嘘の夢の話 9月30日
夕暮れ時、私は小さな病院で順番待ちをしている。待合室には私の他に一人のおばあさんと二組の親子連れがいる。本も雑誌もたくさんあるし、テレビでは子供たちのためにトムとジェリーが放映されているので、待ち時間も退屈ではない。暗くなっていく空に合わせ、待合室の照明は白からオレンジ色に変わる。看護師は窓のブラインドを下ろし、別の看護師はココアを作ってきて私たちに振舞ってくれる。
突然、何かがこの病院に近づいてくるのを感じる。ただの直感に過ぎないのだが、私には近づいてくるものの姿形まで近くで観察しているように思い描くことができる。それは人間と同じくらいの大きさのX字型をしたもので、表面には毛虫のように細く鋭い毛がびっしり生えている。X字の交差した部分には穴が空いていて、そこからこんがらがった糸の塊が吐き出される。そんなものが、確かにこの病院に近づいてきている。しかし私は、それが私たちに危害を加えないこと、そもそもそれは私たちに気付かないことを知っている。だから私はココアを飲みながら、トムとジェリーの二人が地下鉄で巨大ワニと戦う回を見続ける。


コメント