なぜトランプ大統領は「ハーバード大学」を攻撃するのか 「慰安婦論文」ラムザイヤー教授が明かす「ハーバードの不都合な真実」
アメリカにおける人文学の衰退
アメリカの人文系学部が常に衰えていたわけではない。かつてはみな、ドストエフスキーやジェーン・エアといった文学を読み耽ったものだ。いまや、それらはほとんど読まれていない。少なくとも、そうした古典文学や名著だけを読む学生は、もはや見当たらない。実のところ、ハーバード大学にシェイクスピアの講義がまだ存在するのかどうかもわからない。 4年前、私が慰安婦問題に関する論文を発表し、激しい攻撃を受けた背景にも、このアメリカにおける人文学の衰退という構造的問題があった。 わずか8ページの論文が、想像を超える激しい反発を引き起こすとは、私自身予想もしていなかった。欧米大学のいわゆる日本専門家らは、私の論文の撤回を要求し、大学による私への処罰まで主張した。慰安婦問題における「性奴隷説」や「強制連行説」は、彼らのイデオロギーにとって不可欠な要素であるらしい。自らの立場を守るため、異なる視点を封殺しようとする姿勢は、「学問の自由」そのものに対する暴力である。 とりわけ、日本語の一次資料や膨大な二次研究に目を通せば、慰安婦問題をめぐる歴史の全体像は明確に見えてくる。しかし、それらの多くは英語に訳されておらず、英語圏の研究者にはアクセスできないのが現状だ。その結果、アメリカの日本研究者たちは、この問題について驚くほど無知だ。吉田清治の名前すら知らない者までいる。
日本語で会話をしない日本研究者
多くの米研究者や学者は大学で日本語を学ぶが、最初の数年間は辞書を片手に新聞記事を読むのが精一杯で、記事の内容を正確に理解できるようになるまでに相当な時間を要する。仮に小学校4年生程度の日本語読解力に到達できたとしても、それに4年はかかる。そして多くの場合、彼らが到達できるのはそのレベル止まりである。 日本語は、使わなければすぐに衰える言語だ。継続的に日本語に触れていなければ、40歳になる頃には、ほとんど読み書きができなくなる。もちろん彼らはそのことを認めようとはしない。実際、アメリカの日本研究者の間では、互いに恥をかかないよう、日本語で会話をしないという暗黙のルールすら存在しているほどだ。 これは、海外で慰安婦像が次々と設置されている問題にもつながっている。たとえば、最近の英国帝国戦争博物館における「慰安婦の歴史」に関する展示がその一例だ。おそらく、韓国の慰安婦支援団体や関連する活動家が展示内容に関与したのだろう。 こうした博物館は「調査を行った」と主張するが、実際のところ、それは「英語で読める範囲の文献に目を通した」という程度にすぎない。おそらく、英語で書かれた記事を3つか4つほど読み、「まあ、これで十分だろう」と判断して展示を構成してしまったのだ。 では、我々はこの現実にどう向き合うべきか。 まず、私のような立場にある学者は、米国内において積極的に英語での論文・著作を発信していかねばならない。それが責務である。そして何よりも人間として貫くべき姿勢がある。それは、真実しか語らない、真実しか書かないことだ。そしてそれを行っている限り、「いかなる攻撃を受けようとも、絶対に謝らない」ということである。 J・マーク・ラムザイヤー ハーバード大学ロースクール教授。1954年シカゴ生まれ、日本で育つ。76年、ゴーシェン大卒。ミシガン大で修士(日本学)、ハーバード大ロースクールで法務博士取得。カリフォルニア大ロサンゼルス校、シカゴ大教授を経て現職。専門は日本法。日本語著作に『法と経済学―日本法の経済分析』など。 デイリー新潮編集部
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