電気が水で作られた壁を滑るように散っていく。

 

「ウェ〜!? 水に電気の相性はいいんじゃないのぉ〜?」

「おそらく海原さんのあの水の壁は純水! 純水は電気を通さない絶縁体です!」

「水で守るってんなら、凍らせるだけだ」

 

 遅れて電気で足が止まったチーム全てに向けて氷結が放たれた。

 地面に冷気が押し寄せて瞬く間に凍っていく。

 単独ならまだしも、騎馬を組んだ状態で躱して溶かすのはロスがある。それよりも早く動くならば、最終兵器の出番だ。

 

「砂藤! 時間制限はもう気にしなくていい!」

「まかせろ!! “シュガードープ”!!」

 

 心操の指示に砂藤が角砂糖を数個口に流し込む。

 見てるだけで喉が渇く光景だ。

 その行為の直後に元々大きく太い砂藤の筋肉が膨れ上がった。

 まさに筋肉の鎧が隆起しているようだ。

 

「全員、とべぇーーッ!!」

『心操チーム砂藤力道の個性で騎馬二人と騎手を宙に投げ飛ばしたーッ!? 氷結回避のためとはいえド派手でやり過ぎだろーッ!』

「あんな方法で氷を回避だと……!? だが着地で狩らせてもらう!」

「回避ちゃうよ、攻撃のためや!」

 

 砂藤が周囲の氷を足で吹き飛ばす。オールマイトのOFAほどではないが雄英に合格するほどの増強型のパワーともなれば、削岩機の如く氷を破壊していく。

 すぐに足場を確保するとまず砂藤は尾白の尻尾を掴んだ。

 

「尾白ォ!」

 

 今度は尾白がオレに向けて手を伸ばす。

 

「海原パイセン!」

「あいよ」

 

 両足首が尾白に捕まれた。

 オレは体勢を整えたまま、空中に打ち上げられた心操の両足を掴みとる。

 

「心操クン、やるで!」

「本当にやるのかよ!?」

 

 悲鳴じみた声こそ上げているが、心操の顔には楽しそうな笑みが浮かんでいた。

 ピンチのとき、苦しいとき、そんなときに笑えるような奴が一番強い。心操はその素質を満たしている。

 

「いくぞ三人とも!! オラァッ!!」

『心操チームなんと一度空中で騎馬を崩し……合体したァーッ!? 砂藤力道が尾白を掴み、尾白が海原を、海原が心操を掴んでいる! そして、思い切り……振り回したーっ!?

 まるで人間鞭(ヒューマンウィップ)だ! お前らヒーローじゃなくてサーカス並だなこりゃ!!』

 

 数メートル離れた場所から轟への強襲。

 轟が遠心力で唇を捲りあがらせながら迫る心操に氷を放とうとする。しかし、右腕が僅かに躊躇する。

 

(――そら、迷うやろ)

 

 ここまで心操は個性を見せていない。

 轟にしてみればまったく未知の相手。その相手がA組で近接戦闘が優秀なメンバーたちを引き連れ、そして中距離で攻撃を放てるオレを差し置いて曲芸じみた動きでの奇襲を選択したことに、疑念が生まれる。

 自分の個性に対して有利な個性を持っているのでは、という疑念だ。

 轟焦凍は間違いなく優秀だ。個性の強さはもちろん、身体能力も高いし判断能力もヒーロー科の一年生離れしている。

 だからこそ、迷う。

 迷えば、反応が遅れる、それもわかる。

 

「お前、エンデヴァーの息子なんだってな! コネがあるとヒーローになるのも簡単そうで羨ましいよ!」

 

 そしてその言葉に、轟は反射的に答えてしまうことも、わかる。

 

「テメェ――」

「轟さん、回避を、轟さん!?」

「轟くん!?」

 

 洗脳により意識を失う轟。

 ぶん回されている心操にはここから新たな命令を送る余裕はないが、動きを止めて無力化できればそれで充分。

 視界の隅に映る心操の表情は決意と覚悟に塗り固められていた。絶対に獲る、という強い執念が、今、形になる。

 

「おっしゃああっ!」

『心操チーム、ここで1000万ポイントを確保ォーッ!! 普通科C組心操人使、大金星だー!!』

 

 崩れた騎馬が落ちればペナルティもあるだろう。

 だが、慌てない。

 

「さぁ凱旋や」

『地面に落ちる直前で溢れ出す水流が心操をキャッチ! そして波に乗ってそのまま逃走からの体勢の立て直し完了ーッ! ここで一位入れ替わったところで、タイムアーップ!!』

 

 最後まで1000万ポイントを狙って飛びかかっていた爆豪が間に合わず地面に落ちた。

 大歓声がスタジアムのオレたちを包んだ。最後の大サーカスぶりも注目を浴びて、口々に喝采を送っている。

 砂藤のパワー、尾白のテクニカルな動き、オレの圧倒的な個性の汎用性。

 

「……心操クン」

「はぁ、はぁ……気持ち悪……なんだ……?」

「ああ、遠心力で吐き気か……とにかく心操クン。決勝進出おめでとさん」

 

 右手を差し出すと心操がつかみ返す。

 疲労困憊といった様子だが目の光は衰えていない。

 

「次は敵でも容赦しないからな……あとは自分の力で勝ち取ってみせる」

「その意気や」

 

 にっかりと笑うと心操もまた、笑った。

 

「うーん……たまらないわ……最高! 青春の一ページ!!」

 

 ミッドナイト先生がオレたちのやり取りを見て、息を荒くしていた。

 リアクションが不審者のソレだ。

 

『第二種目騎馬戦の優勝は心操チーム!! 2位は轟チームで3位は爆豪チーム、そして4位は最後に轟チームから鉢巻を奪い取った緑谷チームだ!』

 

 この四チーム、計十六名が決勝トーナメントに進むことになる。

 最後緑谷はフルカウルで突撃し、洗脳から覚めた直後の轟から鉢巻を奪取し、ダークシャドウがそのまま緑谷を回収したという流れで奪い取っていた。

 流石主人公、諦めないことがいい結果を引き寄せるわけだ。

 轟や爆豪が悔しがる様を横目にチームでお互いの働きを称え合う。

 次は決勝トーナメント。

 オレは緑谷に歩み寄った。

 

「緑谷クン、決勝進出おめでとう。麗日チャンも、ええと……サポート科の女の子も、常闇クンも」

「海原さん……! う、うん……なんとかね……最後はラッキーパンチだったけど」

「ええねん、最後の勝ち負けは運次第や」

 

 体育祭直前はOFAを数パーセントの出力で一瞬発揮していた緑谷が、既にフルカウルという常に5%を維持する戦い方を身につけている。

 窮地における成長速度には目を見張るものがある。オレと戦ったらどこまで成長するかな、と少し楽しみだ。

 種目は確かタイマンバトルになるはずで、もしかしたら戦うかもしれない。

 

「緑谷クン…楽しみにしとるで」

「あっ……僕も、全力で戦います!」

 

 第一種目で見せていた迷いの色はもうない。むしろオレが相手だろうと勝ってみせるという強い意志が灯っている。

 

「ええやん。楽しめそうで」

 

 緑谷くんに対しては少しだけ本気を見せても楽しいかも、なんて思いながら、A組の皆と合流した。

 このあとは昼食を挟んでレクリエーションの予定だ。

 せっかくの体育祭、楽しめるところは楽しまないとつまらないだろう。

 オレは今はまだ、学生なのだから。

 




ヒロアカのオープニング集を見ていたので遅刻です。


次回予告

爆豪「オイコラ芦戸ォ! 勝手に唐揚げにレモンかけんじゃねえ!」
芦戸「いいじゃん酸味が油っけを爽やかにしてくれるんだから!」
切島「漢は黙って何もかけずに食うのが一番だろ!」
芦戸「あたしは女だよ!」
瀬呂「意外と好みが別れるよな唐揚げにかけるもんって。俺はマヨネーズ派だな。みんな違ってみんないいんじゃねえの?」
芦戸「爆豪は?」
爆豪「デスソース」
芦戸・切島・瀬呂「「「それはない」」」

海原「次回『雄英体育祭 その5』お楽しみに。ボクはタルタルソースや」
緑谷「チキン南蛮と唐揚げのタルタルソースがけの定義の違いってなんだろう……」

没ネタ

峰田「フフフ……オイラの考えた作戦、名付けて障子シャーマンM4作戦完璧だぜ……ん? なんだこの茨……うわ、巻きついてきて、やめ、いや、イヤッ、オイラのそこ触っちゃ、んほおおおおおお!!!!???? 茨でごりごりらめえええええええ!!!!!」
障子「おい蛙吹! 峰田は俺の背中で何をしてるんだ!? 何をされてるんだ!!!??」
蛙吹「峰田ちゃん落ち着いて」
峰田「おぼふ!」

塩崎(淫らな気配……! 姑息な手段で得点を奪った罰でしょうか……?)
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