嘘の夢の話 8月31日
自宅のベランダから夜明け前の街を眺めている。空気はひんやりしているが寒いというほどではなく、昨夜まで降っていた雨の匂いがわずかに残っている。白み始めた空には明けの明星が光っていて、その下には家々の隙間を縫うようにして線路が延びている。線路は東の大都市へと繋がっており、かすかに見える高層ビル群に向かって始発の電車が走り去って行く。
何の変哲もない朝の風景だが、私はひどく憂鬱な気分でそれを眺めている。この後に嫌な予定を控えているのだ。しかしそれが何なのかは思い出せない。空はどんどん明るくなり、鳥たちが騒ぎ出す。人々も活動を開始し、道路を行く人影や車の音を認めることができる。突然、私は嫌な予定の内容を思い出す。そしてそれと同時に意識が途絶える。
気がつくと私は、かつて通っていた小学校の校庭に立っている。そこでは当時の友達が当時の姿のまま遊んでいる。彼らは私を遊びに誘ってくるが、私は校庭の反対側のフェンスの前に立っている影に目を奪われている。それは高さ2メートルほどでマトリョーシカのような形をしており、全身真っ黒で微動だにしないが、私にはそれが生きて意思を持っていることがわかる。また、私がそれを認識しているように、向こうも私のことを認識しているということもなんとなくわかる。私は友達の呼びかけに生返事を打ちながらその影を凝視し続ける。すると突然、それの表面に亀裂が走り、ひび割れから黒い煙が溢れ出す。煙はあっという間に校庭を満たし、何も見えず、何も聞こえなくなる。


コメント