なぜトランプ大統領は「ハーバード大学」を攻撃するのか 「慰安婦論文」ラムザイヤー教授が明かす「ハーバードの不都合な真実」
アファーマティブ・アクションへの違憲判決
トランプがハーバードを標的にした理由はいくつもある。 ハーバードやコロンビアのような大学は、学生を処分することに消極的で、学生たちはデモの中で平然と規則を破る。コロンビア大学では、建物に不法侵入しても処罰されないことすらある。そうした状況を見て、トランプ政権は「行儀の悪い学生たちにはきちんと罰を与えるべきだ」と主張している。 さらにトランプは、アファーマティブ・アクションのように、人種を理由とした差別が法律によって正当化されるべきではない、と主張している。2年前、連邦最高裁がアファーマティブ・アクションに違憲判決を下した以上、教育機関はその判断に従わなければならないということだ。 ハーバード大の多くの教授たちは、過去20年間にわたって、自身は人種による差別の存在を否定しながらも、入試制度では大規模な差別を行ってきたと言える。そして判決後も「自分たちは人種差別をしていない」という体裁を保ったまま、従来の入試方針を続けたいと考えているのだ。 差別問題は学生の入学にとどまらない。教授の採用や昇進の過程でも、意図的な人種的バイアスが存在している。たとえば、終身在職権(テニュア)への昇格や、名誉職への登用などである。 象徴的な例が、2023年に黒人として初めてハーバード大学の学長となった政治学者のクローディン・ゲイである。彼女は本来、テニュアにふさわしい実績を持たない人物だった。それにもかかわらず、終身在職権を与えられ、さらにその後、明らかな能力不足であるにもかかわらず昇進を果たした。
“共和党支持”の教員
もっとも人種に関しては、論文の引用数やテストの成績など、客観的で標準化された指標を用いることで、ある程度の評価が可能である。しかし、政治的傾向については事情が異なる。言論の自由に抵触するおそれがあるため、評価や判断がはるかに難しく、野放し状態になっている。 このために厄介な問題が生じた。 仮にハーバード大学が、人文学部に共和党支持の教員を採用することにしたとしよう。だがそれは事実上不可能なのである。そのような人材が大学院にほとんどいないからだ。 考えてみてほしい。人類学の博士課程を修了するということは、大学の教員になるための訓練を受けたということだ。しかし人文系の世界は極めて左傾化しており、どの大学も保守的な候補者を採用しようとはしない。もしあなたが学部生で保守的な価値観を持っていたら、人類学の大学院に進もうとは思わないだろう。その先がないのだから。つまり、構造的に保守的な人材が育たない仕組みになってしまっているのだ。 私の知るあるハーバード大の学生は、文学の必修科目で「父親から虐待をうけるレズビアンが主人公の漫画」を課題として与えられ、それについてタームペーパー(期末レポート)を書くよう求められたという。常識ある学生なら、こうした課題に強い違和感を覚え、学問への信頼さえ揺らぐのではないだろうか。 これはハーバード大だけの話ではない。各地の人文系学部では、民主党を支持するリベラル派の教授が圧倒的多数を占めている。最新のある研究によれば、カリフォルニア大学バークレー校の歴史学科では、民主党支持者が31人に対し、共和党支持者はわずか1人。スタンフォード大学では22対0。この数字が示すように、完全なイデオロギーの偏りが存在する。 このような状況下で、保守的な価値観を持つ学生は人文学を敬遠する傾向が強まり、今や米国で歴史学を専攻する学生は全体の1%にも満たないというのが現実なのである。